満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

    JIMI TENOR & KABU KABU 『JOY STONE』

2007-09-12 | 新規投稿

これは黒い。そして濃い。しかもエロい。
ジャズグルーブどころではない。フェラクティの呪術性にP-FUNKのエロやサンラーの宇宙を混ぜてマイルスのスタイリッシュをもミックスしたようなモスト・ブラックな世界。濃すぎるね。音がしつこい。そしてくどい。この快楽の持続、最高である。洗練の極みであるフィンランドジャズシーンの異端児、ジミ・テナーがアフロのKABU KABUとジョイントした一枚。よくぞここまで黒くした。これはもうクラブジャズでもないし、スピリチュアルでもない。一番近いのはファンカデリック、パーラメントだろう。音楽性は豊かだが、その快楽のツボを攻めまくる感触は、音楽の身体的表現の極み。楽器の音もボイスも全てが濃厚な陶酔的空気の中で響き渡る。トリップの無限に身を委ねるのではなく、自らの肉体を意識しながら得られる快楽、五感をフル活用して気持ちよさを内側へ取り込むような音響である。

ファイブコーナーズクインテットのティモラッシー(sax)、ユッカエスコラ(tp)も参加したこのアルバム。洗練一辺倒と思われたフィンランドシーンの底辺の広さを見せつけられた思いだ。いや、関係ないか。ジミ・テナーという特異なアーティストの持つ表現意識がアフロビートと自己の観念性を結びつけたパーソナルな世界。明確なコンセプトを具現化する力が彼にあり、シーンとの関わりがその狭い地域性故に結ばれたのだろう。異才とは突然変異の如く表出する。

3曲目「I wanna hook up with you」の音の粘り。溶け具合。そしてドロドロのものが次第に固まっていくかのような錬金術性。この音楽の生命力は単に音響効果の成せる技ではないだろう。概念とは言わないが、ある種の目的意識と肉体性が合致した音楽。しかるに実現した濃度ある快楽音楽。
エスノとポップが紙一重のところで対峙する。歌をポップにすればいかにも安易な快感で終わり。リズムを味わい深くヒネる事が高濃度ポップの領域を約束する。エスニックな味付けが逆にチープに陥るパターンが多い中、ジミ・テナーは絶妙のバランスを獲得した。

4曲目「hot baby」のエロウィスパーはゴングのジリスミス以上か。これに匹敵するのは青江三奈だけ?いや、冗談だが、家族が一緒の車中でこれをかけたのは私の失策。

しかし全編、濃いね。スペイシーな音響や怒濤のパーカッション、スタイリッシュな単線ビートがごった煮のように展開される。コテコテな味わい。もう腹一杯である。ここらであっさりしたものを食べたいな。ファイブコーナーズのティモラッシー(sax)のソロが出たのでこれ、聴こう。

2007.9.8








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