10日に投開票された第26回参院選は、過去最多タイの5氏が立候補し、事実上の一騎打ちを制した「オール沖縄」勢力が推す伊波洋一氏(70)=無所属=と、次点だった自民党公認の新人、古謝玄太氏(38)のまれに見る大激戦で幕を下ろした。2888票差の裏側を取材班で話し合った。

参政党2万票に衝撃

激戦の舞台裏

 C 報道各社は開票率が98%を超えても当確を打てなかった。分刻みで得票順位が入れ替わり、当確は日付が変わっていた。それから取材と原稿の執筆。締め切りが迫る中でしびれる作業だった。

 E 各社の情勢調査の数字が出回ったが手法によって大きな開きがあった。数字だけでは結果が読めなかった。伊波氏側の選対関係者は投票日の朝「負けた」とうなだれていた。「これで勝ったら県民の良識だ」との言葉も印象的だった。

 D 安倍晋三元首相が殺害されたことは衝撃だった。古謝氏側は9日の街頭演説で安倍氏に対する言及が多かった。哀悼の意だっただろうが、亡くなったことへの「同情票」を意識しているようにも見えてしまった。

 F 参政党は衝撃だった。沖縄でも公認候補者が2万2千票以上を獲得した。保守層の一部が流れ古謝氏側への影響が大きかったはずだ。

 C オール沖縄対自公の構図、基地を巡る争いに飽きた有権者から参政党に入れるとの声も出ていた。知事選に候補者を擁立する話も聞こえてくる。県内政局に影響を与えるだろうか。

 A 限定的だとは思うけどチェックは必要だね。

見えにくい対立軸

両氏の論戦

 A 明確な対立軸は辺野古移設問題だった。自民候補が全県選挙で初めて辺野古容認を打ち出した。知事選でもオール沖縄と自民の対決構図は同じ。自民候補の辺野古を巡るスタンスは注目だ。

 C 伊波氏は当初、経済を前面に打ち出していた。中盤は経済と基地問題を「同列」としていたけど、最終盤は「基地問題」に比重を置いた印象だ。

 D それでも対立軸が見えにくかった。「何が大切か分からず、主張がぶれている」という声も少なくなかった。

 E 古謝氏は浦添市の決起大会で「私だって平和を望んでいる」と訴えていた。軍拡に賛成している候補者という印象付けを嫌がっているようだった。

知事選向け戦略必要

今後の政局

 F 知名度ゼロから4カ月間で27万票を獲得した古謝氏を那覇市長選に挑戦させてはとの声もある。

 B 古謝氏本人は知事になる目標がある。那覇市長選で失敗すれば、政治生命への影響は大。慎重に判断するんじゃないかな。

 C いわゆる「落下傘候補」は沖縄ではあまりなじみがない。これが主流になると、市議からこつこつ経験を積んだ政治家が目標を失いかねないと不満もたまっているって聞いた。

 A 伊波氏が勝ってオール沖縄の連敗を止めた。でも労組の動きは鈍くオール沖縄内の連携は十分ではなかった。知事選では指揮を執る人の力と求心力が求められるだろうね。

 E 実は、参院選の投票全体で見ると「辺野古容認」の票が多いんだよね。2カ月後には知事選がある。オール沖縄はこの事実を直視して戦略を練る必要があると思う。

座談会参加者

 政経部・山城響、知念豊、新垣亮、又吉俊充、大野亨恭、東京報道部・嘉良謙太朗

(写図説明)演説会でガンバロー三唱する支持者ら=6月25日、本島中部

               ★

 参政党は衝撃だった。沖縄でも公認候補者が2万2千票以上を獲得した。保守層の一部が流れ古謝氏側への影響が大きかったはずだ。

参院選で参政党が古謝玄太候補の票を食ったことは間違いない。

次の知事選では下地氏が、佐喜眞候補の票を食って「デニーvs佐喜眞」の一騎打ちが僅差の場合、下地候補が佐喜眞候補の足を引っ張ることになる。

下地氏は自民党への復党を断られた恨みが残っているので、自民党への嫌がらせということも考えられる。