夕方の通勤時間帯の新宿駅。
地下鉄の車内はかなり混みあっていました。
私は人混みに押されるように通路の中ほどに移動すると
やれやれとホッと一息つきました。
何気なく前の席を見ると
ビシッとスーツできめた外国人が
なぜかにこやかな笑顔で微笑みかけて来ました。
イタリア系の若い外国人でしょうか。
笑顔の意味が分からず私がお追従笑いをしていると
彼はいきなり立ちあがり私に「ここに席に座れ」と招くのです。
混雑の車内ですからついつい座ってしまいました。
座った後で「あれれ」と思いました。
これって普通に席を譲られたということでしょうか。
かなりのショックでした。
お年寄りに席を譲ることはあっても
譲られたことは初めての体験で大いに戸惑いました。
その動揺にちょっと打ちのめされていると
彼は二駅ほど先で何食わぬ顔で降りていきました。
うーん、俺もついにそんな年齢に・・・
正直言って、私は足腰はもうガタガタの状態ですが
見かけだけはかなり若いと思っています。
たまに優先席が空いているときは座ったりはしますが
人に席を譲られたことは一度もありません。
ああ、それなのにそれなのに・・・
彼の好意には素直に感謝しつつも
どうしても素直になりきれない自分がいます。
ああ、とうとう俺もそんな年齢に見られるハメになったか。
理不尽です、納得できません。