梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記2の8『まだおりましたね、梶原さん』

2007年12月04日 | 芝居
今月南座のもう1人の<梶原平三>をご紹介し忘れておりました。
『義経千本桜 鮓屋』で、維盛の首実検に来る梶原平三です。

夜の部の梶原さんは演目とともにキャラクターが変わりましたが、「鮓屋」の梶原さん、演者によってキャラクターが変わるという面白いお役です。つまり、『対面』にも通じるようなクセ者として演じるか、『石切』同様の知恵のある武将として演じるかということですが、その選択によって化粧、扮装も変わります。

<砥の粉>が入った、やや赤みがかった顔色、チリチリパーマのような<癖付き>の鬘、あご髭をつければ、一目で敵役とわかるでしょう。一方、白塗りで、癖のない鬘をつけたなら、智者としての表現がかつことになります。
台詞が変わるわけではないので、お勤めになる方の<肚>にも関わってくることですが、どういう扮装をとるかで、お客様がうける印象は大きく違うと思います。

いずれにしましても、衣裳は黒繻子の半素襖、袴、織物の着付。黒の引き立て烏帽子に<鍬型>の前飾りが付いたものをかぶりますが、芝居の後半、権太に褒美として与える陣羽織を、自ら羽織って登場する演出があり、その場合は鎧姿になります。

今月の梶原役の天王寺屋(富十郎)さんは、白塗りでお勤めになっていらっしゃいます。