Sightsong

自縄自縛日記

クリス・デイヴィス『Diatom Ribbons』

2020-01-01 23:38:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・デイヴィス『Diatom Ribbons』(Pyroclastic Records、2018年)を聴く。

Esperanza Spalding (voice)
JD Allen (ts)
Tony Malaby (ts)
Ches Smith (vib)
Nels Cline (g)
Marc Ribot (g)
Trevor Dunn (b)
Val Jeanty (turntable)
Terri Lyne Carrington (ds)
Kris Davis (p)

当代一流のメンバーをそろえた作品。

確かにJDアレンとトニー・マラビーのテナー共演だとか、マーク・リボーとネルス・クラインのギター共演だとか、エスペランサがふっと入ってくるヴォイスだとか、聴き所はたくさんある。

物足りないような気がするのだが、それは何も噛み合っていないからではないだろう。クリス・デイヴィスは猫のように柔軟に隙間に入り込み、重たくない構造をさっと創り上げてはきれいさっぱり消滅させる。テリ・リン・キャリントンのドラムスも風のように速く、息をするように軽い。これは欠点ではなく、ハマるシチュエーションではとても惹かれるサウンドになる。軽くても充実度は軽くない。ヴァル・ジーンティのターンテーブルも素晴らしく羽根のように軽い。

●クリス・デイヴィス
マイケル・フォルマネク『Time Like This』(2018年)
クリス・デイヴィス+エリック・レヴィス@Body & Soul(2018年)
クリス・デイヴィス+エリック・レヴィス@新宿ピットイン(2018年)
クリス・デイヴィス『Duopoly』(2015年)
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
マックス・ジョンソン『In the West』(JazzTokyo)(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)


サイモン・ナバトフ『Last Minute Theory』

2020-01-01 10:42:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

サイモン・ナバトフ『Last Minute Theory』(clean feed、2018年)を聴く。

Tony Malaby (ts, ss)
Brandon Seabrook (g)
Michael Formanek (b)
Gerald Cleaver (ds)
Simon Nabatov (p)

さながらサイモン・ナバトフ+NYオールスターズである。

なんどか聴き流していてつまらないなと思っていたのだが、そんなことはありません。わたしが間違っておりました。BGM的な聴き方はやめましょう。

緻密にして野蛮、ユーモラスでもあるトニー・マラビーとブランドン・シーブルック。常に音を外側にスピルアウトさせるジェラルド・クリーヴァーもそのように抑制の内外を行き来している。知的できらきらする音を集めるナバトフと、ダイナミックな3次元パズルが展開される(特に「Rickety」や「Good Pedigree」)。やっぱり興奮。

●サイモン・ナバトフ
サイモン・ナバトフ『Tunes I Still Play』(2017年)
サイモン・ナバトフ@新宿ピットイン(2017年)
サイモン・ナバトフ+マックス・ジョンソン+マイケル・サリン『Free Reservoir』(2016年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(ナバトフとマティアス・シューベルトとの共演作について)
サイモン・ナバトフ+トム・レイニー『Steady Now』
(2005年)


池田陽子、増渕顕史、野川菜つみ、田上碧、メーガン・アリス・クルーン@Ftarri

2020-01-01 08:46:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

大晦日のFtarri(2019/12/31)。

Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Takashi Masubuchi 増渕顕史 (g)
Natsumi Nogawa 野川菜つみ (perc, laptop)
Aoi Tagami 田上碧 (voice)
Megan Alice Clune (synth, laptop, voice)

この順番にソロを20分ずつ。

池田陽子さんの音の強度は高い。この日は弦でさまざまな倍音を創り出し、それは範囲を拡張し、ついには喉歌のようになった。この構造をこわしたあとに指でやはり様々な音のコンビネーション。2本、3本、4本と増えてゆく。

増渕顕史さんは、はじめは長めの残響を活かしつつ、弦の震えにノイズを混ぜてくる。繰り返しのフレーズはフレーズらしくなってゆき、驚いたことに、かなり曲に近いものとなった。

野川菜つみさんの音はユニークだ。素焼きの鉢を擦り、軽く叩き、玉を落とし、それらが信号として取り込まれ、ひとつひとつの音が時間を得て、まるで意思を持っているかのように周囲を散歩しはじめる。

田上碧さんのヴォイス。はじまりの声と、その次の声との差にまずは驚かされる。声の増幅や変化が身体によるものなのか、それともマイクやエフェクトによるものなのかよくわからない。声には声ならではの有機的なものがある。そのような奇妙なおもしろさがあった。

メーガン・アリス・クルーン。シンセとヴォイスを使い、信号処理を経て、他の人たちとは対照的に、境界が淡い音の柱にすべてが収斂してゆく。その結果、サウンドが崇高さを身にまとうようになっていった。

最後に全員での共演。ヴェクトルも佇まいも違う人たちが共存するのは本当に良いものである。しかも各々の音は馴れ合いではなく緊張感が漲っていた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●池田陽子
ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス(2019年)
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)

●増渕顕史
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
齊藤僚太+ヨシュア・ヴァイツェル+増渕顕史@Permian(2018年)
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
杉本拓+増渕顕史@東北沢OTOOTO(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)

●野川菜つみ
即興的最前線@EFAG East Factory Art Gallery(JazzTokyo)(2018年)

●田上碧
田上碧+徳永将豪+松本一哉@Ftarri (2019年)
山田光+坂本光太@Ftarri
(2019年)