師走だと言うのに、もう年末だと言うのに
テレビで「寅さん映画」を観ながら泣いてしまった。
つくづく自分の「凡人さ加減」を痛感した。
いろいろ偉そうなことを言っても
結局はどうしようもなく救いがたい庶民なのである。
寅さんシリーズ第11作である。
男はつらいよ「寅次郎忘れなぐさ」である。
マドンナ役に浅丘ルリ子を迎えたシリーズ屈指の名作である。
寅さん映画はほとんど観ているし
この作品も何度も観ているがそのたびに泣いてしまう。
恥ずかしながらほとんど涙腺決壊状態だった。
旅回りのキャバレー歌手であるリリー松岡〈浅丘ルリ子〉と
例によって旅先で偶然に出会った寅さんは
自分と同じ境遇で心に深い孤独を抱えるリリーに
恋愛とは違った同情を覚えてしまう。
同じ「旅人」としての深い共感かも知れない。
ほら、逢っている時は
なんとも思わねえけど
別れた後で
妙に思い出すひとがいますね
・・・そういう女でしたよ、あれは
網走の港で初めて二人が出会うシーンがある。
場末のキャバレーで酔客相手に
誰も聴いてくれない歌をむなしく歌い続けるリリー。
北の地で商売がサッパリうまくいかず
気弱になって故郷・柴又へと思いを馳せる寅さん。
旅につかれた二人が心情あふれる言葉で語り合う出逢いのシーン。
数ある寅さんシリーズの中でも
いや、数ある日本映画の中でも出色のシーンだと思う。
寅さんもまだ若くてピカピカに輝いている。
薄幸のキャバレー歌手を演じる浅丘ルリ子の鬼気迫る演技も
ただただ素晴らしく、おじさんは泣いてしまう。
映画「ボヘミアン・ラプソディー」もいいが
寅さん映画の日本的な涙もいいなあと思ってしまう。