梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

舞台を支える4・床山、鬘屋

2005年06月16日 | 芝居
ゆうた様、十三日のコメントにお返事いたしました。ご覧下さいませ。
さて、今日はカツラを扱う二つの職掌を御紹介しましょう。
我々が舞台でかぶっているカツラ。基本的にはかぶる人の頭に合わせて作られております(ただし、名題下俳優の立役では、町人とか捕手の役などのカツラは、すでに出来上がっているもののなかで、一番自分の頭に合うものを選んで使うことも多く、完全な<オーダーメイド>というわけではありません)。
この、役者に合わせたカツラを作る作業は、まず「鬘屋(かつらや)さん」によって行われます。
カツラの土台は薄い銅板です。「鬘屋さん」が、まずおおまかな原型を用意し、これを役者の頭にあてて様子を見て、余計な部分を切ったり、足りない部分は木槌で叩いて伸ばしたりして整え、形を決めます。こうして出来上がった型を『台金(だいがね)』といいます。それから錆び止めの加工をし、その表面に、毛を植えた羽二重絹を張り付けます。
こうして出来た、まだ結い上げられていないザンバラ髪状のカツラを作るまでが、「鬘屋さん」の仕事です。
さて、これからが「床山さん」の仕事です。「鬘屋さん」から届いたザンバラ髪を、その役に相応しい髪型に結い上げ、必要な飾り(簪、櫛、元結など)を取り付けて完成させるのです。
そして公演中は、出来上がったカツラを役者にかぶせる、はずすといった作業と、補修、あるいは結い直しなどのアフターケアー。このあたりは「衣裳さん」と似たような仕事のしかたですね。「床山さん」も、担当の役者を持つことは昨日書いた通りです。
「鬘屋」「床山」は、完全な分業で、一つのカツラを作っているのですね。ただし、『台金』を作る「鬘合わせ」の時には、「床山さん」も普通同席し、形を見たり注文を出したりします。

やはりこの仕事も、役者の担当となるまでには経験と技術が必要のようです。新人さんは結い上げは出来ませんから、まず名題下俳優のカツラの掛けはずしからはじまり、次に簡単なカツラから、結い上げ方を先輩に教わり、だんたんと難易度を上げてゆくそうです。
ちなみに、「床山さん」そして昨日の「衣裳さん」には、女性の方も沢山いらっしゃいます。