思惟石

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『鉄道旅行の歴史: 19世紀における空間と時間の工業化』

2023-10-04 16:13:24 | 日記
『鉄道旅行の歴史: 19世紀における空間と時間の工業化』
ヴォルフガング・シヴェルブシュ
訳:加藤二郎

路地裏の大英帝国』を読んだ際。
産業革命のおかげで鉄道が発達した結果、
労働者階級の近郊旅行がブームになった
的な話がおもしろかったんです。
鉄道からクック社のツアー旅行ができたり、
レジャーの概念が変わったという。

そういえば内田百閒も乗り鉄でしたけど、
鉄道初期ってどんな感じだったんだろう?
と思って、『鉄道旅行の歴史』を読んでみた。

この本、イギリスの産業革命に始まる鉄道の歴史が、
いろんな角度から描かれていておもしろいです。

乗合馬車から鉄道へのシフトは、
一般民衆の気持ち的な戸惑いが多数あったという。
その角度で考えたことなかった〜。

人々はなにかと乗合馬車の旅を懐かしんだ
(のんびり風景を楽しむのが風流)
というのは意外でした。
もっと新しいもの万歳な時期かと思ったよ。

また、乗合馬車は密度の高さから
おしゃべりが始まりやすく、
旅が終わる頃には同行者の身元が把握できている。
対して、コンパートメント式鉄道では
会話する機会がない。
というのも郷愁を誘う要因だったそうです。

結果、電車内で読書の習慣ができた、
鉄道初期から駅には雑誌や飲み物を扱う売店
(キオスクのルーツ)ができていた、等々の
派生情報もおもしろい。
コンパートメント内での殺人事件も
センセーショナルな話題になったとか。
(そういえば欧米の古典ミステリって
 何かと電車内で殺人起きるよなあ)

初期の機関車はアップダウンにも弱いので
できるだけレールを平坦に敷く必要があるそうです。
イギリスは土地が少なく労働力があるので
鉄道が極力一直線(トンネルも掘るし堤もつくる)なのに対し、
アメリカは労働力は少なく土地は二束三文ということで
平地を選んで優雅に蛇行しまくっている
というのもおもしろい比較。

風景のパノラマ化とか、
デパートの登場による商品概念の変化とか、
そこらへんの話しも良かった。
良い勉強になる一冊。
コメント
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