Sightsong

自縄自縛日記

チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』

2015-08-23 21:25:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス目当ての2枚。

チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』(ug Explode、2013年)は、エヴァンスのトランペット1管とピアノトリオによるオーソドックスに見える編成だが、4人ともそれぞれ異なる方向をきりりと睨んで走りまくる。『Pulverize the Sound』(Relative Pitch Records、2015年)はさらにハチャメチャ。エヴァンス、ティム・ダール、マイク・プライドのトリオであり、もはや遠慮なく、みんなやりたい放題のドヤ顔。一歩踏み外せばギャグバンドである。

しかし、中央集権やジャズという権力を平然と無視し、解体してみせる者がエヴァンスたちである。もう、素知らぬ顔で技を繰り出しまくる時空間が愉しくて仕方ないのだ。

Charity Chan (p)
Peter Evans (tp)
Tom Blancarte (b)
Weasel Walter (ds)

Peter Evans (tp)
Tim Dahl (b)
Mike Pride (ds, perc, glockenspiel, nose whistle)

●参照 ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
『Rocket Science』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)
オッキュン・リー『Noisy Love Songs』(2011年)


オッキュン・リーのTzadik盤2枚

2015-08-23 11:11:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

今までオッキュン・リーという即興演奏家をろくに聴いてこなかったのだが、ふと気になって、中古棚に並んでいたTzadikレーベルのリーダー作2枚を入手したところ、吐きそうなほどの素晴らしさに驚いている(本当)。

アジアの音だから刺さるということもあるかもしれない(オッキュン・リーは韓国生まれ、2000年からNYで活動)。また、共演メンバーの繊細な演奏も貢献している。その中でも、リーのチェロはとびきり繊細で、まるでさまざまな天然の糸をより合わせたような連続性と柔軟性と強度。

『nihm』が2005年、『noisy love songs』が2011年。わたしは10年もの間気付かず、なにをしていたのか。

Tim Barnes (ds, perc)
Shelly Burgon (harp)
Sylvie Courvoisier (p)
Trevor Dunn (b)
John Hollenbeck (ds, perc)
Okkyung Lee (cello)
Ikue Mori (electronics)
Doug Wieselman (cl)

Cornelius Dufallo (vln)
Peter Evans (tp)
Okkyung Lee (cello)
Craig Taborn (p)
Satoshi Takeishi (perc, electronics)
Christopher Tordini (b)
Ikue Mori (electronics)
John Hollenbeck (perc)


橋本孝之『Colourful』、.es『Senses Complex』、sara+『Tinctura』

2015-08-23 08:28:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

サックス奏者の橋本孝之さんは気持ちよくも不思議な方で、新宿駅前で白石民夫さんのソロ演奏を聴いたあとに一緒に丸の内線で帰るとき、初対面のわたしに、サックスソロについて熱く語った。他のプレイヤーと「似たような感じ」ではつまらない、と。また、先日エヴァン・パーカーらの演奏を聴いたあとに話をしていると、なんと、ジャズなるものはほとんど聴いてこなかったしプレイヤーもよくわからない、と。

確かに、アルトソロの演奏集『Colourful』(Nomart Editions、2013年)を聴くと、まるで独自的であることを発見する。まるで真っ暗な巨大空間のなかにひとり立ち、押しつぶしにかかる大きな闇と対峙し、生きているという証の切り込みを入れ続けるようなのだ。

もうひとつ面白かった話。白石民夫さんの柔和な物腰に接したあと、これまで音を聴いていてすごく凶悪な人かと思っていたと言ったところ、いやサックスソロを演る人はそう思われるのだ、自分もそう言われることがある、と。実際に、この音を先に聴いてしまうと、刃が暗闇でぎらりと光る斧のような人を想像してしまうかもしれない。

橋本孝之 (as)

.es」(ドットエス)は、ピアニストのsaraと組んだユニットで、『Senses Complex』(Nomart Editions、2015年)では、滋賀の酒游舘、大阪のギャラリーノマル、東京の七針で行ったデュオ演奏を集めている。デュオになるとまた異なったものに聴こえる。saraさんのピアノは触角を鋭敏に働かせながら行き先や世界のかたちを探っていくような感覚であり、橋本さんのサックスは、その触角を持つ生物とコミュニケートしつつ、巨大な体躯で舞う象や巨神兵のようである。

saraさんが中心となって他のプレイヤーとデュオ演奏を行う『Tinctura』(Nomart Editions、2014年)は、世界のかたちを嗅ぎまわるパフォーマンスがさらに多様な貌と色相をみせてくれるようで、これもまた良い。

sara (p)
橋本孝之 (as)

sara (p)
佐谷記世 (cello)
河端一 (g)
ユン・ツボタジ (perc)
橋本孝之 (as)