思惟石

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『ジェルミナール』 カトリーヌに謝れ

2023-10-27 14:59:32 | 日記
『ジェルミナール』
エミール・ゾラ
訳:安士正夫(岩波文庫1954)
訳:河内清(中公文庫1964)

なんでか分からないんですが、
ちょっと前から
「ゾラを一冊くらいは読んでおこう」
と思ったんですよ。

で、評判が良さそうな『ジェルミナール』岩波文庫版(全3冊)を
図書館から借りてみたのです。

ゴリゴリの旧仮名旧字〜。

読めなくはないのだけれど
脳みその一部が漢字変換に割かれるので、ちょっと疲れます。
うーん、『紺青のわかれ』みたいな旧仮名を面白がる作品じゃないし。
ギブで!

『ジェルミナール』中公文庫版(上下巻)を借りてきました。
我ながらフットワークいいね!

エミール・ゾラは、19世紀フランスの
自然主義文学、リアリズム文学の作家。
全20作から成るルーゴン・マッカール叢書で有名。

ちなみに叢書の副題は
「第二帝政下における一家族の自然的・社会的歴史」。
フランス第二帝政下の社会の全ての階層、全てのリアルを
描こうとしているらしい。
ルーゴン家とマッカール家に分かれ、
国務大臣からパリの洗濯女まで幅広い身分に分岐する
壮大な物語。

壮大だね!
壮大すぎて、この中の一冊を読んだ程度では
ゾラは語れないし、大して理解できません。
読む前に教えてくれ!!

もちろんバルザックの系譜の人である。
先に言ってくれ!!

とはいえ読み切ったよ。
私えらい。

『ジェルミナール』は
『ルーゴン・マッカール叢書』の第13巻に当たる小説。
1885年刊。
主人公のエティエンヌ・ランティエは
マッカール家の系譜に連なる流れ労働者。
彼がフランスの炭鉱町モンスーに流れ着いたところから
物語が始まります。

にしても、まあ、暗いし貧しいし悲しいんですけど。
炭鉱暮らしのリアルよ…!!
ゾラの作品は、当時の労働者階級(下層階級)の暮らしが
リアルすぎて、ブルジョア階級に衝撃を与えたらしいですね。

特にマユ一家の娘カトリーヌの扱い、ひどくないか。
男女不平等の時代なのはわかるけどさあ。
その環境下で奔放かつ無知なムーケットなんかは
とても魅力的だけれど。
カトリーヌはしんどい…。

タイトルのジェルミナールは「芽吹き月」(革命歴で第7月、
現在だと春先)、労働者階級の自我と革命の芽が撒かれた時期
を象徴するそうです。

確かにエティエンヌが来る前のモンスーの貧しさは、
シンプルに厳しかった。
でもエティエンヌが来て革命の芽を植えた後の、
マユ一家(特におかみさん)を見てしまうと、
すごいもやもやするんですけど。

最後にパリに向かうエティエンヌの描写
「希望にひたり、エチエンヌは新しい季節の中であたりに目をうばわれ、歩みをゆるめた。自分のことを考え、炭鉱の底でのきびしい経験で成熟し、強くなったのを感じた。おれの教育はできあがった、(中略)傾聴される指導者になるのだ。という喜びで、彼はさまざまな演説を思いつき、その文句をあれこれと考えた」
じゃねえよ。
カトリーヌに謝れよ一言でいいからさあ!!

というのが感想なので、叢書を一通り読まないと
ゾラの意味や高尚な感想などは出ないのかもしれません。
読んだところで、やっぱり「カトリーヌに謝れ!」しか
湧いてこないのかもしれません。

ちなみになんだかんだで岩波版と中公版を行き来して読んだので
翻訳の違いなども楽しめました。
中公文庫のエティエンヌの方が、口が悪くて教育が低めなイメージ。
なんでだろう。
あと、名前の表記もちょっと違って。
岩波だと「エティエンヌ」なのが中公だと「エチエンヌ」になる。
名前は岩波の方が好み(リディよりリヂが良い)ですね。
コメント
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