梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

巡業日記1・荒川で舞台稽古の巻

2005年06月29日 | 芝居
さあ、いよいよ巡業の始まりです。旅の振り出しは荒川。まずは東京都内からです。会場は「サンパール荒川」。
今日はこの会場で、午後一時半から出演者全員が顔をそろえる「顔寄せ」を舞台上で行い、それから『口上』の「舞台稽古」、『吉野山』の「附総」、『与話情浮名横櫛』の「舞台稽古」、最後に『吉野山』の「舞台稽古」と、ちょっと変則的な稽古割りでした。
お稽古が始まる前に、まず楽屋作りからはじまりました。昨日の夜歌舞伎座からトラックに積み込まれた荷物が、楽屋内に降ろされておりますから、これらをどんどん開けてゆきます。
歌舞伎座などと違って、今回の巡業で回るような<ホール>の楽屋は、設備が場所場所によって変わります。バストイレ付きの部屋もあれば、鏡と化粧台だけの、楽屋というより控え室のような部屋も。部屋数にも変動がありますが、ここ荒川の会場は、バストイレ付きの部屋で、師匠梅玉と、弟でいらっしゃる加賀屋(魁春)さんとの二人部屋となりました。
師匠の楽屋を作ったら、次は自分の荷物。名題下俳優はみんな一緒の大部屋です。鏡は壁に作り付けですので、化粧道具を並べて、着物を出せば完了。我々の部屋づくりは簡単なものです。
さて、会場ごとに違うのは楽屋だけではございません。舞台の寸法も、毎回変わってまいります。今日の舞台は小さめ。幅よりも奥行きのなさが気になりました。というのも、『吉野山』での立ち回りは、播磨屋(吉右衛門)さんと、八人の<花四天>とで繰り広げられますが、私達がトンボを返る時、奥行きがないと、後ろに控えている仲間や、場合によっては静御前役の加賀屋(魁春)さん、早見の藤太役の萬屋(歌昇)さん、あるいは下手で清元節の太夫さん、三味線さんが乗っている<山台>にぶつかる危険があるのですね。
案の定、『吉野山』の「附総」では、舞台の狭さから思わずハッとする場面がいくつかありました。こういうところが、ホールでの公演の怖いところです。
続く『与話情浮名横櫛』の「舞台稽古」。回り舞台がないので、場面転換の方法など、普段とは勝手が変わります。今日の稽古でしっかりと段取りを確認。どうしても普段の公演より、転換に時間がかかってしまうのはいたしかたございません。芝居そのものは、問題なく終わりました。
それから今日は、また『吉野山』の「舞台稽古」。一日に同じ芝居を二回稽古するのは珍しいですが、さっきの「附総」で感じを掴んでいるので、落ち着いて演じられました。
お稽古が終わったのは七時前でした。

さて、明日はいよいよ初日です。常に自分に言い聞かせているのですけれど、『落ち着いて、冷静に』をスローガンに、これからはじまる二十一ケ所三十七公演を勤めたいです。