訃報が相次ぐ。
哲学者の梅原猛さんが亡くなった。
哲学者というと何やら小難しいイメージがあるが
大胆な推理と仮説で古代史の世界に新しい息吹きを吹き込まれた。
まさに「知の巨人」と呼ぶにふさわしい存在だった。
京大の哲学科を卒業後
私の母校でもある立命館大学の教授をされていた。
結構、憧れて進学したのだが大学紛争ですでに教壇を去っておられ
大いにガッカリした覚えがある。
その後、国際日本文化研究センターの初代所長に転じられ
日本の文化や宗教に対する研究を深められた。
いわゆる「京都学派」の代表選手で
当時からその学識と人柄の存在感は際立っていた。
その頃、私は「万葉ウォーク」という古代史の番組を担当しており
プロデューサとともに何度かお話を伺う機会があった。
本当に物静かな人柄でお話も面白かった。
ああ、大学で先生の授業を受けたかったなあ、などと思った。
名著として名高い「隠された十字架ー法隆寺論」も
柿本人麻呂の生涯を描いた「水底の歌ー柿本人麻呂論」も
上質のミステリー小説を読むような味わいで
実証主義に凝り固まった凡百の学者とは根本的に違っていた。
番組作りにも大いに参考にさせていただいた。
梅原先生の人懐こい笑顔を見るとホッとするようなところがあって
まことに人格者だったとあらためて思うのである。
享年93歳の大往生だった。