まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

訃報・市原悦子さん

2019年01月14日 | 日記

思いもかけぬ訃報だった。
例によって晩酌のビールの酔いが回り
ベッドで上でついウトウトと居眠りしていたのだが
家人の「市原悦子さんが亡くなったよ」という声で目が覚めた。

驚いて飛び起きたものの
突然の知らせにしばし茫然の体だった。
最近は体調がすぐれず仕事をお休みがちとは聞いていたが
まさかそこまでの状態だったとは・・・
今でもあの少女のような笑顔が目に焼きついて離れない。

一般的には「まんが日本昔ばなし」や「家政婦は見た!」で知られるが
私にとっては拙作のラジオドラマにご出運いただいた
縁の深い特別な女優さんだった。
まだ右も左もわからぬ24歳のデビュー作だった。
主人公の大学生と戦中派世代の父親との確執を描いたドラマだが
その母親役を演じて下さったのが市原さんだった。
スタジオで会うなり「えー、もっと年輩の脚本家さんだと思ったわ!」と
あの美しい声で小さく叫ばれたのを覚えている。
NHK大阪放送局のだだ広い殺風景なスタジオでの収録だったが
休憩中、他の役者さんたちが談笑される中
その輪から離れたスタジオの隅で何度も何度も台本を読み返しながら
一人で練習されていた姿が印象的だった。
すでに大女優だったが演技に取り組む気構えがひたむきで
ああ、これがプロなんだなあと思った。
大女優には失礼だがその声も面差しも本当に少女のような人だった。

先日お亡くなりになった樹木希林さんとは
私生活でも親友だったと言う。
その縁で河瀨直美監督の「あん」にも出演されていた。
意外にも二人は初共演だそうで
ハンセン病の隔離施設で知り合った親友という役どころだった。
人柄も演技も全くタイプの違う二人だったが
互いに惹かれ合う「何か」があったのではないかと推察する。
演技派などという凡庸な呼び方は嫌いだが
二人とも演技に一本筋が入った本当に個性豊かな女優さんだったと思う。
そんな女優さんが次々といなくなるのは
本当に寂しい限りである。

享年82歳。
ただただご冥福を祈るばかりである。