Sightsong

自縄自縛日記

リバティ・エルマン『Radiate』

2015-08-24 22:53:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

リバティ・エルマン『Radiate』(Pi Recordings、2014年)を聴く。

Liberty Ellman (g)
Steve Lehman (as)
Jonathan Finlayson (tp)
Jose Davila (tuba, tb)
Stephan Crump (b)
Damion Reid (ds)

エルマン自身はもとより、チューバとトロンボーンを吹くホセ・デヴィラもヘンリー・スレッギルのグループ・ズォイドのメンバーであり、曲想にも非常に似た側面がある。実際にこの盤にも、スレッギルからインスピレーションを得たとエルマンが書いている。

『スター・ウォーズ』のライトセーバーを思わせる、太くて俊敏なエルマンのギターは、よく歌い、ソロの後に何かの思いを残す感覚も良い。もはや孤高の感があるスティーヴ・リーマンのサックスにも痺れる。

しかし、どうしても、スレッギル亜流、というよりスレッギルの甥っ子のように聴こえてしまう。スレッギルがセクステット時代にトロンボーンを入れ、ヴェリー・ヴェリー・サーカスにおいてそれをチューバとして、ズォイドでもさらにチューバが鼓膜を平穏にさせずヴァイブレーションを与え続けていたのは、異常なほどに緊密なアンサンブルのゆえだった。それを駆動する執着心をどこかの棚にしまい込んで、スタイリッシュに展開した音楽が、これである。スレッギルを聴かなかったならば傑作としか思えなかっただろうし、スレッギルがいなければこの音楽もなかった。その意味ではアンフェアな言い分ではないだろう。

●参照
リバティ・エルマン『Ophiuchus Butterfly』(2006年)
マイラ・メルフォード Snowy Egret @The Stone(2015年)(エルマン参加)
マイラ・メルフォード『Snowy Egret』(2013年)(エルマン参加)
ヘンリー・スレッギル(11) PI RECORDINGSのズォイド(2001-11年)(エルマン参加)
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)(エルマン参加)


アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』

2015-08-24 21:51:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(Loyal Label、2011年)を聴く。

Kenny Wollsen (ds, cymbals, timpani, vib, marching machine)
Jacob Sacks (harpsicord, farfisa organ, p)
Tony Malaby (sax)
Brandon Seabrook (g, mandolin)
Eivind Opsvik (b)

オプスヴィークはいろいろな盤で聴いているし、NYのStoneで演奏を観てもいるのだが、ベーシストとしてそれほど耳を奪われたわけではない。しかし、トニー・マラビーのサックスが目当てのこの盤は、嬉しい意味での驚きだった。「Overseas」の名の通り、まるで中世の航海のドラマ向けに作られたサウンドトラックだ。

何しろ、メンバー皆が喜々として各々の役割を演じている。ハープシコードによって古き良き時代、そして限りなき旅の不安と悦びとがかき立てられるようだ。マラビーのサックスは、期待以上に、心のマチエールやかさぶたを刺激して、否応なくこちらを世界へと引っ張ってゆく。次第に物語はクライマックスへと向い、シーブルックのギターが高揚へ高揚へと導く。そしてサウンドを作り上げ締めるオプスヴィークのベース。

いやこれは愉しい。同じ『Overseas』連作の「I」~「III」も聴こうかな。

●参照
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)(オプスヴィーク参加)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)(オプスヴィーク参加)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)(オプスヴィーク参加)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)(オプスヴィーク参加)