18才の俺は熊本のとあるビルの最上階から
スクランブル交差点を見下ろしている。
蟻のように見える人の群れと、その流れはひたすら遅く
急ぐ必要など無いかの様に横断歩道を移動している。
この街の人々のスピードは俺を和ませるには充分だったし
よそ者の俺にはお似合いのテンポじゃないかと感じている。
今思い返せば記憶のスタートはいつもあの風景。
ビルの最上階から見ていたあの風景が全ての始まりだった。
ひなびた駅の裏通りにある純喫茶で珈琲を飲みながら
柄にもなく過去を振り返っている俺も年が明ければ34になる。
窓の外を見ると街はすっかりクリスマス気分で浮かれている。
俺の父は従業員30名ほどの小さな会社を経営しており
いわゆる世間的には中流家庭と呼ばれる環境下で
俺は何一つ不自由なく育ってきた。
欲しい物で手に入らないものは無かったし
好きな習い事も続けるという条件付きながら
必ず好きにやらせてもらい必ず長続きしなかった。
このさき不満なんて感情を持つことさえないような
幸せな日々をそれこそ平々凡々と過ごしていた。
そんな俺が家からの脱出を計画し始めたのは
高校二年の秋にさしかかった頃だったろうか。
3才年下の妹だけは俺の企みに薄々感づいていたようで。
当時フォークシンガーきどりで下手な自作曲を
誰に聴かせる訳でもなく1人部屋で調子っぱずれに
唄うのが俺の趣味であり日課であった。
ある日、俺の歌に隣部屋の妹が聞き耳を立てていると
家を出る~とか旅立つのさ~等と呑気に唄っているのだから
大抵の人にはバレて当然、しかも相手は共に育った妹である。
妹には固く口止めし計画は更に進んでいくのだったが・・・。
雑記帳より その弐へつづく。
スクランブル交差点を見下ろしている。
蟻のように見える人の群れと、その流れはひたすら遅く
急ぐ必要など無いかの様に横断歩道を移動している。
この街の人々のスピードは俺を和ませるには充分だったし
よそ者の俺にはお似合いのテンポじゃないかと感じている。
今思い返せば記憶のスタートはいつもあの風景。
ビルの最上階から見ていたあの風景が全ての始まりだった。
ひなびた駅の裏通りにある純喫茶で珈琲を飲みながら
柄にもなく過去を振り返っている俺も年が明ければ34になる。
窓の外を見ると街はすっかりクリスマス気分で浮かれている。
俺の父は従業員30名ほどの小さな会社を経営しており
いわゆる世間的には中流家庭と呼ばれる環境下で
俺は何一つ不自由なく育ってきた。
欲しい物で手に入らないものは無かったし
好きな習い事も続けるという条件付きながら
必ず好きにやらせてもらい必ず長続きしなかった。
このさき不満なんて感情を持つことさえないような
幸せな日々をそれこそ平々凡々と過ごしていた。
そんな俺が家からの脱出を計画し始めたのは
高校二年の秋にさしかかった頃だったろうか。
3才年下の妹だけは俺の企みに薄々感づいていたようで。
当時フォークシンガーきどりで下手な自作曲を
誰に聴かせる訳でもなく1人部屋で調子っぱずれに
唄うのが俺の趣味であり日課であった。
ある日、俺の歌に隣部屋の妹が聞き耳を立てていると
家を出る~とか旅立つのさ~等と呑気に唄っているのだから
大抵の人にはバレて当然、しかも相手は共に育った妹である。
妹には固く口止めし計画は更に進んでいくのだったが・・・。
雑記帳より その弐へつづく。