まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

貧乏コンチクショウ

2018年06月28日 | 日記

私はビンボーである。
昔はそれなりに景気のいい時代もあったが
今はすっかりビンボーの身である。
だからという訳でもないが林芙美子に会いに行って来た。

世田谷文学館で開催中の林芙美子展である。
絵ではなく文学の展覧会である。
前から「貧乏コンチクショウ」というタイトルが
ずっと気になっていたのだが
そろそろ会期末というので慌てて行って来た。
林芙美子は代表作『放浪記』で知られる明治の小説家である。
近年、森光子の主演で舞台化され大評判をとった。
若い頃「貧乏を売り物にする素人小説家」などと揶揄されたように
生涯を貧乏と戦い続けた作家だった。
まあ、この時代の小説家はほとんどがそうだったけれど・・・

京王線・芦花公園の駅近くにある世田谷文学館。
文学をテーマに掲げた博物館は
おそらく全国でここだけではではないだろうか。
ひとことで言えば・・・
しみじみとしたなかなかいい展覧会だったと思う。
と言うより、林芙美子という作家を初めて知ったような気がする。
高校時代に「放浪記」を読んだような途中で放棄したような
その程度の文学知識の私だから
林芙美子に関しては全くの勉強不足で認識不足を痛感した。
その文章は美しい詩情にあふれ
貧乏生活を笑い飛ばす底知れぬ明るさがあった。
彼女はまさしく「詩人」であった。

展覧会では展示物の前に
「コンチクショウ・カード」と呼ばれる詩片が設置され
それを一枚一枚とりながら鑑賞する。
文学をビジュアル化するための苦肉の策だろうが
これがなかなか効果的でよかった。
それにしても何と生活感にあふれる素敵な詩が多いことだろう。

  お腹がすいても 職がなくっても
  ウヲオ! と叫んではならないのですよ
  幸福な方が眉をおひそめになる。

  血をふいて悶死したって ビクともする大地ではないんです
  後から後から 彼等は健康な砲丸を用意している。
  陳列箱に ふかしたてのパンがあるが
  私の知らない世界は何とまあ ピアノように軽やかに美しいのてしょう。

  そこで始めて
  神様コンチクショウと怒鳴りたくなります。

以前、この世田谷文学館で開催された
茨木のり子の詩にどこかイメージが重なります。

図録がないので記念に文庫本を購入。
数々の詩や童話はもちろん
私が大好きな短編「風琴と魚の街」も掲載されていて
懐かしく、たっぷり林芙美子を堪能した。
展覧会のサブタイトルは「あなたのための人生の処方箋」だったが
大いに貧乏くらしを耐え抜く処方箋となった。
貧乏がなんだ、コンチクショウ!