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「スライム組織」のご紹介

2008年06月17日 | 産業

世の中には、柔軟で強い組織について、いろいろな研究や実践がなされています。そのなかには、例えば「アメーバ組織」というものがあり、いろいろな方々が熱心に研究をされたり、文章を書かれたりしていますが、私は次の時代を迎えるにあたって、もう少し突っ込んだ考え方があってもよいのではないかと考えます。私自身、その考え方を「アメーバ組織」に対して、「スライム組織」と呼んでもよいのではないかと思っています。

「スライム」という言葉を調べると、次のような記述が出てきます。

-泥状・粘液状のぬるぬるとしたもの
-転じて、そのような性状を持った架空の生物や玩具・教材

スライムは変幻自在であり、環境に応じてさまざまな形に変わるものです。ゲームのキャラクターにもなっているので、生き物でないようで生き物であり、生き物であるようで生き物でないといった不思議さもあります。

現代社会は、あらゆるところに閉塞感が生まれ、また将来に対する不安も増してきています。こうした時代にあって、次の時代に移り変わるには、非常に大きなパラダイムシフトが必然であり、これからの時代を切り拓いていく組織は、そうした巨大なパラダイムシフトに即応していくことが求められていきます。

社会の枠組みが形成され、一定のルールに基づいて発展すれば良いといったフェーズにおいて、組織はそのルールに従った構造を持ち、内部での機能分担を明確にしながら突き進むのが効率的です。会社で言えば、その時代の環境に合わせて、それぞれの部署がそれぞれの担当を持って、日々の業務をこなしていくということが、最も効率的であるということになります。程度の差はあれ、高度成長期の日本の「イケイケドンドン」的な発展というのは、こうした仕組みのなかで達成されてきたように思います。

しかし、社会の成長が行き詰まり、先行きが不透明になると、その枠組みに軋みが生じてきます。そして、ルールそのもの、あるいはそれに応じた環境全体が大きく変わる可能性が増大していくのです。こうしたフェーズでは、組織はそうした環境に如何に即応できるかということが重大な問題となります。こうなると、「イケイケドンドン」時代に構築されて以降、固定化した組織構造が、かえって仇となる可能性が出てくるため、既存の組織は環境即応型の仕組みづくりに熱心になるわけです。

こうした環境に対応するための仕組みとして、プロジェクト制というものがあります。プロジェクト制とは、環境や変化に迅速に対応するため、既存の組織図に囚われずに、人員配置や進捗管理をしていくもので、営利企業に限らず、これを取り入れている組織は、非常に多くなってきているように思います。しかし、新しい時代を迎えるにあたって、非常に大きなパラダイムシフトが必然であるという前提に立つと、私は今のプロジェクト制でも、到底、十分な柔軟性やスピードを確保しているとは言えないだろうと考えます。

ここで簡単にプロジェクト制について、整理してみたいと思います。

ここに、ひとつの旧来型企業があるとします。その企業が通常こなしている業務は、大体決まっており、日々の定型業務は、それぞれ定められた担当部署が行います。しかし、環境が大きく変わる等によって、それに応じた特殊業務が発生した場合、特定の部署だけでは対応できないため、横断的に機能するプロジェクトを立ち上げるというケースが出てきます。例えば、30年ぶりに法律が変わった等という場合、到底、法務部だけでは対応できず、関連する部署(人事、経理、営業等)の人々を巻き込みながら、対応策を練り上げるといった場合が、これにあたります。この場合、通常の部署は据え置いたまま、こうした特殊なケースについてのみ「法改正対応プロジェクト」といったようなものを立ち上げ、関連する複数の部署(人事、経理、営業等)から、それぞれプロジェクトメンバーを派遣してもらうといったかたちになるのかもしれません。

しかし、新しい時代を迎えるにあたっては、単なる環境変化ではなく、もっと大きな変化であるパラダイムシフトまでを想定しなければならないのです。つまり、あらゆることが変化の連続であり、むしろ「仕事」とは、如何に変化に対応していくかということでもあるわけです。こうなると、もはや通常の部署はかたちだけのものとなり、ほとんどの業務がプロジェクト制で回っていくということがありえます。プロジェクト制を積極的に導入している企業では、ひとまず組織図を置いておきながらも、事実上の業務はプロジェクト制のルールによって、動いていくことになります。プロジェクトは、環境に応じて新しく生まれたり、閉じられたり、統廃合したりを繰り返すので、環境に応じた業務遂行が可能になります。

私は、プロジェクト制について、さまざまな変化に対応するための組織作りの試みとして、ある一定の成果を挙げているのではないかと思っています。しかし一方で、プロジェクト制にはひとつの大きな限界があるとも考えています。

それは管理するべき組織、人、業務を二次元的に捉えざるをえないというポイントにおいてです。これはデータベースの問題でもあります。実際に、関連する業界では、その問題が提起され、改善についてもさまざまな試みがなされているようです。しかし、本件の根本的な解決はなかなか難しいように見受けられます。

私は、この問題の根本的な解決には、三次元的な発想が必要になるだろうと考えています。そして、組織を如何に三次元的なイメージで捉え切れるかが、これからの組織の柔軟性と即応性を決定付けていくだろうと思うのです。冒頭に「アメーバ組織」ではなく、「スライム組織」と表現したのは、この三次元的な概念を導入することの重要性を表しています。変化に対して、柔軟かつ迅速に対応しつつ、積極的に三次元的な概念を導入するのが「スライム組織」であり、こうした組織でない限り、次の時代を迎えるにあたって生じる、大きなパラダイムシフトを乗り越えていくことは、極めて難しいのでないかと思うのです。

ただし現在、こうした「スライム組織」を作るには大きな問題があります。それは人事評価やリソース配分等の管理システムはもちろん、それを構築するうえでの組織哲学等を含めて、あらゆる意味での難しさがあるということです。しかし同時に、「スライム組織」を作ることは、十分に可能であろうとも考えています。

「スライム組織」については、機会を見ながら、あらためて整理するようにしたいと思います(「「スライム組織」の強み」参照)。ひとまず、ここでは「スライム組織」なる考え方があるということをご紹介いたしました。

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