シャトルの展示を出た後、サイエンスセンターの中をウロウロして常設展を見た。常設展は、日本のそこら辺にある科学館と規模も展示内容もそんなに変わらない。壊れている展示も結構ある。子供達が大勢はしゃぎまわっている。お腹が空いたので何か食べようと思ったが、マクドナルドと売店しか見当たらない。僕はなんでもいいけれど、クミコはもっとちゃんとしたものを食べたがるので、少し足を伸ばして"Cheesecake Factory"に行くことにした。
その前に、空腹を抱えてミュージアムショップを覗き、僕はモンスターズ・インクのマイクから長い三本脚が生えたような宇宙人のボイスレコーダーを買った。モーションセンサーが入っていて、誰かが前を通ると録音した声が流れる。
車に乗って検索するとMarina Del ReyのCheesecake Factoryが近いので、そこへ行くことにする。Marina Del Reyは世界最大のマリーナらしい。行ってみると、底抜けに明るい海に白いクルーザーだかヨットだかがびっしり停泊している。Cheesecake Factoryがどこでもそうなのか、ここがお金持ち向けエリアだからなのか、駐車場はバレーで内装も制服も僕が"BigBang Theory"で見ていたものと随分違う。まあいいか。
外のテラス席に座って、海とビーチとヨットを眺めながら、僕はバーベキュー・ベーコン・チーズバーガーに類するものを注文した。ここでは灰色の鳥が幅をきかせていて、レストランの客が何か溢してないかとテーブルの下を歩き回っていた。
結構な量の食べ物が僕達のテーブルに運ばれてきて、2人でお腹に詰め込んでいると、近くのテーブルにはバースデーケーキが運ばれ来て誰かの誕生日が祝福される。そのテーブルの人達がハッピーバースデーの歌を歌いはじめたので、テラス席にいる人はみんな歌うのかと思ったら誰も歌わない。そう誰も歌わない。日本人はノリが悪くて欧米人はノリがいいという都市伝説はあっさりと壊れる。日本でももうちょっと周りの人が誕生日テーブルを気にして歌ったりすると思うけれど、この時は完全に無視だった。
この「ノリ」とか「恥ずかしがる」に関する都市伝説に、「日本人は教室で恥ずかしがって質問しないが、欧米人は下らない質問でもなんでもガンガンする」というものがある。
これも嘘ではないかと思っていたら、この翌々日訪れた空母見学で、「何か質問は?」「・・・」「誰か、質問ない?」「・・・」「質問してもらわないと、私が困るんだけど、質問してもらえない場合に備えてしゃべることも用意してるんだ。勝手に喋らせてもらうよ、いい? ほんとに質問ない?」「・・・」というシーンに出くわした。内部見学ツアーは20人毎に区切られていて、20人も人がいるのに誰も何も言わない。
こういう場面では僕は勝手に責任を感じてしまうので、あれこれ質問を考えたけれど何1つ聞きたいことが浮かばなかった。話し手や状況の魅力がなかったというだけのことかもしれない。
ピザとハンバーガーとフライドポテトとワカモレとサラダを頼んだら、パンも付いてきて食べきれないのでドギーバッグに入れてもらった。もう時刻は午後4時を回ろうとしていて、今日は夕食の約束もあるので不安な気分になる。お金を置いてテーブルを立つと、さっきの誕生日テーブルの人達もそろそろ支払いみたいだった。こちらも食べきれなかったと見えてドギーバッグをめいめいが手にしていた。店を出て、表で駐車場係に車を取ってきてもらうのを待っていると店から出てくる人は大抵がドギーバッグを持っていて、さらに僕達より先に車を待っている人達もドギーバッグを持っていた。なんというか。
お腹が一杯になった僕達は、そのまま少し北上してベニス・ビーチを目指した。
ベニス・ビーチ。
スケートボードの聖地。
1970年代に、この町では Zephyr skateboard teamが活躍した。
ビーチにはたぶん世界で一番有名なスケートパークがある。
カリフォルニアの大賑わいな通りに臨む広いビーチという果てしなく恵まれた環境にあるスケートパーク。
僕はトリックもろくにできないヘッポコだが、スケートボードにはかなり思い入れがある。
以前、何かのインタビューでもう「老人」なのにスケートボードに乗っている人がこんなことを言っていた。
「もうおじいさんの年齢なのに、まだスケボーとか乗ってるんですか、って言われるんですよ。でもそれは僕にとっては的外れな指摘なんです。スケボーというのは只の乗り物でもスポーツでもなく、文化とかスタイルとか生き方の問題だから」
たぶん世の大半の人達は、このおじいさんの言っていることに「何言ってんだか、まあ元気みたいでなにより、はいはい」という感想を抱くのではないかと思う。
だけど、僕は彼の言っていることにかなりの共感がある。
昔、僕の友人がスケボーに乗っていて警官に止められた。そしてやりとりの後、こう言われたそうだ。
「いい年こいて何してんだ」
僕は、このおじいさんと友人に共感し、この警官に中指を立てるスタンスの人間だ。それはもう明確に。
その前に、空腹を抱えてミュージアムショップを覗き、僕はモンスターズ・インクのマイクから長い三本脚が生えたような宇宙人のボイスレコーダーを買った。モーションセンサーが入っていて、誰かが前を通ると録音した声が流れる。
車に乗って検索するとMarina Del ReyのCheesecake Factoryが近いので、そこへ行くことにする。Marina Del Reyは世界最大のマリーナらしい。行ってみると、底抜けに明るい海に白いクルーザーだかヨットだかがびっしり停泊している。Cheesecake Factoryがどこでもそうなのか、ここがお金持ち向けエリアだからなのか、駐車場はバレーで内装も制服も僕が"BigBang Theory"で見ていたものと随分違う。まあいいか。
外のテラス席に座って、海とビーチとヨットを眺めながら、僕はバーベキュー・ベーコン・チーズバーガーに類するものを注文した。ここでは灰色の鳥が幅をきかせていて、レストランの客が何か溢してないかとテーブルの下を歩き回っていた。
結構な量の食べ物が僕達のテーブルに運ばれてきて、2人でお腹に詰め込んでいると、近くのテーブルにはバースデーケーキが運ばれ来て誰かの誕生日が祝福される。そのテーブルの人達がハッピーバースデーの歌を歌いはじめたので、テラス席にいる人はみんな歌うのかと思ったら誰も歌わない。そう誰も歌わない。日本人はノリが悪くて欧米人はノリがいいという都市伝説はあっさりと壊れる。日本でももうちょっと周りの人が誕生日テーブルを気にして歌ったりすると思うけれど、この時は完全に無視だった。
この「ノリ」とか「恥ずかしがる」に関する都市伝説に、「日本人は教室で恥ずかしがって質問しないが、欧米人は下らない質問でもなんでもガンガンする」というものがある。
これも嘘ではないかと思っていたら、この翌々日訪れた空母見学で、「何か質問は?」「・・・」「誰か、質問ない?」「・・・」「質問してもらわないと、私が困るんだけど、質問してもらえない場合に備えてしゃべることも用意してるんだ。勝手に喋らせてもらうよ、いい? ほんとに質問ない?」「・・・」というシーンに出くわした。内部見学ツアーは20人毎に区切られていて、20人も人がいるのに誰も何も言わない。
こういう場面では僕は勝手に責任を感じてしまうので、あれこれ質問を考えたけれど何1つ聞きたいことが浮かばなかった。話し手や状況の魅力がなかったというだけのことかもしれない。
ピザとハンバーガーとフライドポテトとワカモレとサラダを頼んだら、パンも付いてきて食べきれないのでドギーバッグに入れてもらった。もう時刻は午後4時を回ろうとしていて、今日は夕食の約束もあるので不安な気分になる。お金を置いてテーブルを立つと、さっきの誕生日テーブルの人達もそろそろ支払いみたいだった。こちらも食べきれなかったと見えてドギーバッグをめいめいが手にしていた。店を出て、表で駐車場係に車を取ってきてもらうのを待っていると店から出てくる人は大抵がドギーバッグを持っていて、さらに僕達より先に車を待っている人達もドギーバッグを持っていた。なんというか。
お腹が一杯になった僕達は、そのまま少し北上してベニス・ビーチを目指した。
ベニス・ビーチ。
スケートボードの聖地。
1970年代に、この町では Zephyr skateboard teamが活躍した。
ビーチにはたぶん世界で一番有名なスケートパークがある。
カリフォルニアの大賑わいな通りに臨む広いビーチという果てしなく恵まれた環境にあるスケートパーク。
僕はトリックもろくにできないヘッポコだが、スケートボードにはかなり思い入れがある。
以前、何かのインタビューでもう「老人」なのにスケートボードに乗っている人がこんなことを言っていた。
「もうおじいさんの年齢なのに、まだスケボーとか乗ってるんですか、って言われるんですよ。でもそれは僕にとっては的外れな指摘なんです。スケボーというのは只の乗り物でもスポーツでもなく、文化とかスタイルとか生き方の問題だから」
たぶん世の大半の人達は、このおじいさんの言っていることに「何言ってんだか、まあ元気みたいでなにより、はいはい」という感想を抱くのではないかと思う。
だけど、僕は彼の言っていることにかなりの共感がある。
昔、僕の友人がスケボーに乗っていて警官に止められた。そしてやりとりの後、こう言われたそうだ。
「いい年こいて何してんだ」
僕は、このおじいさんと友人に共感し、この警官に中指を立てるスタンスの人間だ。それはもう明確に。