語る、シェフ

小さなレストランのオーナーが、日々の出来事を語ります。

  冒険8  (その3)  パッカーン

2008-06-25 00:57:24 | 冒険
今日は、爽やかでいい日でしたね。

僕は、平熱が高いせいで(36度5分)暑さには強いが、クーラーには弱い。

平熱が高いのは、長年やっている仕事のせいだと思う。

夏になると、40度近い室温の中での仕事なので、、そうなったんだと思う。

だから夏は好きです。(だから、って言うのも変な話ですね。笑)



   



    奇跡のパッカーン!



そろそろ次の攻撃が来る頃だ。

僕は立ち上がると、さっきの棒を再び正眼に構え、目を閉じた。

もちろん彼は、言われなくても、今度は僕の右足にしっかりとしがみついている。

敵の気配がものすごいスピードで近づいてくる。

僕は左足を前に出すと、今度は構えを上段に変えた。

「今だーっ」僕は気合と共に棒を振り下ろした。

かすかな手ごたえと共に、右肩に軽い衝撃を受け、右によろめいた。



僕は、棒を左手に持ち、右手で彼を抱き上げると、壁づたいに走った。

地面が平らな事と、棒を持ったほうの手で壁を感じながら走れるので、結構早く走る事ができた。

次の瞬間、僕らは何かにつまづき倒れそうになるのを、ようやく持ちこたえると、振り返り、

しゃがみ込んでみると、なんと、僕らのリュックらしい。

中に手を入れてみると、バットとボール、ペットボトルなどが入っている。ラッキーだ!!



         



僕はリュックからバットを取り出すと、

「しんくん、ホラこれもってろ。」と、バットを渡した。

あまり意味はないかもしれないが、奇跡は起こるかもしれない。

「よ~し、しんくんこれでヤミクロをやっつけてやる!!」

と言って、バットをぶんぶん振りだした。

しまった、油断していた。彼はバットを振るために僕から少し離れていた。

「バットを振るときは人から離れて振るんだよ。当たったら危ないからね。」と、いつも、言い聞かせている。

強烈な気配と共に、黒い影が彼に近づいて行った。

僕は慌ててリュックをまさぐると、ボールをつかみ出しヤミクロの気配に向かって投げつけた。



           



「パッカーン」とプラスチックのバットとボールが当たる時のちょっと間抜けな音と同時に、

何とも邪悪で恐ろしい叫び声が、この広間中に響き、こだました。

すぐ側の彼の所に走り寄ると、きつく抱きしめた。

その声が小さくなり、やがて消えると、広間はまた静寂に包まれた。

僕らは、リュックからペットボトルを一本取り出すと(彼のは、なくしてしまった)蓋をはずし

まず彼に渡した。その代わり彼からバットを渡された。そして、飲み終わると僕にペットボトルを渡しながら、

「ヤミクロやっつけた?」と、彼が聞いた。

僕はひと口お茶を飲むと、

「そうだ、2人で力を合わせてやっつけたんだよ。」と、言った。

「もう来ないかな?」

ぼくは、ペットボトルの蓋を閉めながら、

「いや、わからない。とにかく長居は無用だ。早く脱出口を見つけよう。」

そう言うと、ペットボトルをリュックにしまうと、それを背負い、

左手で彼と手をつなぎ、右手に例の棒を持ち、僕らは、壁づたいに歩き出した。





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