思惟石

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熊谷達也『ウエンカムイの爪』サクッと読めるデビュー作

2019-01-18 12:14:06 | 日記
『相克の森』『邂逅の森』『氷結の森』の
“森シリーズ”(もしくは“マタギ三部作”)で知られる
熊谷達也のデビュー作です。

第10回小説すばる新人賞受賞作。
マタギ3部作の1作目である『相剋の森』に繋がる前段の話でもあるらしい。
って、私が唯一読んでいない作品じゃないですか。
読む順番を間違えずにすんで良かった…。

『ウエンカムイの爪』は、一日で読めるくらいのページ数。
舞台も現代なので、なんというか、中身もページ数もぶ厚い
マタギシリーズになじんだ身としては意外な感じでした。

とはいえデビュー作から、熊谷達也は熊谷達也であるともいえる小説です。

アイヌの言葉でいい熊は「キムンカムイ(山の神)」
悪い熊は「ウエンカムイ(悪神)」と言うそうです。

冒頭に主人公の吉村が出会ったヒグマはウエンカムイではないけれど、
彼(人間)の視点から描くヒグマの恐ろしさはリアリティがあって
ドキドキしました。

ついでに言うと第二章のヒグマ被害に遭う東京の能天気な学生の描写は
なかなかリアリティがなくてドキドキしましたが、
熊谷氏の描くべきはそういうとこじゃないので、良し!
解説の阿刀田高も述べていましたが、審査時もそういう話しはあったようです。

熊谷作品の中では「是非に!」と言う一冊ではないですが、
この作家のファンとして「これが熊谷作品の始まりか」と思うと
しみじみ読めます。
コメント
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