Sightsong

自縄自縛日記

アーサー・ブル+スコット・トムソン+ロジャー・ターナー『Monicker - Spine』

2020-01-10 07:45:10 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーサー・ブル+スコット・トムソン+ロジャー・ターナー『Monicker - Spine』(Ambiances Magnétiques、2018年)を聴く。

Arthur Bull (g)
Scott Thomson (tb)
Roger Turner (ds) 

2002年にアーサー・ブルとロジャー・ターナーが初共演し、ときどきのデュオなどを経て、2017年にスコット・トムソンを誘ってバンド名を「Monicker」とした。本盤が最初の吹き込みである。

昨年(2019年)、アーサー・ブルのプレイを直に観て驚いた。調のことは置いておいても、音色や連なりは、粒が際立ったデレク・ベイリーとも、弦に貼り付いて進むようなジョン・ラッセルとも異なる(ブルさんは英国ではなくカナダ人である)。ヴェクトルは内向きだが表現は内向的ではない。弦をはじいた音の反響の内に、ひたすら向かう感覚である。したがって内部で衝突を繰り返す泡の球のようなものを幻視する。

ロジャー・ターナーはそれを踏まえて、もう少し広いバウンダリーの中であちらへこちらへと疾走する。そしてトロンボーンが入っていることが意外でもあったのだが、聴いてみると、サウンドを一箇所にとどまらせず滑らせ、別の場所に絶えず連れてゆく、潤滑剤の機能を果たしている。

かれら3人が別々のヴェクトルで共存し、衝突し、相互に横を滑走しあっている。愉しい。楽器編成は異なるが、ジョン・ゾーン、ジョージ・ルイス、デレク・ベイリーによる『Yankees』を思い出させるところがあるように思う。

●アーサー・ブル
アーサー・ブル+秋山徹次、神田さやか@Ftarri(2019年)

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+亀井庸州@Ftarri(2019年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo(2019年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
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フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)
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