本棚を整理していたら
ほこりをかぶった古いパンフレットが出て来ました。
写真は詩人の茨木のり子さんですねえ。
四年前だったか五年前だったか・・
世田谷文学館で開催された「茨木のり子」展のものです。
向田邦子さんにどこか似ていませんか?
お二人の間に接点があったかどうかはよく知りませんが
どちらも知性と意志の強さを感じる美人です。
心にしみるようないい展覧会でした。
詩の原稿や草稿はもちろん、詩人仲間との書簡集などもあって
実に興味深く会場を見て回った記憶があります。
とくに東伏見にあった彼女の自宅が
お気に入りの家具やこだわりの雑貨とともに再現されていて
すっかり興奮してしまいました。
彼女の詩は頭の中で構築した難解な言葉ではなく
生活の中から自然に紡ぎ出した言葉だったのでしょうね。
茨木さんの書く詩はどこか男性的です。
万事に軟弱な私など思わず身が引き締まってしまいますが
それでいて女性らしい細やかな観察眼もあって
そこらあたりも向田邦子さんと共通するものがありますね。
最近のお気に入りはこの詩です。
「一人は賑やか」
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな森だよ
夢がぱちぱち はぜてくる
よからぬ思いも 湧いてくる
エーデルワイスも 毒の茸も
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな海だよ
水平線もかたむいて
荒れに荒れっちまう夜もある
なぎの日生まれる馬鹿貝もある
一人でいるのは賑やかだ
誓って負け惜しみなんかじゃない
一人でいるとき淋しいやつが
二人寄ったら なお淋しい
おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな
恋人よ
まだどこにいるのかもわからない 君
一人でいるとき 一番賑やかなヤツで
あってくれ
一人が「賑やか」と感じる感性は素晴らしいですねえ。
一人は孤独と同意語ではないんです。
私も一人が大好きな人間ですが
よからぬ夢想ばかりしていてちっとも生産性が上がりません。
池に氷が張っています。
団地の水道管が破裂して水があふれていました。
北海道では流氷がやって来たというニュースもやっていました。
大寒から立春にかけてのこの時期が
おそらく一年で一番寒いのでしょうねえ。
茨木のり子さんの詩に励まされて
今日も頑張りたいです。