『ぼくらは地底王国探検隊』

2009-10-31 17:38:29 | Weblog
 春のはじまり、3月24日に佐藤真佐美さんは亡くなったということだ。
 1、2ヶ月ほど前、ふと昔読んだ『ぼくらは地底王国探検隊』という本のことを思い出して検索してみたところ、作者である佐藤さんが今年亡くなったという記事を見付けた。

 この本は、僕が生まれてはじめて読んだ長い小説だった。長いといっても児童文学なので、大人ならさっと読めるような短さだ。でも、それまでイソップ童話だとか日本昔話だとかしか読んだ事のなかった当時の僕にとって、それは長い、たっぷりとした物語だった。まだ父母妹と僕が一緒に和室で寝ていて、一番端の僕は目の前がすぐ床の間だった。本は布団の中で寝ながら、枕元のスタンドで読んだ。

 今から思えば、この読書体験は僕のその後を決定付けた要素でもある。あまりに面白かったので、それから沢山本を読むようになった。そしてテイストとしてはやっぱり探検や冒険を好んだ。

 昨日すこし自分のルーツを見直してみようと思い、図書館へ行って、『ぼくらは地底王国探検隊』と、その続編である『ぼくらは知床岬探検隊』を借りてきました。続編の存在は最近まで全く知らなかった。挿絵が変なのと、あと内容をざっと見たところそれほど面白くもなさそうなので読まないかもしれません。

 地底王国探検隊の方は早速読んでみました。大きな字で200ページもないのでやっぱり今読むとあっさり読めます。20年ぶりくらいで読んだのですが、流石に僕も大人になっていて、それほど面白いとは言えません。

 ただ、読んでいて、今の自分が本を通じ20年前の自分に何かを送ったようなおかしな気持ちになりました。そして20年前の僕はそれをちゃんと受け取っていたような気がします。変な話だけど。

 発見したことが2つあります。

 1つ目は、この本は読書に導いただけでなく、僕の好みを完全に方向付けたものだということです。実は今長い小説を書いているのですが、それは「この物語を大人向けに書き直したものだ」と発表した後で指摘されてもイエスというしかないようなものだと思いました。読み返すまで全くそんなことを意識していなかったので、とてもびっくりしました。

 2つ目は、大人になってから知ったと思っていた事のいくつかを、僕は既にこの本の中で読んでいた、ということです。たとえば物語の舞台が富士山麓なので、中に富士講という宗教のことも説明付きで出てきます。だから僕は10歳くらいのときに富士講の存在を知っているわけですが、そんなことすっかり忘れていて、大学院生になってから読んだ本でその知識を仕入れたつもりになっていた。
 あと、本栖湖へ行ったときに「本栖湖へよってけし」という看板が出ていて、すごく変な方言だなと思っていたのですが、本の中で登場人物が既にその方言を使っていました。
 昔知っていたことをすっかり忘れて、それでまたそれを体験したときに驚くというのは、まったくもって僕達の人生そのものみたいだなと思う。
 そう、僕達は知っています。

身体性の拡張。

2009-10-28 14:04:06 | Weblog
 身体性の拡張とは、我ながら単純なタイトルだなと思うけれど、お気付きの方もあるように最近タイトルをちゃんと内容に関係したものにするよう心掛けています。昔のエントリーを読み返すと、気取った変なタイトルが付いていてどれが何かさっぱり分からなかったからです。

 さて、今から書こうとしていることは、基本的に内田樹先生のブログで読んできたことに僕なりのトッピングを施しただけのものです。僕はその昔2度内田先生にお会いしたことがあるのですが、当時はまだこんなに本も売れていなくて、純粋に武術関係の集まりにおけるホストとしてしか認識していませんでした。後に自分がこんなに影響を受けるようになるとは思いもよらなかった。僕はもともと仏教や禅、哲学で理論武装して宗教の勧誘の人を困らせるのが好き、みたいな捻くれたことろがあったのですが、そういった捻れが内田先生によって上書き強化された感じです。

 では本題に入ろうと思う。
 最近の内田ブログに物凄く面白いエピソードが書かれていました。

『アフリカにはおむつというものをしないで育児をしている集団がある。
 こどもが便意を催したら、「よいしょ」とおんぶひもから下ろして、ぶりぶりじゃあじゃあとうんちおしっこをさせる。
 研究に行ったアメリカの人類学者が「どうしたら、子供が便意を催したことがわかるのですか?」と質問したら、聞かれた母親はきょとんとして「あなたは自分がおしっこしたくなったとき、それがわからないの?」と反問したそうである。』

 凄過ぎる。
 何が分かったのかも良く分からないくらい大きなものを分かった気分になって「そうだったのか」と言ってしまいそうなくらいすごいエピソードだと思う。

 内田先生は合気道の人なので「我々ならそれを気と呼ぶ」と、このエピソードを受けておられます。僕も一応合気道の人なのでそれはとても良く分かる。

 「和合」という言葉は合気道のキーワードで、昔は「相手と一つになる」ということがぼんやりとしか理解できなかった。分かったような分からないような言葉だから、大学1年生の夏合宿で「和合」と書かれた色紙(植芝盛平先生に書を教えていた阿部先生が書いてくれた)を貰ったときもみんなで「和合、和合」と言って笑っているだけだった。

 今では昔よりずっと良く分かる。
 武術では自分の身体を精密に操作することを覚えた後、剣術や棒術、槍術など武器の扱い方を学ぶ。折角鋭い突き蹴りなどができるようになった後、(普段持ち歩かないから実用性もなさそうな)重たい剣や丈を持つのははっきりいって苦痛以外の何ものでもない。でもそれは通過すべき関門であって、そこで修行者は「身体+武器」というシステムの扱い方を学ぶ。武器というのは戦闘で役立つ物であると同時に、体の動きを妨げる邪魔者でもある。その邪魔者と自分自身を一体としたシステムの扱いを学ぶこと、武器を拡張された身体の一部として扱うことは次のステップへ進む前に学ばれなくてはならない(武器を用いない流派では壷を持ったり棍棒を振ったりというトレーニングがある。あれらは筋トレの器具ではない)。

 「身体」から「身体+武器」へと拡張された身体は、次いで敵と相対する。即ち敵を拡張した身体の一部と見なす新しいシステム「身体+敵(+武器)」の扱い方を学ぶ。究極的には自分で自分の頬を殴るのと同じくらいの簡単さで敵の頬を殴るという次元がそこには存在している。あるいは自分で床に転がるのと同じ感覚で相手を転がすことができる。

 言うまでもなく、この「和合」の感覚は一人の敵に留まらず、自分の乗る馬、自分の率いる軍隊、敵の軍隊、地形、気候、そして宇宙全部にまで広がる。だから時々武術家は「宇宙と一つになる」とか「地球の力を借りる」だとか大袈裟なことをいうように聞こえる。でもあれは伊達や酔狂で言っているんじゃありません。
 平和の為に武術を習うというのも、別に抑止力としてではなく、武術というのが謂わば「境界を消していく」行為だからです。天下無敵というのはまさにその意味で、誰よりも強い、という意味ではなく、本当に「敵って何?みんな友達でしょ?」って意味だと思う。きれいごとの理想論でも、理想ならとにかくそこを目指せば良いじゃないかという運動。

 もちろん、何も話を武術に限定するわけではなくて、ほとんどなんでも同じことです。たとえばF1ドライバーは自分のマシンと和合しているだろうし、トップレベルのドライバーは自分のマシンとだけではなくチームや他のマシンやコースそのものとも和合しているはずだ。さらに観客とまで和合できるドライバーがトップに立つだろう。

 このとき僕達は「気」という言葉を使う。「気」の存在を科学で証明しようとかそういう話もあるけれど、気というのは「システムの存在」を概念的に表す言葉だろう。うまく和合している対象と自分の間に「気が通った」と言える。たとえばブラインドタッチでキーボードを叩いているタイピストはキーボードに気を通わせることができているけれど、それはタイピストの体から何かが出てキーボードに入っていくというイメージではない。ただタイピストとキーボードの境界が消滅するというイメージだと思う。

 アフリカのお母さん達は子供と和合している。
 まさか人の便意まで自分のものとして感じられるなんて!
 僕達は本当に予想外のものまで自分の一部として受け止めることができるようです。

八ッ場ダム/犯罪統計/社会主義。

2009-10-28 13:08:04 | Weblog
 毎日新聞から

 八ッ場ダム建設:前原国交相「再検証」大澤知事「大きな方向転換だ」/群馬

 八ッ場ダムの建設計画が発表されたのは1952年だそうです。今は2009年だからざっと57年前。これだけ時間が掛っている時点ですでに必要性の低さを表しているように思えます。本当に必要なら60年もごちゃごちゃ言わないでさっさと作っていると思う。
 前原さんの「再検討」は、とりあえずそうでも言わないと話がはじまらないから言っただけだと思うけれど、頑張って欲しいなと思う。新しい民主党政権の中で前原さんが大人しそうなのに一番バッサバッサと切り込んでいますね。羽田のハブ化も当たり前のことだと思うので是非実現して欲しいです。

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 ちきりんさんのブログから

 犯罪統計より

 「反社会学講義」の中でパウロ・マッツォーニも言っていたけれど、日本で殺人などの凶悪犯罪は増えていません。減っています。というエントリーです。
 日本では殺人のほとんどが家族の間で起こっていて、1977年の古いデータだけど、殺人に占める割合で、子供を殺すのが35%、配偶者11%、親6%。殺人というのは日本では大抵結びつきの強い人との間で起こるようです。近年、人と人との結びつきが希薄になり、殺人は減った。代わりに自殺が増えています。

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 金融日記、藤沢さんのブログから

 郵政国営化、そして人類史上最大の金融詐欺がはじまる

 藤沢さんは読むのが嫌になるくらいきついことをズバズバ書いたりもするけれど、このエントリーは全文引用したいくらい面白いです。
 バーナード・マドフによる史上最大の詐欺事件(被害総額6兆円!)から初めて、鳩山政権が社会主義革命を起こそうとしている、というところに落とし込む物。
 後半を引用してしまうと、

(引用始め)
 郵政国営化、郵便貯金を使って国営ファンド、道路公団国営化、日本航空国営化、高校教育国営化、労働組合員の権利強化、公務員の権利強化、消費税の増税、所得税の増税・・・
気づいてみたら、これだけの社会主義政策が民主党により実行に移されようとしているんだ・・・

そして、こういった巨大国営事業は誰が運営するのだ?
鳩山由紀夫とそのとりまき連中、そして彼らに従順な官僚じゃないか・・・
まさにかつてのヒトラーやレーニンが手にしたような絶対権力を自分達が握るつもりだ。

みんな社会主義思想をあまく見ない方がいい。
何百万人、何千万人という市民を虐殺したドイツのヒトラー、ロシアのレーニンにスターリン、カンボジアのポルポトといった社会主義国家の指導者たちも、最初はみんな市民の支持により生み出されたのだよ。

今の民主党の社会主義政策もやばい方に走り出したらどこまで暴走するかわからない。

なんであんな夕方の4時にしまる郵便局が地方にあると小泉政権によってもたらされた格差が是正されるんだ?
なんで脱官僚の民主党が民間人の首を切って、いきなり大蔵省のOBに郵政の社長を任せるんだ?
なんで無駄をなくすと言っていたのに史上最大の概算要求になっているんだ?
なんで・・・

子供手当とか高速道路無料とかに浮かれてないで、いいかげんみんな目を覚ますんだ。(引用終わり)

天使たちのシーン。

2009-10-26 17:06:14 | 翻訳
「A、お前大丈夫か、顔、死体みたいに変な色になってるけど」

 とM君が言うので隣を見てみると、フィンランドからやって来たAの元々白い肌は蒼白になっていた。MとAのフィンランドコンビはなんとなく僕が持っていた北欧のイメージを簡単に銀河の果てまで吹き飛ばすくらいの弾けっぷりだった。でも、Mは酔って部屋に引き上げて、そしてAは今や物言わず俯いて座っている。

「大丈夫、ちょっとトイレ」

 Aはよろよろと立ち上がると、キッチンの方へ歩いて行き、そしてトイレに辿り着く前に限界を迎えた。壁に向かってピュっと黄色いゲロを吐いて、必死で口を押さえながらしゃがみこんで、床じゃなくてシンクにシンクにと周りの人間が言っていると部屋の持ち主であるBが色々心配そうにトイレットペーパーなんかを持ってくる。

 僕が歌ったのは、そうしてAが自分の部屋に引き上げた後だった。
 Gがギターを持ってきていたので、GとSと僕が交代で漫然とギターを弾いた。特に誰に聞かすともなく、おしゃべりの中漫然と。でもアルペジオで小沢健二の天使達のシーンを弾いたとき、急にAが「それは何だ!」と反応した。

 一通りの会話や何かが終わると、ギターを漫然とではなく、弾けるなら何か弾いて歌ってという雰囲気になって、みんなでディランのKnockin' on Heaven's Doorを歌ったりして、それから僕は天使達のシーンを覚えているだけ歌った。Sが特に気に入ってくれて、平仮名で書き下した歌詞とコードを欲しがったので、ついでに英訳も付けてあげることにしました。いつか違う国で「日本で覚えた歌だ」と言って歌ってくれるに違いない。


"The Scene of the Angels" Kenji Ozawa
(translated by Ryota Yokoiwa)

people walking on the seashore make traces on the sand, to far, long.
Before the rain that sweeps away this ending summer, we have a little time, just a too short moment.

In the sky with pearl white clouds, one balloon somebody released is flying away.
I'm standing in the station and some people in the crowd look up the sky, to where that balloon is going?

If everybody always loves flowers and sings songs, starts to talk, not just make a reply.
Then I can feel that thousands of seasons past smoothly are really lovely.

Lovely birth and growing circles
The rules connecting us everybody are going on very slowly but never stop.

In the evening shower just starting with loud sound, children are making their promise.

Dying grasses have golden spikes, they are waiting to get blown in winds.
Steely Dan's song comes out from midnight car radio, he is singing about a city far from here.

There is open sky between leafless trees, I can see so many stars near and far.
As my protection for her, I secretly pray for her who keep writing undirected letters.

Lovely birth and growing circles
The rules connecting us everybody are going on very slowly but never stop.

Start a fire for the cold night.
Put a bright light to rake dark ways.

I pile up small thoughts everyday and write down true sentences.
I see a branch flapping snow away, looks like a radiation of life-energy.

The sun is coming up. We are chatting merrily side-by-side.
She laugh with high-pitched cackle. Her neckerchief is brilliant red color.

Lovely birth and growing circles
You puckishly touch it with your big hand.
The circles keep rotating through long nights.
The rules connecting us everybody are going on very slowly but never stop.

Let's spend a winter without tears.
Keep our bodys warm and open the door of truth. Come on!

The moon is fading into the sky getting first light.
The rules connecting us everybody ever, forever.

Give me a strength to believe in God, not to give up our life.
I'm straining my ears on musics playing in a bustling place.
Straining my ears. Straining my ears.






革命家になろう!

2009-10-25 12:53:28 | 革命家になろう!
 革命家になるには、ゲリラ戦術も手榴弾もいらない。もちろんゲバ棒も火炎瓶も。マルクスのことだって知らなくていい。
 ただ必要なのは考える力だけだ。

 簡単な掛け算から始めてみよう。2をどんどんと掛けていくだけの単純な計算。

 1x2=2
 2x2=4
 4x2=8
 8x2=16
 16x2=32
 32x2=64
 64x2=128
 128x2=256
 256x2=512
 512x2=1024
 1024x2=2048
 2048x2=4096
 4096x2=8192
 8192x2=16384
 16384x2=32768
 32768x2=65536
 65536x2=131072
 131072x2=262144
 262144x2=524288
 524288x2=1048576
 1048576x2=2097152
 2097152x2=4194304
 4194304x2=8388608
 8388608x2=16777216
 16777216x2=33554432
 33554432x2=67108864
 67108864x2=134217728
 134217728x2=268435456 

 わずか28ステップで2億7千万になりました。
 つまり最も単純かつ都合の良いモデルで考えたとき、毎日一人の人が身近な誰か一人を説得して革命家にすると一人で革命を始めた場合でも28日、一月足らずで日本の全国民に革命家の思想を届けることができます。これはベストな場合だから、毎日は無理だとか、身近にいる人が限られるとか、革命思想が気に食わないとか、そういう実際的な問題をヘビーに考慮して、1年間で日本国民の半数というのはどうでしょうか。
 ここでいう革命思想というのは「理不尽なことやおかしなことにはノー」と言う、というそれだけのことです。「嫌だけど周りの人が従っているから」している
ことをちょっとやめてみるのはどうかというそれだけのことです。毎日1人の賛同者を増やすことで、1年後確実にもっと素敵な国ができると思う。武器を使わずに。

 それに、実際のところ全国民、あるいは国民の半数が革命家にならなくても10人くらいが集まるだけでも同じ職場の中なら随分な影響力を持つことができるし、30人くらいでも教室で、100人くらいでも学年で影響力を持つことができる。ある日突然100人の生徒が「明日から制服着ません」と言い出して実行したら学校はどうするだろう。そういうことが日本のあちこちで起こったら、「スーツ着ません」「サービス残業しません」「風邪だから休みます」「旅行に行きたいので有給取ります」「この書類無駄だと思うのでこれから作りません」「このやり方はお客を騙していると思うのでやめます」って社員の半分が言い出したら、きっと面白いことになると思うのです。

 世界は僕達みんなのものです。この世界で生きているのは僕達で、僕達はこの世界を構成しています。だから国会議員にならなくても、武器を持たなくても、僕達が変わることで簡単に国なんて変えられる。国っていうのは僕達のことで、二つの言葉はイコールだから。とりあえず訳の分からない嫌なことをやめるために、今日から革命家になろう!

フォーマルな服装。

2009-10-24 17:41:12 | Weblog
 僕の妹は2,3年前に結婚している。結婚式に、僕は少し崩した格好で出て、両親親族から随分な顰蹙を買った。式の前に僕の格好を見た母親は卒倒しそうだった。彼女は最後の希望を込めて「今から式に出る服に着替えるの?」と聞いてきた。答えはもちろんノーだ。すると、なんというか「緊急事態発生」みたいな雰囲気が控え室に漂って、僕は心底驚いた。念の為に書いておくと、僕は別にTシャツにジーンズみたいな格好でホテルへ行ったわけではない。ちゃんと真っ黒なスーツを着ていた。それがちょっとタイトに仕立て直したベルベットだっただけだ。本当は背中の左下端に真っ赤なハートを目立たない感じで付ける筈だったのが、前日の夜、2次会で流す映像を作るので徹夜になり時間切れになってできなかった。それと革靴は嫌だったので真新しい黒のスリップオンを裸足に履いていた。写真を見せた友人はみんな「これで怒られたのが信じられない」と言うし、僕も信じられない。比較的自由人だと思っていた父親にまで「お前が主人公のつもりか、もっと地味にして来い、これは駄目だ」と言われた。ちなみに妹夫妻は最初から知っていて全く気にしていない。

 彼らの言い分はこうだ。
「私自身は別に気にしないけれど、中には気にする人もいるから、その人に失礼だから」

 本当にそうだろうか。そういうことを気にする人が本当にいるのであれば、僕はきちんと話をしたいと思うし、それで分かり合えないなら悪いけれどその人のことはそれ以上気に掛けていられない。
 
 1年後くらいに、今度は従姉妹の結婚式があった。両親は「まさかまたあの格好で結婚式に出るつもりか。そんなことは許さない。お金なら出すからちゃんとしたスーツを買え、革靴も買え」と言い張り、僕はそれを飲んだ。僕が自分で買った駄目だしされた方のスーツは、買った後にテーラーで手も入れてもらっていて、さらに言えばそのときテーラーのおばちゃんに「これいいねー、結婚式にぴったり」とまで言ってもらった服だった。なんだか意味が分からなくて悔しかった。うちの親はこんな人ではなかった筈なのにどうしてしまったんだろうと思った。

 従姉妹の式に新しい無難なスーツで行くと、おじさんが「自分の妹のときは変わった格好してきたけれど、今度はきちんとした格好で来たな」と言った。もう誰も訝しい顔はしないみたいだった。僕以外のみんなは満足で、告白するととても楽だった。こういう格好をしていれば誰にも文句を言われたり叩かれたりしないで受け入れてもらえるのだ、と思った。こういう安心感のもと、世界は破滅へ向かうのでしょうね。
 

 

 

ソフトバンク。

2009-10-24 16:52:35 | Weblog
 ソフトバンクの孫さんは16歳のときにアメリカへ留学している。「竜馬が行く」を読んだ影響だとかで日本の高校をやめて向こうの高校へ行き、大学もなんとかというアメリカの大学に入って、2年後にカリフォルニア大学に編入している。実に身軽だ。高校を途中でやめてアメリカの高校に行ってもいいかもしれない、と思う辺りが凡庸ではない。僕は高校生の頃一時期「大学はMITに行きたい」ということを言っていて担任に呆れられたけれど、今から考えてみれば自分で色々調べてそうすれば良かったのだと思う。思っても何もしないところが凡庸だったなと思う。もちろん人間関係とか色々な理由もあったわけだけど。

 20歳の時、孫さんはそろそろ仕送りに頼るのは悪いと思う。普通ならアルバイトで生活費を稼ぐところだけど、彼は「アメリカに来たのは勉強するためだから、起きている時間の99パーセントは勉強に使う」という決意のもと、1日5分で月に100万円稼ぐ方法を考える。それは発明で稼ぐというもので、毎日5分だけ時計のベルをセットして1日1個の発明を考える、という生活を1年続けたらしい。1年後200個くらいの発明がノートに記され、そのうち2個、翻訳とゲームに関わるものを選んで売り込みを掛け3億円を稼いだということだ。

 こういう話を聞くと、視野の広さということを再認識する。それとかやろうと思ったことをちゃんと続けることとか。

 僕達は日本人だし、日本にずっと住んでいたいと思う人もたくさん居るわけだけど、国の中に閉じこもった生き方というのはいい加減終わりになってもいいのだろうなと思う。僕は実際にとてもドメスティックな生き方をしてきて、反省も随分たくさんある。
 特に進学や労働ということに関して、日本は情報がとても閉じているのだろうなとも思う。日本語というバリアがあるためか、それとも地政学的な問題か、とりあえず国内で流れる情報の大半は国内のことだけに特化していて、まるでその外なんてないみたいになっている。普通、先進国の企業に履歴書を出すときには年齢も性別も書かないし顔写真も貼らないってみんな知っているんだろうか。年齢や性別や外見が判断の要素に入るのは差別以外の何ものでもないということが、履歴書用にきれいな写真を撮るサービスがあるくらいのこの国で理解されているとは思えない。労働市場を見ている限り、日本も北朝鮮みたいに情報統制のある国と変わらないなと思う。

 

The Story of Kibune ; part3.

2009-10-23 19:44:33 | 翻訳
Sadahira became so happy, "Please please let me see her".
He ordered the servitor to go back to Kyoto. Then he went to Kurama immediately. In Kyoto, Sadahira's parents got mad on the servitor. "Why the hell did you come back by yourself, alone, without Sadahira. Where is he now?" The parent's put a lot of servants to search Sadahira. But it didn't work. Nobody could find him.

When they are searching Sadahisa in Nara, Sadahira was in Kurama-temple.

"Tamonten, please fulfill my hope, or I will fire this temple and the statue of Buddha, getting a suicide, becoming to something very evil. Now you should show me you are making my hope come true"

He has kept praying for 37days. The 37th night, just before the break of day, Bishyamon came out, like a phantom, very fuzzy.

"What are you praying fervently for?"

Sadahira tightened up and said "I fell in love with a woman who is painted on a beautiful fan. I really love her and wanna see her. At Hase-temple in Nara, I saw Kannon telling me that I should go to Kurama and ask you".

"Hahaha", Bisyamon burst out laughing,"You love a woman in the picture haha. Sorry. If you loved a woman in real world, I could make your hope come true. Thought I tell you the story. Very awful story".

Bisyamon went on.

"In the west part from here, there is a place called Kairasyou. There are Oni(Japanese devil or goblin) in the place. One of Oni is 50 meter height, has 8 faces, 808 hones 16 eyes. The teeth are like swords. The breath is deep fog can cover the area within 400km radius. His body is red. When he eat something, 8 mouths get fight each other to get the food. The sound of the fight, sounds like hard beaten 30 drums, ring all around the world. The woman is the daughter of it. Do you still say you love her?"

"Yes, even if she is the daughter of it. I still love her. I'm just loving her always"

"I see", Bisyamon opened a curtain just next of him.

Sadahira got shocked. He was so surprised. There was her, the woman in the paint. She was much more beautiful than she was in the painting. In the painting, she was 32 sou ("32 sou" means perfect beauty of woman ). In the real, she was 80 sou.

Sadahira told her "where are you from?"
The woman answerd "from Oni world"

ブリーチ。

2009-10-22 13:34:51 | Weblog
 もう10年くらい昔の話だけど、僕はいい加減白になってしまうくらいに髪の毛をブリーチしていて、その髪のままでアルバイトの面接に行ったことがある。そこは比較的きちんとした身形が要求される場所だったので、行く前から髪の毛が黒くないと雇ってはもらえないだろうと思っていた。

「髪の毛、ブリーチするの流行ってるのは分かるんだけど、でもお客さんで嫌がる人もやっぱりいるから、それ黒く染めてきてくれるかな?」

 面接の最中、店長みたいな人は案の定そう言った。彼は僕が履歴書に書いた志望動機などに大層な興味を示してくれて、ブリーチ以外の点では僕のことを気に入ってくれたみたいだった。
 僕がそれはできないと断り、彼がそれじゃ悪いけれど採用はできない、と受けて、アルバイト採用の為の面接はそれで終わったのだけど、その後も良ければ少し話を聞きたいということでしばらく僕達は話をしていた。

 そのとき、僕は「そういった髪の色だとか服装を縛り付けるような職場で働くつもりは一生ない」と言った。僕の個人的なポリシーと言うだけではなく、できれば自分がそういうスタンスを貫くことで変化の一因になれればいいと思っていた。
 結局、高い自給に目が眩んで、僕はその後3回もスーツに袖を通すアルバイトをした。2回は短い期間だったけれど、最後の1回は1年以上続いて、嫌で嫌でたまらなかった。自己嫌悪というのはまさにこのことだと思った。だからその後渡りに船とばかり飛び込んできた大学の非常勤講師の仕事も何故かスーツ着用という話だったので受けなかった(後にスーツなんて着なくていいと判明、、、)。

 こういうのは些細なことじゃない。とても大事なことだ。10000年後の進歩した人類が「働くときにはスーツを着てください、そうじゃないと失礼だし」「学校に来るときは制服を着なさい」とか言ってるわけない。昔は自分でもこれらがどういう意味を持つのか分からなかった。なんか嫌だけど仕方ないと思っていた。でもなんか嫌だけど仕方ないことなんてこの世界に何一つ無い。もしも中学からやり直すなら絶対に制服なんて着ない。文化なんて便利すぎる無意味な言葉で片付けないで欲しい。スーツを着た息子の姿を見て子供が大人になったような気がするなんて民度が低すぎる。僕達は自由だ。




job is shit.

2009-10-21 15:21:25 | Weblog
 時々読んでいるブログの紹介です。
 サブタイトルが

「サビ残、休日出勤、有給なし、理不尽の数々、、、
 仕事なんてクソだろ?
 奴隷(リーマン)やめて日本を出よう。奴隷(リーマン)やめてネオニートになろう」

 というものなので、ブログの趣旨は大体分かると思います。
 仕事より家族が大事って普通のことでしょ、病気のとき仕事休めるって普通のことでしょ、みたいな話です。
 口調がとても強いので腹を立てる人もいるだろうけれど、僕は大体こういった意見に賛同するし、本当は多くの人がこういう風に思っているのではないかと思う。

 ニートの海外就職日記