梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

あいびきの話し

2008年03月25日 | 芝居
舞台上で役者が腰掛ける黒塗りの台のことをいう<合引>につきましては、ずいぶん昔にご紹介いたしましたが、<合引>は、実は衣裳、床山用語でもあります。
衣裳におきましては、主に立役の扮装で着用する襦袢の襟を、キッチリ合わせて着崩れを防ぐために、下前の表側と上前の裏側に、紐をそれぞれとりつけ、これを結び合わせることで襟が離れないようにするという仕組み。襦袢の襟にかぎらず、同じような仕組みで、離れたりズレたりしては困るような箇所を固定することもあります。

床山では、左右の鬢(びん)の内側にとりつけた紐を、鬘をかぶったあとで、うなじの部分で床山さんに結んでもらい、この締め付けにより鬘をより頭に密着させるというものです。

どちらの<合引>も、結んだあとは上手にしまわれているのでお客様の目には見えません。また万が一紐がはみ出してしまってもよいように、衣裳の合引なら衣裳と同じ色に、床山の合引なら、毛と同じ色になっています。
いちいち糸針で留める手間を省いたり、激しい演技にも耐えうるようにする知恵のひとつなんですが、これがどうして<合引>というのか? こんな俗説がございます。

曰く、「見えないところで結ばれ合ってる」から…。

<合引>とは、実は<逢い引き>だというのです。
面白い説だとは思うのですが、確証はございません。
あくまで俗説ですので、念のため。

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