思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2010年8月 ③

2019-03-27 11:58:57 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年8月 ③>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『スカイ・クロラ』森博嗣
ストーリーにはもはや興味無いのかしら。
世界観がつくりたかっただけでは。映画用?

(スカイ・クロラシリーズはこの一作だけで撃沈しました。
 6作くらい刊行されているそうです。
 森博嗣と言えば高校生の頃に『すべてがFになる』を読んで
 理系大学っておもしろそうだなあと思ったのが良い思い出です。
 その後、ゴリゴリの理系に進学して楽しく暮らしたもので。
 とはいえ、犀川シリーズはなんとか付いていけたけど、
 以降の作品はちょっとな…という感じで疎遠になってしまった。
 思春期の頃に良い示唆をくれた恩人、みたいな気分はある)


『バスジャック』三崎亜記
短編集。ネタは悪くないけど、人物が平凡だなあ。
というかネタも平凡に見えてくる。
この人、大丈夫?

(9年前の私、酷評ですね…。余計なお世話である。
 まあ、『となり町戦争』も、どうかなあと思っていたし、
 これ以降、手に取ってないけど)


『写楽殺人事件』高橋 克彦
おもしろかった。秋田蘭画の話しとか。
かなり昔にも読んだけど、今回の方が楽しめた。
昔よりは歴史に興味持つようになったからか。

(歴史がおもしろいと思えるようになって良かったね!
 と、他人事のように祝福を送ります。
 写楽は活動期間がたった一年未満にも関わらず
 140枚以上の作品を残して忽然と消えた人で、
 その後はあまり注目されておらず、明治後期になってから
 再評価されたという歴史的空白期もあるので
 ミステリアスな魅力満載な存在なのだとか。
 こういう美術史の研究職って大変そうだし楽しそうだよなあと、
 門外漢ながら興味津々である。
 ちなみにこの作品にも田沼意次や平賀源内が出てきます。
 色んな作家さんによる同時代解釈の違いってのも、
 読んでいて楽しいですよね)


『草の陰刻』松本清張
(メモなし。
 地方の地検庁舎のボヤから始まる長編ミステリ。
 主人公は若手の検事で、地味~に、地道~に、捜査を進めます。
 元々は新聞連載だったそうなので、ちょっと細切れになったり
 淡い恋やら横道に逸れたりしつつの、700ページ強。
 というわけで、時間に余裕があるときに読むのが良いと思います。
 清張作品コンプリートという熱い目標が無いなら、
 読まなくても良いと思います)


『激しく、速やかな死』佐藤亜紀
(メモなし。
 1998年から2009年にかけて書かれた7つの短編集。
 どれもフランス革命前後の人物や出来事がモチーフのようです。
 サドの独白という体裁の『弁明』から始まり、メッテルニヒ夫人の書簡や
 タレイランによる報告書、などなど、表現モチーフは様々。
 タレイラン…、世界史で習った気もするけど誰だっけ…という私に
 作中での解説は一切無し、安定の読書の知識レベル置き去り感です。
 そんな私でも私なりに楽しめる佐藤作品が私は好きです。
 勉強しなくちゃ、という反省は常にしています。反省だけ!
 ところで『激しく、速やかな死』の単行本表紙画を描いた方は、
 『醜聞の作法』と同人物なんですね。
 どちらも中世~近代ヨーロッパ絵画っぽい雰囲気があるので
 現代作家のオリジナルだと知って密かにビックリしてました)


『夢を与える』綿矢りさ
前2作と比べるとイマイチ。
待望の3作目だからって、そっとしておいてあげればよかったのに。

(3年半ぶりにようやく出た長編ということもあって、
 お店や帯の煽りがすごく賑やかだっただった覚えがあります)
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【読書メモ】2010年8月 ②

2019-03-26 16:43:43 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年8月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『幸福な食卓』瀬尾まいこ
平安寿子の「グッドバックららばい」的な変な家族の物語かと思ったら、
すごくおもしろかった!

(私が好きな現代作家ベスト5に入る瀬尾さんです。
 『図書館の神様』に続いてこの『幸福な食卓』を読み、
 めでたくこの人大好き認定となりました。
 おめでとう私!好きな作家に出会えてよかったね!!)


『カラスの親指』道尾秀介
伊坂幸太郎っぽい。

(くたびれた中年詐欺師のオッサンコンビと、ヒロインと、若者の、
 エンタメミステリです。
 プロットがそこそこしっかりしたライトな小説なので、
 お時間がある人は読むと楽しめるんじゃないかと思います)


『白夜行』東野圭吾
主人公ふたりの内面を描かないのが怖い。
大学の同級生を襲う心理とか、女の方が怖いよなあ。
登場人物の造形が人間臭い。すごい。
この作家、ガリレオみたいな愛すべき主人公が特殊なのかな。

(まあ、ガリレオも人間味あふれてるわけではないですけどね…。
 ちなみに『幻夜』は『白夜行』の続編と言われているとか、
 女主人公が同一人物ではないかとか言われてますが、
 作者が何も明言しないので謎のまま、という
 うまいことやるなあ、という位置づけになっています。
 私は同一人物じゃないかなと思いますが、
 だからなんだというくらい距離感のある話しでもあります。
 話しは別物だけど、トンマナは似ている。出来は『白夜行』の方が良い。
 というわけでどちらかだけ読むなら、『白夜行』かな)
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【読書メモ】2010年8月 ①

2019-03-22 16:54:44 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年8月 ①>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『マークスの山』高村薫
この人の作品の中では一番読みやすくておもしろかった。
直木賞受賞も納得。
しかし長い。登場人物一覧が欲しかったよ…。
もしくは検索機能。

(『レディ・ジョーカー』を先に読んでしまったけど、
 間を開けずに合田シリーズ第一作を読みました。えらいぞ私。
 ちなみに私は文庫版で読みましたが、文庫化の際に全面改稿されているようです。
 特に犯人の造形?心理?が修正されているとか。
 私は、犯人の心理がちょっとピンと来なかったというか、
 そういうものかな…と適当に納得した記憶があるのですが
 ハードカバー版を読みなおした方がいいのかもしれません。
 どうでもいいけど、合田警部補がたまに関西弁でしゃべるのかわいいな。
 あと警察・検察メンバー全員に「あだ名」があるの、
 ちょっと古い感じがして、個人的に好きです。
 第109回直木賞(1993)、「このミス」国内編第1位(1994))


『ラットマン』道尾秀介
軽く読める文体と内容。
なぜかタイトルがピンとこなくて、読みしぶっていた。
この人、タイトルと装丁で損してるんじゃないか。

(アマチュアロックバンドのギタリストが主人公で、
 現在の事件と、過去の事件とが複雑に絡んだり、ミスリードしたり、
 なんか色々展開したり、というエンタメ小説です。
 どんでん返し祭りですが、さくさくっと読め進められるので
 軽い気もちで手に取るといいんじゃないかと思います)


『イニシエーション・ラブ』乾くるみ
読後は楽しめた。読み直しつつ、構成のトリックを紐解くので。
しかしまあ、内容がひどい。安っぽい恋愛小説。読んでる間は苦痛そのもの。
それが作者の狙いらしいのだけど。

(これは叙述系の名作として何かと話題に出ますよね…。
 というわけで、「最後にひっくり返るんだなあ」という
 心の準備完了状態で読みました。
 それが正しい読書姿勢なのかは謎ですが、それくらいの心構えが無いと、
 私は途中で放り出すタイプの激甘恋愛小説です。
 ミステリとして有名だから読了するか…という気合いだけで読了しました)


『告白』湊かなえ
先生の人物造型がすごい。
こんな突き抜けた人はなかなかいないだろうと思う。
対照的に、他の登場人物は全員、どこにでもいそうな性格。
で、その中にある沼の掘り下げ方が深い。怖い。

(湊かなえのデビュー作にして出世作ですね。当時、すごい話題になったよなあ…。
 この人の作品、全部は読んでないですが、いわゆるイヤミス作家ですよね。
 私は読書くらい楽しい気分になりたい派である。
 週刊文春ミステリーベスト10 第1位(2008)、2009年本屋大賞受賞)
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【読書メモ】2010年7月

2019-02-21 12:41:28 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年7月>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『半落ち』横山秀夫
妻殺しの容疑を認めつつ、失踪した2日間に関して黙秘する男の話し。
てっきりSF的な話しかと。
この作者にしては珍しく、第一章の主人公がかっこいい大人だった。

(横山秀夫を手に取ってなぜSFと思ったのだろうか。
 当時の私を尋問したいところです。
 それはさておき、当時の話題作ですよね。
 映画やドラマは観てないですが、直木賞での選考委員の
 否定的な意見には、「余計なお世話だよっ!」と思いました。
 ちなみにですが2002年「このミス」第1位
 &週刊文春「ミステリーベスト10」第1位です。
 私は読んで大変おもしろいと思いました。
 直木賞選考委員は、ホント、大魚を取り逃すのが好きですね)


『光の帝国』恩田陸
メモなし。

(「常野物語(とこのものがたり)」「常野シリーズ」などと呼ばれている
 一連の作品の、第一作です。
 10篇の短編集。特殊な能力を持つ「常野」と呼ばれる人々の物語。
 シリーズ続編は『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』だそうです。
 ううむ、記憶に残ってない…)


『レディ・ジョーカー』高村薫
「マークスの山」(未読)の続編。
というわけで、加納検事の設定が唐突に見えて気が散った。
とはいえ、闇の部分が難しくて全部を見渡せなかったけど、
おもしろかったです。

(大手ビール会社社長を営利誘拐する自称「レディ・ジョーカー」一味の物語。
 高村薫による警部補・合田雄一郎のシリーズ第三作。
 毎度、読書の順番を間違える私ですが、この時点で未読の「マークスの山」
 「照柿」に続く作品です。
 加納検事は、元妻の双子の兄で、合田警部の同級生。
 脅迫されるのは大手企業の「ブランド」だったり、
 総会屋や組織の体面や個人の情など、複雑な力関係が入り組んでいて
 文庫3冊のボリュームですが、おもしろいです。
 1999年「このミス」第1位)


『残虐記』桐野夏生
先輩が「作家本人の、編集者とのダブル不倫をネタにした小説」
と言っていたので、冒頭を読んでこの本かと思った。違いました。
『IN』のことらしい。
これはこれで、おもしろかった。
結末が予想通りではあったけど、どんでん返しを期待する作品でもないし。
被害者の心象風景がリアルですごいと思った。

(失踪した女性作家が残した原稿には、少女時代に被害にあった
 監禁事件の内容が書かれていて…って、重すぎるあらすじである。
 桐野夏生だし、もちろん、読後感もめちゃくちゃ重い。
 ぞわっとする。なんか肌が痒い。べとっとする汗をかく。怖い。
 それでも読了してしまう感じが、この人の真の怖さだと思う)
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【読書メモ】2010年6月 ③

2019-02-05 12:32:51 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年6月 ③>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『彼岸先生』 島田雅彦
『退廃姉妹』の作者だな~と思って読んでみたけど、
なんだか作風が違うので戸惑った。
初期の作品で、夏目漱石の『こころ』をモチーフにしているとのこと。
「ぼく」の一人称の間は良かったけど、だんだん鬱陶しくなってきた。

(『退廃姉妹』は第17回伊藤整文学賞(2006)を受賞。
 戦後の東京に生きる姉妹の物語。
 メモにもありますが、『彼岸先生』の方が初期の作品で、
 ついでに第20回泉鏡花文学賞 (1992)受賞作。
 主人公「ぼく」が多摩川の向こう側に住む「彼岸先生」を観察する前半と、
 先生から託された過去日記の後半パート。
 雑誌『海燕』に二年に渡って連載されていたそうで、ページ数もなかなか。
 島田雅彦作品は他に『忘れられた帝国』も読んでいました。
 昭和30年-50年にかけての郊外の風景が「ぼく」の一人称で語られています。
 こちらも新聞連載だった小説で、細かい章立てが読みやすかったんですが、
 『彼岸先生』は後半、私が力尽きました。飽きた)


『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫
なぜか『ホワイトアウト』と混同していて、避けていました。
それは真保裕一だ。『奇跡の人』(全くおもしろいとは思わなかった)だ。
こちらは『震度0』(めちゃくちゃおもしろいと思った)である。
ということに気付いて焦って読んだ。
すごくよかった。
作者は群馬の上毛新聞で記者をやっていた人らしい。
舞台は日航機墜落事故の現場に近い群馬県の地方新聞社(前橋?)。
中年男性の嫉妬とか苦悩とか打算とかがうまい。
良い歳した男が、こんなに女々しいもんなんだなという発見が、
イラッとするよりスッキリする。

(『震度0』を読み終えた後の、“すごいものを読んだ感”は痺れました。
 しかもタイトルが秀逸。
 当時はまだ会社に入って数年の若手だったので、
 良い歳したオッサンの野心や懊悩の描写にビックリしました。
 ぜんぜん40歳になっても「不惑」じゃないじゃん!と。
 今ではすっかりオッサン側である)


『狼の震える夜』 ウィリアム・K・クルーガー
最後の犯人が出てくるところが、古典的ではなかろうか。

(「コーク・オコナー」シリーズと呼ばれるハードボイルド小説の
 第2作目。疾走した女性歌手を巡るミステリー。
 一作ごとに、主人公であるオコナーの家族の物語も絡むらしいので、
 シリーズ順に読んだ方が良さそう。
 と言いつつ一作目も、これ以降も読んでいないけど)
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