語る、シェフ

小さなレストランのオーナーが、日々の出来事を語ります。

   冒険3

2008-05-28 03:10:50 | 冒険
  彼に金魚のえさを、リュックから取ってこさせる。
  金魚のえさが、果たしてこの川の魚に有効かどうかは、まったくわからない。
  でも彼は鼻うたまじりに、とても嬉しそうに、お魚ホイホイにえさを入れている。
  「あ~そんなに入れるなよー」
  彼は驚いて手を止め、僕を見た。
  「まあ、入れちゃったものはしょうがないな~、出せないもんな」

  「出せないよね~」と嬉しそうに彼もうなずく。

  

  

  

  そう、僕にもこんな年だった時があったんだな、すべてが新鮮で                    、  

  何もかもが、輝いていて、知っている世界はすごーく狭いのに、感じている世界はすごーく広い。     
  もちろん、「そうだった」って、今だからわかる。
  ザリガニ取りや、虫取り、魚釣り・・・
  父が、まだそんなに偉くなくて、貧乏なくらいだった頃、
  近所の子供たちと一緒に、よく連れて行ってもらったような気がする。
  もしかしたら、「よく」じゃあ、なかったのかもしれないけど・・・。

  彼にも、今しか体験できない事を、いや、今しか感じられない事を、させてあげたい。





  僕らは、橋のたもとの川に、ひもを付けたお魚ホイホイを投げ入れた。
  ダメだ沈まない。
  「どうしたらいい?」彼に聞く。
  「石を入れれば?」なるほどいい考えだ。
  「じゃあ、石を探してきてくれ。」と彼に言うと、
  「どこにあるの?」ほ~らきた。
  「自分で考えて、探してみろ!石はどこにあるんだ?」
  彼はさっきミミズを掘ったシャベルで、土を掘り出した。
  そうすると、OK!と人差し指と、親指で作る、丸ぐらいの石が何個か出てきた。
  僕らは、その石をホイホイに入れ、再び川に投げ入れた。
  今度は沈んだ。僕らはそれを確かめると、いつものように親指を立てて、
  僕は軽くウインクしながら、彼は軽く両目をつぶりながら・・・顔の前に突き出した。

                                        次回へ続く

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