梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

舞台を支える3・衣裳

2005年06月15日 | 芝居
今日は間の時間に、白山神社の「紫陽花祭り」に行ってきました。雨が似合う花ですから、今日の天気も気になりません。境内に植えられた紫陽花はほぼ満開で、沢山いい写真が撮れました。

今日は「衣裳」のお話をいたしましょう。役者が舞台上で着る衣類一式は、「衣裳さん」の管轄です。
「衣裳さん」は、役者に衣裳を着せ、脱がせ、そして管理と修繕が担当となります。生地の染め付けであるとか、仕立て等、<着物になるまで>の仕事は、それ専門のスタッフの仕事となります。
幹部俳優さんの衣裳は、歌舞伎座でしたら一階、二階にある「衣裳部屋」に、名題下、名題俳優はそれぞれの楽屋のなかの棚に保管され、着る時になると取り出して、「衣裳さん」が着る人の後ろに回って着せかける、それをお弟子さん、あるいは着ている本人が腰紐で締める。帯結びは「衣裳さん」の受け持ち、袴の紐はお弟子さんか本人がする、というように、ようは自分の手が届かない所を「衣裳さん」が担当するわけですね。ただし私のような名題下俳優が、立役の着流しなど、いたって簡素な拵えをする時は、「衣裳さん」に頼らず自分一人で帯結びまでいたします。
舞台が終わったら、どんどん脱がせて引き取り、汗が沁みていれば霧吹きをかけてから乾かし(こうすると汗の塩分が結晶しない)、白粉がついていればベンジンで拭き取り、ほつれがあったら縫い直す、というようなアフターケアをしてから、アイロンがけをして皺をとり、一式を畳んでまとめて仕舞う。この繰り返しとなるわけですね。

「衣裳さん」、そして明日お話しようと思います「床山さん」は、どちらもいわば役者のコスチュームですから、各役者さんと密接なつながりがあります。ですので、だいたいの幹部俳優さんには、<自分担当>の「衣裳さん」「床山さん」が決まっています。もちろん、その俳優さんにしかつかない、ということではありません。だいたいは複数の幹部俳優さんを担当してらっしゃいます(そうしないと人手が足りない、ということもあるのでしょうが)。俳優からの、「この人に自分の衣裳を着せてもらいたい」「この人に自分のカツラを結ってもらいたい」という、信頼関係から生まれるものなのでしょうが、当然、担当になるだけの技術、経験も積んでおく必要もあるわけで、新人の「衣裳さん」はまず三階の大部屋や名題部屋から始まり、それから若手幹部さん、中堅さん、と、場数を積んでゆくわけです。

…新作を上演する時、珍しい芝居を復活する時は、どんな着物を着るのかということから始まり、柄、染め等、いちから作り上げなくてはなりません。そうした時、担当する俳優の好み、アイディアを聞きながら、デザインを決定する。これも、「衣裳さん」の大事なお仕事です(これを『衣裳を立てる』といいます)。