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大相撲九州場所も終わって早師走、一寸時期遅れとも思ったがどうしても書いておきたい相撲四十八手の一つの技「けたぐり」についての話。 我慢して付き合ってください。
安馬というモンゴル出身力士がいる。
幕内きっての軽量{185cm 115kg}のモンゴル出身力士。
元々、「けたぐり」という技は軽量力士がまともに立ち向かったら勝てない相手に立会いの一瞬の意表をついて相手を倒す技である。
だが、安馬は軽量ながら真っ向からぶつかって行く正攻法の取り口で人気がある。
その正攻法相撲で 9月場所は11勝 4敗の好成績をあげたが11月場所では上位にぶつかって 6勝 9敗と僅かに負け越した。
彼が「けたぐり」等の飛び道具を使った取り口は記憶に無い。
だが、かれが「けたぐり」も出来るという印象を相手に与えていたら安馬の軽量につけ込んで立会い猛然と突っ込んでくる相手の出足を鈍らすだろう。
結果として「けたぐり」を頻繁に使わなくとも「抑止力」という無言の力となって安馬の成績向上にかなり貢献していただろう。
最近の大相撲で「ケタ繰り」の技が見られなくなって久しいが、11月場所で無敵を誇る横綱朝青龍が若手の稀勢の里を奇襲の「けたぐり」で破った。
この相手の意表をついた横綱の技について、横綱審議会が「横綱がやるべきことではない」という否定的な見解を出した。
横綱審議会という大そうな名前の割には、このお歴々、相撲を知らない。
朝日新聞
朝青龍の「けたぐり」、横綱審議会で批判相次ぐ
2006年11月27日18時58分
大相撲の横綱審議委員会が27日、東京・国技館であった。九州場所で5度目の全勝優勝を飾った朝青龍が小結稀勢の里を奇襲のけたぐりで破ったことについて、「横綱がやるべきことではない」という否定的な見解が続出した。
朝青龍は8日目の結びで左に変化し、右足で稀勢の里の右ひざをけ飛ばした。石橋義夫委員長(共立女子学園理事長)は「横綱の品格を考えれば、してはいけない技。受けて立つ横綱らしい取組をして欲しかった」と話した。
相撲四十八手のうち「蹴手繰り(けたぐり)」は身体的技術のみならず、相手の心理状態まで読んだ上に行う高度な相撲の技だ。
同じ相撲技でも「はたき込み」に近いが、当然ぶつかって来るだろうと思って負けずに突っ込んでくる相手に、立会いの一瞬の俊敏な動きと判断が要求される。
横綱といえどもこのような技を使うということを相手に示すだけで大きな戦力になる。 立会いの激しい、押しの強い相手に大きな「抑止力」になる。
野球のピッチャーだってそうだ。
速球のストレートしか投げられないピッチャーは速球に目が馴れた打者には狙い打ちされる。そこで速球の合間にスローの変化球を投げることで速球がより効果的になる。
先場所負けている若手の伸び盛りの稀勢の里に「抑止力」もあることを示しておくことも勝負師 朝青龍としては必要だったのだろう。
これに対して横綱審議委員会が「横綱の品格を考えれば、してはいけない技。受けて立つ横綱らしい取組をして欲しかった」とは相撲を知らないのもはなはだしい的外れの批判だ。
横綱審議会が「横綱の品格」云々するような下品な相撲技ではない。
組んでよし、ぶつかってよし、「けたぐって」よしの欠点の無い横綱に因縁をつけたとしか言いようのない横綱審議会の意見だ。
一人横綱の朝青龍があまりにも飛びぬけて強すぎるため、如何でもいいことにイチャモンをつけたとしか考えられない的外れの批判だ。
こんな詰まらん意見を述べるより、大関以下の日本人関取のあまりのダラシナサこそ批判してしかるべきだろう。
日本の国技が聞いてあきれるような最近の体たらくでは、数年の内に幕内上位は全て外人力士に占領され、行司だけが日本の国技になりかねない。
筆者が中学時代、未だラジオしか相撲の実況放送が無かった頃、「けたぐり」という言葉で連想する出羽湊という小兵力士がいた。
◆出羽湊: http://www.fsinet.or.jp/~sumo/profile/1/19530501.htm
東富士や鏡里といった巨漢横綱に対して、軽量の出羽湊(177cm 98kg)は得意の「けたぐり」で大活躍した。
力士名鑑の得意技欄に「けたぐり」と明記して相手は判っているはずなのにかかってしまう。 まさに名人芸だった。
当時は名人芸と名の付く技を操る名人力士が多くいた。
「モロ差し一気寄り」の信夫山。 「内掛け」の琴ヶ浜等々。
当時いっぱしの相撲通を自負していた中学生の筆者は、人気の横綱・大関に声援を送る友人達を尻目に玄人風をふかして地味な一芸力士の技を自慢げに解説していた。
朝青龍は秋場所に負けている稀勢の里に「2回続けて負けてたまるか」という気迫を「けたぐり」で示したのだろう。
相手は横綱、立会いの変化は無いだろうと闇雲に押してくる伸び盛りの若手に「俺にはこういう技もあるぞ!」と見せ付けて「抑止力」を提示しておくのも横綱の強さの一つだ。
昔の大型横綱が「けたぐり」をやらなかったのは品格を重んじたからではない。
俊敏性と決断力を要するこの高度の技を使おうと思っても使えなかったのが真相だろう。
それが出来る朝青龍は強い!
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