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きょうの沖縄タイムス、見出し紹介
■一面トップ
最多354人感染
県「市中感染に近い」
デルタ株要因か 7日で1000人増
■二面トップ
知事「次の手」に苦慮
背景分析 会見見送る
緊急事態解除見通せず
会見18回呼び掛け重ね
緊急事態下
政府と連携不足も
■社会面トップ
未曽有の流行懸念
実行再生産数 2を突破
感染者 週2千人見通し
新たな対策取られず
最多354人感染 県「市中感染に近い」 デルタ株要因か 7日で1000人増 東京も最多2848人
県は27日、10歳未満から90歳以上の男女354人の新型コロナウイルス感染を確認した。1日当たりの感染者数としては5月29日の335人を上回る過去最多を更新。感染者は7日間で千人増加し、合計は2万3201人になった。県の糸数公医療技監は「本島内では市中感染に近い状況になっている」として、深刻な事態にあるとの認識を示した。一方、東京都の感染者も同日、過去最多の2848人が報告された。(2・3・26・27面に関連)
感染者数354人は先週の同じ火曜日より200人多く、2・29倍と急増。県は感染拡大について、感染力が強いとされるデルタ株が要因とみている。糸数技監は県外からの移入例が拡大の要因となった可能性について「(渡航者との接触よりも)県内の友人、知人と会食し、その相手が感染していたというパターンが多い」との考えを示した。
病院や自宅などで療養中の患者は1477人で重症・中等症は246人。糸数技監は「今の段階では医療は逼迫(ひっぱく)していないが、今の感染者数が続けば(逼迫は)時間の問題だ」と指摘。5月の第4波で最大約2750人だった療養者数を超える可能性もあるとした。
県内の人口10万人当たりの感染者数は68・55人で全国で2番目に多かった。1位は東京の77・85人で、全国平均は25・05人となり国が感染状況を表す指標で最も高いステージ4の25人を上回っている。354人のうち感染経路が追えているのは162人。家族内感染が78人で約半数を占め、職場内と友人・知人がそれぞれ27人、施設内16人、飲食9人、その他5人。年代別では20代が93人で最も多く、30代69人、40代51人と若い世代で感染が広がっている。
米軍関係は19人の感染が確認され、累計は1615人になった。米軍は従来実施していなかった変異株を検査するため、本国に29検体を発送。今後も検査を続けるという。
(写図説明)県内の新型コロナウイルス1日の感染者の推移
(写図説明)7月の沖縄の感染者(人)
(写図説明)県内感染者の居住別状況(7月27日)
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緊急事態宣言中に過去最多更新 沖縄の新規感染者354人
配信
不手際も重なり…コロナ対策で失敗か 正念場の沖縄・玉城県政
配信
沖縄県立中部病院の大規模クラスター問題をめぐり開かれた県議会文教厚生委員会に出席した玉城デニー知事(中央)。責任を追及する委員の質問に対し、幹部らと協議する姿が目立った=8日、沖縄県議会(川瀬弘至撮影)
【地方政治ルポ】
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が2カ月近くも続く沖縄県で、玉城デニー知事の求心力が急速に低下している。政府に宣言解除を要請しても認められず、県内経済界からは「知事の発信力が弱く、県の窮状が国に伝わらない」との批判も。県立病院で発生した大規模クラスター(感染者集団)をめぐる県の不手際も重なり、知事を支える「オール沖縄」勢力からも不満が漏れる事態となっている。
退けられた要請
「県と国とのコミュニケーションが十分にとれていたら、こんな事態にはならなかった」
県内経済団体の幹部が嘆息する。
沖縄では5月の大型連休後に感染状況が悪化し、1日あたりの新規感染者数が一時300人を超えたが、6月後半から2桁台で推移するなど最悪の状況を脱したとみられていた。
だが、今月7日に衝撃が走る。その日、県の新型コロナ対策本部は11日に期限を迎えるはずだった緊急事態宣言を延長せず、蔓延(まんえん)防止等重点措置に移行する方針を決定。玉城氏が西村康稔経済再生相に電話し、宣言解除を要請した。
しかし数時間後、政府は県の方針を退け、医療提供体制が依然として逼迫(ひっぱく)しているなどとして8月22日までの宣言延長を決断する。それを玉城氏は報道で知った。西村氏からは何の連絡もなかった。
「なぜ事前に県の方針を国と調整しなかったのか、あるいはできなかったのか。すでに県内観光業と飲食業は我慢の限界であり、1カ月以上も宣言が延長されれば廃業や閉店がさらに増える」と、経済団体幹部は憤る。
調整できなかったのは、これが最初ではない。
沖縄に緊急事態宣言が発令されたのは5月23日。当初の期間は6月20日までだったが、医療提供体制がなかなか改善せず、県は同月16日、宣言の2週間延長を政府に要請した。
ところが、政府が下した判断は県の要請より1週間長い、3週間延長だった。
県のコロナ対策専門家会議の委員は「県経済が疲弊しているうえ、県民にコロナ疲れがみられ、2週間以上の延長はむしろ逆効果だと思っていた。国の決定は意外だった」と振り返る。
コロナ禍の観光PR
なぜ、国は二度にわたり県の要請を聞き入れなかったのか。
自民党県連の幹部は「県のコロナ対策は失敗の繰り返しで、国から信用されていない」と指摘し、3つの失敗例を挙げる。
一つは3月下旬、県が観光客向けに出した一面カラーの新聞広告だ。「新しいおもてなしの沖縄へ」と記され、玉城氏と専門家会議の高山義浩委員が交互に県のコロナ対策を説明する内容になっている。
沖縄では当時、1日あたりの新規感染者数が70~90人超となり、急拡大する傾向をみせていた。そんな中での新聞広告。県は「来県者に感染防止対策を呼びかけるのが主な目的」と説明するが、観光PRと受け止められ、県議会で批判が相次いだ。
二つ目は、5月の大型連休を含む感染拡大期に、飲食店における酒類の提供を停止しなかったこと。
沖縄は4月12日から蔓延防止等重点措置の対象となり、飲食店などで一層の時短営業の措置がとられた。その際、政府は酒類提供の停止が感染防止の有効策になるとしたが、県は経済界に配慮し、厳しい対策に踏み切らなかった。
クラスター公表せず
三つ目が、県立中部病院(うるま市)で発生した大規模クラスター問題である。
同病院は県のコロナ治療を担う重点医療機関だが、5月24日から6月17日にかけ、患者36人、職員15人の計51人が感染し、うち17人が死亡した。病院側では、記者会見して公表したいと2回にわたり県に打診したが、いずれも県は「公表基準を満たさない」などとするメールを送り、記者会見は見送られた。
この問題が明らかになるのは6月30日、県議会で野党議員が質問してからだ。県は当初、公表に後ろ向きなメールを送ったことについて「専門家会議の委員の助言があった」と、責任逃れともとれる説明をし、県議会で与党からも批判が続出。公表遅れの原因究明を求める決議案が全会一致で可決される異例の事態となった。
また、「助言」したと責任をかぶせられたのは前出の新聞広告にも出た高山委員で、玉城氏の信頼が厚かったが辞任を表明。別の委員も県の対応を批判し辞意を明らかにするなど、専門家会議の中からも県への不満が噴出した。
「オール沖縄」勢力の与党県議が言う。
「県の不適切な対応により、懸命に頑張っている病院現場にも不信が渦巻くこととなった。知事がしっかり説明責任を果たさなければ、ますます県民が離れていくだろう」
信頼を取り戻すには
実際、「オール沖縄」勢力への県民の支持は、低迷しているといえそうだ。
11日に投開票が行われた那覇市議選(定数40)で、自民党など野党候補が19人当選し、改選前より5議席増やしたのに対し、「オール沖縄」勢力など与党候補の当選は14人にとどまり、1議席減らした。
野党系の当選者は「コロナ対策が最大の争点であり、市政というより県政への批判が有権者に強かった」と話す。
窮地に立つ玉城県政。だが、信頼を取り戻す道がないわけではない。
政府は今回、緊急事態宣言を8月22日まで延長するにあたり、感染状況が改善すれば前倒しの解除もありうるとの方針を示した。
「7月末までか、少なくとも8月上旬までに解除できれば、支持率が回復するかもしれない」(「オール沖縄」関係者)
一方、早期に解除できなければ「知事離れが加速する。来年夏の知事選にも影響が出るだろう」(自民党県連幹部)
玉城県政はいま、正念場を迎えている。(川瀬弘至)【関連記事】