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思惟石

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『酒を主食とする人々』高野秀行 クレイジージャーニーの裏紀行文

2025-02-25 12:19:43 | 日記
『酒を主食とする人々』高野秀行

「誰も行かないところへ行き、
誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」
ノンフィクション作家、
高野秀行さんの新刊が出たよ〜。
読んだよ〜。

というわけで、最近の私は
立派な高野ファンである。
そろそろ講演会にも行きそう。

この新刊はTBS「クレイジージャーニー」の裏本。
放映されていない部分も含めた、
紀行の一部始終を描いた一冊です。
空港でビザがないので出国できないところから始まります。
大丈夫かTBS。

取材先はエチオピア南部の少数民族が暮らす地域。
ターゲットは「三食お酒。それ以外は摂らない」と言われている
「デラシャ」民族。

このデラシャという民族、
メディアにほとんど出ていない一方で、
人類学者による研究書は出ている、という
(砂野唯『酒を食べる エチオピア・デラシャを事例として』)
高野さん的には“がんばって行っても「後追い」になってしまう”
ネタだったそうで。

なるほど、ある種、テレビ番組に提供するネタとして
ぴったりかもしらん。

というわけで行ったエチオピア南部。
番組のタイトルが以下。

#229「酒が主食!?世界遺産に住む民族コンソ取材旅
辺境作家・高野秀行7年ぶりに登場!」

コンソ取材旅?
デラシャじゃないねえ…。

これ、どういうことかと言うと、
酒飲み民族は「コンソ」と「デラシャ」とふたつあって。
後者の村の方が「オンリー酒!」なのですが
前者の村の方が「映える」のである。

なので研究者はデラシャに注力し、
テレビ編集者はコンソを放映するのである。
何かの真理が垣間見えるな。

高野さんは両方のエリアに行って
さすがの腕前で取材し、
なんならコーディネーターが設定した
観光地&劇団化しているホームステイ先を飛び出し、
自分好みの野生ホームステイ先をゲットしています。
自由!

取材準備の2ヶ月という短期間で
エチオピアの公用語アムハラ語を勉強し、
エチオピア国内での通訳(デラシャ語のような
少数民族の言語やら外国人向けの英語やら。
語学センスがないとできない仕事だよね)の
助けを借りながら、
コンソのお酒「チャガ」と、
デラシャのお酒「パルショータ」の作り方を
だいぶ詳細に調べているのは流石です。
滞在数日なのに凄いよな。

その合間にカート噛んだり
虫さされに苦しんだり
腹痛と下痢に苦しんだりしています。
流石〜。
(出国前ですが、エチオピアのソウルフード
インジェラのアレルギーも発覚している)

相変わらずのキレッキレな一冊である。
私も辺境に行きたく…は、ならない。
高野さんの新刊に想いを馳せるに留まる人生に、
満足しております。