2022年2月24日、軍事大国ロシアが軍事小国ウクライナ侵攻を開始し、ウクライナ戦争が始まった。ほとんどのロシア研究の専門家がプーチンの「合理に欠けるウクライナ侵攻」を想定しておらず、「プーチンは気が狂った」などと、プーチンの精神状態に責任転嫁した。 だがプーチンは狂ってはおらず、プーチン独自の大義でウクライナを侵攻していることが判明している。
ただ、プーチンがウクライナ侵攻で犯した最大の誤算は、軍事大国ロシアは、侵攻後数週間でウクライナの首都占拠は成功すると目論んでいたことだ。
だが、実際は軍事小国ウクライナの想定外の善戦や、NTО諸国の支援もあって侵攻後2カ月近く経っても未だ決着はついていない。
仮にプーチンが想定通りウクライナを数日間で陥落させていたら、同じ独裁国の中国が台湾侵攻の「予行演習」として大いに参考にしただろう。
プーチンのウクライナ侵攻が欧米諸国の批判を浴びて、ウクライナ陥落に難渋している現状に一番落胆した国は同じ軍事大国の中国だと言われている。
ロシアのように軍備、つまり武器弾薬などの数さえ多ければ軍事小国を容易に制圧できる例は少ない、と「数の論理」に異論を唱えたのが第二次大戦の英雄で軍人から首相に成ったイギリスのチャーチル首相である。
チャーチルの言葉に次のような名言がある。
「戦争は数だけで勝てたことはほとんどない。質、意志の力、地理的優位性、天然・財的資源、海洋支配、そして何よりも数百万人の心の中にある人間のスピリットを呼び覚ます大義、これらが決定的な要因になることが人類史で証明されている」
第二次大戦の英雄チャーチル首相が、約75年後のロシアのウクライナ侵攻を予知していたとは思わないが、ロシアのウクライナ侵攻の約1年前、「大国は小国には勝てない」とする「戦略のパラドックス」を発表。まるでウクライナ戦争を予見したような人物がいる。
2021年7月20日発行の『ラスト・エンペラー 習近平』の著者・エドワード・ルトワック氏のことだ。
ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを歴任したルトワック氏の「戦略のパラドックス」については次回紹介する。
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