二十年、上如靈州、遣李世勣撃薛延陀。破降之、招諭敕勒諸部。囘紇等十一姓、各遣使歸命、乞置官司。詔曰、朕聊命偏師、逐擒頡利、始弘廟略。已滅延陀、鐵勒百餘萬戸、請爲州郡。混元以降、殊未前聞。宜備禮告廟。仍頒示天下。上爲詩曰、雪恥酬百王、除兇報千古。刻石於靈州。
二十年、上、霊州に如(ゆ)き、李世勣(りせいせき)をして、薛延陀(せつえんだ)を撃たしむ。破って之を降し、勅勒(ちょくろく)の諸部を招諭(しょうゆ)す。回紇(かいこつ)ら十一姓、各、使を遣わして命に帰し、官司を置かんことを乞う。詔(みことのり)して曰く、「朕、聊か偏師に命じて、頡利(けつり)を逐擒(ちくきん)せしめ、始めて廟略(びょうりゃく)を弘めたり。已に延陀(えんだ)を滅ぼし、鉄勒(てつろく)百余万戸、請うて州郡と為る。混元以降、殊に未だ前聞せず。宜しく礼を備えて廟に告ぐべし」と。仍(よ)って天下に頒示(はんし)す。上、詩をつくって曰く、「恥を雪(そそ)いで百王に酬い、兇を除いて千古に報ず」と。石に霊州に刻せしむ。
薛延陀 勅勒の一部族。 勅勒(鉄勒) トルコ系遊牧民。 招諭 招き諭す。 回紇 ウイグル族。 偏師 一部の軍隊。 頡利 東突厥の可汗。 逐擒 追って生け捕りにする。 混元 この世の始め天地開闢。 頒示 触れ示す。
貞観二十年、太宗は霊州に行き、李世勣に命じて薛延陀を伐たせた。そしてこれを破って勅勒の諸部族を招き服従を諭した。回乞など十一の部族が使者をたてて勅命に従い、その地に唐の役所を置くよう願い出た。太宗は詔を下して「朕は先に一部隊に命じて頡利可汗を追って生け捕りにし、はじめて我が廟堂の威光を広めた。今ここに延陀を滅ぼし、鉄勒百余万戸は、我が州郡となることを請うた。これは天地始まって以来の盛事で、未だ嘗て聞かないことである。よろしく儀礼を整えて宗廟に告げるべきである」とみことのりして天下に広く示した。さらに「百代の帝王の恥をそそぎ、兇賊を除いて千古に知らしめん」と詩をつくり、石を刻んで霊州に立てさせた。