まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

へたも絵のうち

2018年01月09日 | 日記

久しぶりに国立近代美術館です。
久しぶりに熊谷守一画伯の展覧会です。
没後40年を記念した大々的な回顧展だそうです。

お馴染みの猫の絵です。
展覧会の表題は「生きるよろこび」です。
今どきそんなことを言われても
気恥ずかしくて困ってしまうようなタイトルですが
そんな言葉が似合う画家は熊谷さんしかいないかも知れませんねえ。
晩年はわずか15坪ほどの自宅兼アトリエに籠り
身近な草花や昆虫、小動物などの生態を熱心に観察しながら
それを単純化した独特のタッチの絵を描きました。
極度の芸術家気質で「絵を売る」という観念が全くなく
常に貧乏暮らしだったと言います。
文化勲章の打診があったときも「お国のために何もしていない」からと
断った話はあまりにも有名ですね。
人はそんな熊谷画伯を「画壇の仙人」と呼びました。

この「ありんこ」のデフォルメは
豊島区の熊谷守一美術館の玄関に飾られた作品です。
蟻はどっちの足から歩き始めるのか・・・
ひたすらそんなことを考えながら
食い入るように地面を見つめていたと言います。
そんな熊谷さんのいつもの口ぐせは「へたも絵のうち」でした。

    上手は先が見えてしまいますわ。
    行き先もちゃんとわかっていますわね。
    下手はどうなるかわからない、スケールが大きいですわ。
    上手な人よりスケールが大きいです。

ヘタなスケッチが趣味の私は
この言葉にどれほど励まされたか知れません。〈笑〉

展覧会は思っていた以上に見ごたえがありました。
熊谷守一さんは現在の東京芸術大学を首席で卒業した英才で
将来を嘱望されるまま若い頃は濃密で暗いタッチの油彩画を描いていましたが
それが現在のシンプルな画風に変わっていく過程が
本当によくわかって発見でした。
それに熊谷さんの絵はマニアックというイメージが強いのに
作品を所蔵している美術館は全国多岐に渡っていて
それだけ人気があるというのも意外でした。

没後40年を記念した
映画「モリのいる場所」も5月に公開されるそうです。
主演は山崎務、奥様役に樹木希林。
日本の映画界を代表するこの大ベテラン二人が
初共演というのも意外ですが
主演の山崎さんは熊谷画伯を「僕のアイドル」と呼ぶほど
その作品の大ファンだと言います。
いやあ、5月の公開が待ち遠しいですねえ。
それまでせっせと「ヘタなスケッチ」でも描いて待ちたいと思います。