常識について思うこと

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「てんちゃん」という愛称

2010年12月16日 | 日本

ちょっと前のことですが、仲間と古代史の話をしていた際、ふと仲間の口から「てんちゃん」という言葉が飛び出しました。この「てんちゃん」、天皇のことを指していたのですが、同席していた一部の人々は、少々びっくりしたような顔つきになっていました。天皇に限らず、皇族というだけでも、「殿下」や「様」を付けるのが一般的なのに、天皇陛下を指して「てんちゃん」とは何事かといった空気でした。しかし、その彼からすると、天皇をバカにしているようなつもりは一切なく、親しみと愛情を込めた呼び名として、「てんちゃん」と言ったというのです。私としては、この気持ちとてもよく分かる気がしています。

天皇には、「陛下」という敬称があります。これをウィキペディアで調べると、「「玉座、高御座(たかみくら)の陛(階段)の下においでのお取り次ぎの方にまで申し上げます」程度の意味」と出てきますが、要は、君臣の関係に由来しているわけです。

しかし、私個人は天皇と君臣の関係にありません。したがって、「陛下」と呼ぶのにはいささか抵抗感があるのです。かといって、天皇と呼び捨てにするのも、少々気が引けるので、私の場合、日常会話の中では「天皇さん」と呼ばさせていただいています。これは、どこかの社長を「社長」とだけ呼ぶのは、少々横柄な気がして、「社長さん」と呼ぶのと同じ感覚です。そういう意味で、私はさすがに「てんちゃん」とは呼びませんが、愛称としての「てんちゃん」という呼び名自体、それほど悪いものではないと思うのです。

そもそも、天皇だけでなく、皇族の方々に限って「殿下」や「様」を付けるのは、私の世界観からすると、いささか歪な感じがしています。人間平等であり、天皇はあくまでも国家、国民を象徴するという立場にある人間なのですから、そこには君臣関係も、上下の関係もありません。仮に、相手に対して「様」をつけるのであれば、先方も自分に対して「様」付けで呼ぶべきでしょう(「ミラーマンな自分」、「他人は自分の鏡」等参照)。これは手紙の宛名書きと同じです。天皇や皇族の方々が、私に対して「様」付けされるのであれば、私の側からも「様」付けでお返しするのが筋だとは思います。しかし、そうでない以上、相手を尊重する意味合いが含まれる「さん」付けで十分ではないかと思うのです。他の日本国民の方々がどう考えるかは知りません。ただ少なくとも、私自身はそう思っています。

しかし、政府のお仕事をされている方々は、若干、事情が異なるのかもしれません。特に政府の要職である大臣は、読んで字のごとく「臣」の字が入っているのであり、その長たる総理大臣は、天皇によって任命されています。ここには、見方によっては、主権者である国民を象徴する天皇との間に君臣関係が成り立っていると言えなくもありません(「臣下の長たる内閣総理大臣」参照)。

「てんちゃん」という愛称が、良いか悪いかの議論ではありません。それぞれの立場や考え方によって、その呼び方が実に様々なものに変わり得るということ自体、多様性という意味で、とても面白いのではないかと思います。そして、そういう多様性が認められるということに、今の日本社会の素晴らしさをを感じるのでした。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (iphone小僧)
2010-12-21 10:02:04
当たり前のように使っている言葉もよく考えると可笑しいって思うこと多いですよねー。
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はい (竹内一斉)
2010-12-21 10:38:22
iphone小僧さん、コメントありがとうございます。
そうですね。ちょっとした違和感とか、ひっかかることを掘り下げていくと、いろいろと気付くことがあるのかもしれません。
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Unknown (落語では・・・)
2011-01-02 23:51:09
桂米朝の上方落語では、「お天さん」という呼び方もされてますね。
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お天さん (竹内一斉)
2011-01-03 00:18:26
なるほど、お天さんですか。それもいいですね(笑)。
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