そう言われると、昨日と同じでも、より寒く感じませんか?
僕は、腕組みをすると軽くため息をつき、一気に言った
「それは傾向なんだ!!時代の傾向なんだ。そして何者もその傾向には逆らえない。」
彼は、やっぱりそうか、という顔をしてうつむいた。僕はなんだかかわいそうになって、
「でも、無くなる事は無いさ。誰だってスゥイートポテトを食べたくなる時はあるし、
実際にとても美味しい。それに減少に関する傾向は、増加する事もありうる傾向だ。」と、言った。
僕は、自分が言っている事が何だかさっぱり分らなかったけど、
彼を励ますには十分な説明だったらしい。
彼は来たときにそろえた靴を履きながら、
「今日は、本当にありがとうございました。帰って仲間に報告して、傾向と対策について
研究を進めたいと思います。」と、言った。
僕はズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、
「まあ、がんばってください。」と、言った。
そのときポケットの奥の方で何かが指に触れたので取り出してみると、なんと100円玉だった。
僕は、「失礼します。」とドアを開け外に出ようとしている彼を呼び止めた。
そして100円玉を差し出すと、
「少ないけど、良かったら傾向と対策のために役立ててください。」
と、言って彼に渡した。彼は、大事そうに100円玉を受け取ると、深々と頭をさげ、
「どうもありがとうございます。大事に使わせていただきます。」と、言うと、
もう一度「失礼します。」と、お辞儀をすると帰って行っった。�
僕は、散歩に出ることにした。お気に入りのスニーカーを履き外に出た。
アパートの前の道を右に曲がると、左側にずっと林の続く道だった。10月のさわやかな風が吹き抜ける中、
「あ~明日は月曜日だな。」なんて思いながら歩いていると、100メートルぐらい先の林の中に
なにやら店らしき建物が見える。新しい店かな~と近づいていくと、小さい10坪ぐらいの洋菓子店だった。
そう、ケーキ屋じゃなく、洋菓子店だ。
こんな所に店があったかな~?まあ確かにここを散歩するのも3ヶ月ぶりぐらいだから・・でもな~。
何となく納得がいかないまま、僕は立ち止まって、その店を眺めた。
洋菓子店は、全面ガラス張りで中が全部見えるようになっている。中央には、自動ドアがついている。
しかも足で踏むと開く、すごーく旧式のだ。なんとなくやぼったい。
中には、白いエプロンをした女の子がポニーテールを揺らしながらショーケースを拭いていた。
僕はポニーテールの全国大会の審査員をしたことがあるくらいポニーテールが好きなので、
その見事なポニーテールに見とれていると・・その女の子が突然振り向いた。僕と目が合うとニッコリと微笑んだ。
僕は不覚にも、自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
今夜は、早いので眠くないけどこの辺で・・・。 では、また。�