梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

初日、そして二日目

2005年06月03日 | 芝居
昨日二日が「六月大歌舞伎」初日、そして本日、二日目の舞台を終えて、たった今帰って参りました。
初日の舞台は、夜の部の『盟三五大切』の芝居が二十分ほどのびてしまい、『教草吉原雀』が終演しましたのは九時二十分になってしまいました。師匠梅玉がお帰りになったのが十時少し前、それから先輩とご飯を食べに行ったので、いつのまにか日付けも変わってしまいまして、ここの更新ができませんでした。
初日の舞台、一昨日の『抱負』では「無事に乗り切りたい…」と書いたものの、さっそく失敗してしまいました。『輝虎配膳』で、松嶋屋(秀太郎)さん演じる越路が、師匠の役長尾輝虎が差し出したお膳をひっくり返す場面。散らかったお椀などを撤収するのも、私が黒衣で行うのですが、拾い集めて、舞台袖に引っ込んで舞台を振り返ると、まだ一個お椀が残っていたのです。「!」と思いましたが慌てて出ていっては前の芝居の邪魔になりますので、キッカケをうかがっておりましたら、輝虎の家臣、直江山城守役の萬屋(歌六)さんが、芝居をしながらさりげなくそのお椀を後ろに放って下さいまして、そのあとでとても回収しやすくなり、有り難い思いでいっぱいになりました。
『教草吉原雀』の後見でも、鳥売りの男、女、そして鳥刺しの三人が、一瞬に衣裳を変える「ぶっ返り」という仕掛けを行うときに、それぞれの後見三人のタイミングが合わず、お互いが「???」と見合ってしまうということになってしまいまして、まったく情けないことでございました。
この他細かい反省点はいっぱいありましたが、失敗したことで、気をつけねばならないことがハッキリわかりましたので、今日二日目の舞台は、それらを注意して勤めました。おかげさまで、無事何事もなく終えることができました。
とはいうもののこれで満足安心はしてはなりません! 舞台は生もの、何がおこるかわかりませんし、自分自身も、もっともっとよき仕事をするために、よく考え、工夫してゆかねばなりません。
今月は自らの『試練の月』にしたいと存じます。