うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

恋あやめ~鶴亀屋繁盛記~

2012年07月02日 | 和田はつ子
 2008年11月発行

 神田相生町で人探し業を営む鶴亀屋。主の竹蔵は元は貧乏旗本の次男坊。町家に婿入りしたが、商いが立ち行かなくなり商売替えをしたのだ。
 そして放蕩が過ぎ三十を前に隠居させられた大身旗本の嫡男、鶴川梅太郎と二人、人探し業に奔走する。シリーズ第2弾。

第一話 恋あやめ
第二話 双葉婚
第三話 鬼子母神
第四話 噛み爪 計4編の短編集

主要登場人物(レギュラー)
 竹蔵(竹之助)...神田相生町人探し業鶴亀屋の主
 鶴川梅太郎...旗本家の嫡男、隠居
 まつ恵...竹蔵の妻
 きり乃...竹蔵の娘
 田崎杉右衛門...鶴川家用人
 那須憲次郎...南町奉行所同心
 桜和馬...南町奉行所同心見習い
 陽平...新材木町口入れ屋駒黒屋の主
 良助...駒黒屋の大番頭

第一話 恋あやめ
 鶴川梅太郎の元に、行方知れずとなった息子を探して欲しいと旧知のきくえが訪った。聞けばその子息は、先刻見掛けた医学生であった。
 少しばかり切ない話に仕上がっている。

主要登場人物 
 林新吾...陣内の塾生、きくえの息子
 おふじ...茶屋娘、新吾の幼馴染み
 陣内寿節...大富町の方眼(医師)
 内田鉄平...陣内の塾生
 大西恭次郎...陣内の塾生
 
第二話 双葉婚
 相模屋のおなつから、商いで内藤新宿へ行ったきり行方が知れない夫の幸助を探して欲しいと依頼を受けた。早々竹蔵が相模屋を訪うと、蜜柑相場で虎の子を根こそぎ失った老婆が店先で悪態を付いていた。
 幸助の人柄とそれを支援する人々の心温まる話であるが、おなつにとっては悲しい結末になっている。

主要登場人物 
 おなつ...廻船問屋相模屋の跡取り娘
 幸助...相模屋の若旦那、おなつの婿
 喜右衛門...相模屋の主、おなつの父親
 喜兵衛...相模屋の大番頭
 おかね...金時長屋の店子
 嘉一...おかねの息子

第三話 鬼子母神
 竹蔵不在の中、まつ恵の実家加納屋が大店だった時代、髪結いを頼んでいた、お千代のひとり娘おまつが攫われ、50両もの金を揺すられる事件が起きた。
 事は急を要する。子探しが苦手な梅太郎が、乗り出す事になった。
 中盤に四方山話として語られる出来事が尾を引いた、あっと驚く真犯人に驚かされる。

主要登場人物 
 お千代...深川常磐町花結床の女髪結い主
 貞吉...錺職人、お千代の夫
 お里...子守り女
 吉奴...深川玉の屋の抱え芸妓
 お葉...呉服屋柊屋の内儀
 おぎん...森下町の女髪結い、お千代の師匠

第四話 噛み爪
 毎朝葉唐辛子の佃煮を売りに来る直吉の姿を見掛けなくなった折り、竹蔵の朋友片岡象二郎から手習い所の子どもを探して欲しいと依頼があった。それは直吉である。早々竹蔵が調べてみると、直吉の兄長太、妹お咲、そして長太と共に暮らす助三までもが同じ日を境に姿を決しているのだった。
 駒黒屋陽平、片岡象二郎の隠し事の意図がもうひとつぴんとこないが、まあ、これがなければあっと言う間に一件落着だから仕方なしか。

主要登場人物
 直吉...葉唐辛子の棒手振り
 惣吉...担ぎの貸本屋、直吉の里親
 片岡象二郎...日本橋村松町手習いの師匠
 長太...新材木町口入れ屋駒黒屋の奉公人、直吉の兄
 新吉...薬研掘煮売り屋の主、お咲の義叔父

 このシリーズは、足を使った謎解きであり、犯人は文中で、本筋とは関係なく耳に入った人物といった手法が用いられ、文中に隠されたワードが読者も共に謎解きにの参加出来る形に仕上がっている。
 そして、残酷な沙汰や結末は、竹蔵、梅太郎の与り知らない人物であり、二、三行でさらりと流されている。
 シリーズ6作目の「道楽息子」を先に読んでいたが、こちらでは竹蔵の妻まつ恵は、梅太郎を芳しく思っていない様子だったが、シリーズ始めは惹かれていたようだ。



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