月夜に浮かぶがっしりしたシルエット。隆君がやって来た。彼は私を認めると、全速力で私に向かって走ってきた。隆君は体全体で好意を示してくる。駆け引きも出し惜しみもない。そんな彼が愛おしく、狂おしい。そのように感じる自分が恐ろしい。隆君のすべてを受け止めたい自分と、隆君のすべてに溺れたい自分に引き裂かれそうになる。私は動揺する自分を押し隠す。平静の仮面をかぶる。隆君は私の隣の手すりに腰をかける。まだ少し息が弾んでいる。かすかに汗のにおいがする。嫌なにおいではない。異性の体臭が不快ではないのは、その異性を本能的に受け入れている証拠だ。私は隆君を動物レベルで、遺伝子レベルで受け入れてしまっているのだ。これはまずい。私は内心、あせっていた。やはり、今日で隆君と会うのは終わりにしよう。これ以上、隆君を汚す前に。これ以上、隆君に執着する前に。私は彼と会話を交わしながら、そう決心していた。隆君は受験勉強が順調なこと、順調すぎて、家族が自分をおいて旅行に行ってしまったことを人ごとのようにのんびりと話していた。隆君のご両親は自分の子供を信頼し、隆君は自分を信頼してくれるご両親の気持ちをちゃんと汲んでいる。いい関係だなと私はのんきに思っていた。その時、彼は私に衝撃の一言を繰り出してきた。
「だから、今夜は心配する人が誰もいません。澤部さんとずっと一緒にいれます。いや、一緒にいます。」
いつも通りちょっと会って、次はないつもりだった私には、寝耳に水だった。隆君はのんびりした口調から一転、強い意思を露わにした。私を絶対に逃さない。静かな決意に満ちた目。私は困った。小手先の「逃げ」はもう通用しない。隆君の瞳に私が写っていた。弱々しく怯えた私。私はすべての鎧をはがされ、むき出しにされてしまった。なんて醜い、ちっぽけな私。逃げることはできない。どうしたらいいのかわからなかった。
「だから、今夜は心配する人が誰もいません。澤部さんとずっと一緒にいれます。いや、一緒にいます。」
いつも通りちょっと会って、次はないつもりだった私には、寝耳に水だった。隆君はのんびりした口調から一転、強い意思を露わにした。私を絶対に逃さない。静かな決意に満ちた目。私は困った。小手先の「逃げ」はもう通用しない。隆君の瞳に私が写っていた。弱々しく怯えた私。私はすべての鎧をはがされ、むき出しにされてしまった。なんて醜い、ちっぽけな私。逃げることはできない。どうしたらいいのかわからなかった。
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