語る、シェフ

小さなレストランのオーナーが、日々の出来事を語ります。

  冒険8 (その1)  ポッカ~ン

2008-06-16 02:47:37 | 冒険
どれくらいたっただろう?

僕らは、地下広間に出た。なぜ広間か分かったかと言うと、

そこだけ薄明るかったからだ。

どこから光が入ってくるのか?明るいと言っても寝室ぐらい、

暗さになれると、何となく、どこに何があるか分かる程度。

もちろん色など識別できない。

今までの真っ暗闇に比べれば、薄明るいってことだ。



僕らは、しばらく立ち止まって中を見回していたけど

「よし入ってみよう」と僕が言うと、

「しんくん、待ってる。」と、彼。

「ひとりで、ここに・・・?」と聞くと、

「行く。」と、彼。そして僕らは歩き出した。








地下広間の中央には、結構大きなイスとテーブルがあった。

さわってみると、どうやら、石でできているらしい。机の上は、ちゃんと平らになっていて、意外にきれいだ。

僕は、彼の手を離し、背負っていたリュックを机の上に下ろした。

そして、僕らはイスに腰掛け、周りを見回した。

暗闇の濃淡の加減で、4号公園の半分ぐらいの広さじゃあないかと推察した。

「パパ、ここ何処?」と、彼。

「地下広場だよ。お茶でも飲もうか?」って、僕だって、ここが何処かはわからない。

「あー、しんくん、のどからからだよー。」

そうだろう。ポンプ室の扉を入ってからここまで、一滴の水も飲んでない。

それほど夢中だった。

彼には、お茶のペットボトルを渡し、僕は、少し考えた末、保温ポットの珈琲にした。

いつもはカップも持参するのだが、今日に限って忘れてしまった。

何処にでも、持っていくので妻にも笑われる。

でも今日はない。仕方がないので、ポットのふたで飲む。やっぱりイマイチだ。



「あっ、なんか動いた!!」と、彼。

「えっ、何処?」と、驚く僕。

僕らは、飲み物を持ったまま、暗闇に目を凝らした。




    



その時だった。

目の前のリュックが消えた。そして何とも不気味で、不吉なうめき声。

たぶん「ヤミクロ」だろう。

僕は彼の手をつかみ、引き寄せ、しっかりと抱きしめた。

彼は、ペットボトルをつかんだまま僕にしがみついた。

僕は彼にささやいた、「大丈夫、パパがついてる。」

僕は、五感を研ぎ澄ますと、目だけを動かし、注意深くあたりを見回した。

しかし何も見えなかった。

次の瞬間、体を何かに強く押され、僕らはイスから転げ落ちた。

何がどうなったかは、わからないが、僕は彼を抱いたまま、落ちた勢いで地面を2~3回転した。

そしてすぐ起き上がると彼を隣にしゃがませ、「大丈夫か?」と声をかけると

左ひざを地面につき、右ひざを立てて、次の敵からの攻撃に備えた。





   冒険8  (その2)につづく




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