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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

老舗の名店を掘り当てた! 河辺『幸泉』

2022年12月01日 | 定食、食堂
地元の図書館で借りた、今から38年前の1984(昭和59)年発行の書籍「多摩の評判ラーメン 名物ラーメン」。
掲載されている100軒のうち、現存するのは21軒。※詳細はこちら→(前編後編)
その21軒の中でもっとも惹かれたのが、-楽しいメニューがいっぱい-と紹介されていた、青梅市の『幸泉』
さっそく青梅線に乗り、最寄りの河辺駅から店舗に向かったところ、下記の看板がお出迎え。


ラーメン本に載っていたのに、食べログでは現在、「とんかつ店」に区分されているのは知っていたが、
「とんかつ みそかつ まぜそば つけ麺 ほうとう」と、ウリの商品が複数あるようだ。
最近のメニューを紹介する前に、書籍に載っていた商品も転記しておく。

「サハリン」750円→名前の由来は“サッポロを通り越しておいしい”で、とにかく具だくさん。
カニ、ホタテ、コーン、キャベツなど、全20種類の野菜と魚介類を山盛りにした、バター風味の鍋焼きラーメン。
「白雪らーめん」600円→味噌スープにホワイトソースを合わせた斬新なラーメン。
「スタミナ鍋らーめん」950円→生卵、豆腐、餃子などの具材の他、赤まむしの粉末も加えて鍋で煮込んだラーメン。
「おしんラーメン」600円。当時流行していたNHKのドラマ「おしん」が由来の大人気メニュー(詳細は不明)。
「趣味でラーメン屋やってますから。遠くから来てくれるお客さんもいるし、よそと同じものやってもしょうがないでしょう」
という店主・伊藤幸男さんのコメントも納得のレパートリーで、奇抜なメニューを好む私が、興味を持ったのは当然である。

店内に入ると、奥様と思われるおばちゃんに、テーブル席へ案内された。小上がり席や幼児用のイスも用意されている。
メニュー表などはなく、壁に貼ってある「お品書き」から選ぶ。


上記画像の麺類の他、定食、酒類、一品料理などいろいろ揃っていて、


別の壁エリアには、ほうとうやナポリタンなども掲示してある。


いろいろあって迷ったが、ファーストオーダーは「ビール中」500円と、
大好物の「手作りニンニク餃子」5ヶ300円に、「マーボー豆腐」500円を選択。
まずはお冷やと瓶ビール&グラス、そしてケースに1本だけ入れられたハシが提供される。


数分後、まずは麻婆豆腐がラー油と一緒に登場。中央の粉末は、すりゴマだった。


辛さはなく、すりゴマのせいでむしろ甘い。ラー油より七味が欲しかったな。
しばらくすると、今度はお酢と醤油とともに、餃子がやってきた。


見た目も味わいも家庭的だが、けっこうニンニクが効いていておいしい。
なので、「餃子鍋」650円を追加。おばちゃんがオーダーを伝えると、厨房から店主が出てきて、
「味付けは、こってりとあっさり、どっちがいい?」とたずねられたので、「こってりでお願いします」と返答。
私が見た書籍の取材からは38年たっているが、気さくな笑顔は掲載当時と変わらず。

※書籍の紹介ページを撮影

2本目のビールを飲んで待っていると、お盆に乗せられた餃子鍋と、レンゲ・とんすいが登場。

※餃子鍋には、具材やご飯・麺も追加できる

「熱いんで気をつけてね」というおばちゃんの忠告どおり、鍋がグツグツと煮立っている。
なので餃子をとんすいに取り分け、少し冷ましてから頬張る。塩味のこってりスープがウマい!
餃子以外の具材は、玉ネギ、人参、半熟味玉半分、そして下記画像のオカワカメ


「オカワカメ」という珍しい食材を私が知っていた理由は、近くにオカワカメ本体と説明文があったから(笑)。


食感はワカメに似ているが、海草ではなくツルムラサキ科の植物で、栄養価も高いらしい。
幸泉さんが自家栽培し、他の料理にも使用している、自慢の食材のようだ。

腹八分に近かったが、せっかくなのでシメを食べて帰ることに。
基本のラーメンと思われる、「中華そば」450円と「正油ラーメン」500円の違いをおばちゃんに質問したところ、
「中華そばは麺がひと玉、正油ラーメンは1.5玉」とのことなので、中華そばを選択。
確かに、中華そばには“軽食”の二文字が添えられていたが、ひと玉あるのならば、決して軽くはない。
というか、どちらのラーメンも、いまどき450円と500円は安いよ。
しばらくして、中華そばが運ばれてきた。具材はネギ、チャーシュー、味玉半分、そしてオカワカメ。


麺はひと玉なので、丼サイズも普通。ただ、予想外だったのがスープの色。


昔ながらの、醤油色した黒いスープが出てくるかと思いきや、やや濁りのあるきつね色のスープ。
豚骨特有の匂いと、コクや旨味もしっかり感じるラーメンで、飲んだあとのシメに最適(?)。
腹十分目を超えたが、麺と具はしっかりたいらげ、スープを少々残しただけで完食。
お会計を済ませたところで、持参した例の書籍を取り出し、「これを見て来ました」と夫妻に告げた。


店主は「おお~懐かしいなあ~。ずいぶん昔の本だよねえ」と驚いた様子。
ちょうど手が空いていたようなので、先述したメニューについて聞かせてもらった。
「サハリンってのは、本来は850円だったのに、本に載るからってサービスで100円引いちゃった。
食材も使いすぎて、(750円では)全然割に合わない。当時でも1000円、今なら2000円以上もらわなきゃ」。
「おしんラーメンってのは、ドラマに出てたアレよ」。大根めしのことですか? という私の返答に店主はうなずき、
「大根だけじゃさみしいから、けんちん汁みたいに具だくさんにして、さらにご飯も入れたラーメンだった」とのこと。
大根など煮込み野菜だけでなく、麺と一緒にご飯も入っていたとは! 栄養失調のおしんも食べたかったはず(涙)。
「昔から、いろんなメニューを出しているから、(常連客には)あのときのアレ作ってくれって、たまに言われるよ」。
私もいつか、ホワイトソース入りの白雪らーめんを作ってもらいたいものだ。

この日は4種の料理を食べたが、どれも安く美味しく、しかも個性的
「よそと同じものやってもしょうがないでしょう」という、店主の哲学は今も健在だった。
変わったラーメンを出すお店という、イロモノ的な先入観を抱いていたが、期待を上回る名店であった。
38年前の書籍のお陰で、温泉ならぬ幸泉、幸せの泉を掘り当てることができた(←うまいコト言ったつもり)。

他にも気になるメニューがあったので、数日後には早くも再訪。
まずは瓶ビール中と、最近の主流メニューであるとんかつを食べてみることに。
注文から数分後、「とんかつ定食」単品が、ソースやレモンとともに登場。


千切りキャベツの上に乗せられたとんかつは、カリっとした歯触りで、なかなかの分厚さ。

前回日記の最後にも掲載

ビールから「ウーロンハイ」350円に変更し、とんかつを食べ終えたところで、この日のシメに。


頼んだのは「カボチャほうとう」900円。数分後、餃子鍋と同様に、鉄鍋に入った一式がやってきた。


ほうとうだけをアップで。幅広の麺は自家製らしい。


具材は、主役の北海道産カボチャに、豚肉、白菜、人参、玉ネギ、しめじ、絹さや、オカワカメなど。


中華そばとは別に作った、醤油味のほうとう用スープを、麺が吸い込んでウマさが増幅。


鉄鍋のせいで最後まで熱々で、野菜たっぷり、栄養たっぷり、味にも大満足の逸品であった。
お会計時、店内のどこにも記載されていない、とんかつ単品の価格が判明。
「とんかつ定食」が780円なのに、単品はなんと480円! 思わず「安すぎますよ」と突っ込んでしまった。

初訪問から短期間なのに、早くも3度目の訪問。すでに店主には名字と居住地、そして苦手な食材も告げてある。
餃子鍋提供時の「こってりorあっさり」のように、店主は味の好みや苦手な食材などを聞いてくれるのだ。
この日はビールと「からあげ」500円、そして前回はなかった「豚もつ煮込」500円を注文。
壁メニューでは、「フロふき大根」「もつほうとう」なども追加されていた。


屋号どおり、店主のアイデアは泉のごとく湧いてくるのか、メニューは頻繁に変わるようだ。
まずは煮込みが、ラーメン丼くらいの大きな器で提供される。500円なのに量が多すぎ!


大根がやや苦手だと告げたところ、代わりに豆腐を入れてもらった。他の具材はモツ、こんにゃく、玉ネギなど。
ドロドロ系ではなくサラサラ系の煮込みだったので、飽きることなく食べ切ることができた。
続いては、生姜やニンニクで味付けされた、鶏もも肉使用の「からあげ」が完成。


普通のラーメン屋さんや中華食堂で出す揚げ物料理は、油切れが悪い場合が多いのだが、
こちらはとんかつも推しているだけあって、揚げ物の油っこさは皆無。鶏唐揚げもジューシーで、ビールが進んだ。
シメの食事は、塩(餃子鍋)、豚骨醤油(中華そば)、醤油(ほうとう)のスープは食べたので、
今回は味噌を試したくなり、“みそバター風味”との説明がある「しじみらーめん」780円を選択。


丼は中華そばよりやや大きめサイズ。具材はたくさんのしじみの他は、ネギにオカワカメのみとシンプル。
バターの脂肪分や、味噌の塩分は控えめ。そもそも、こちらの料理はどれも濃すぎずほどよい塩梅
なので、味噌バタースープは全部飲んでしまったし、しじみも意地汚く、全部ほじくって食べた。


この日も、すべての料理に満足し、お会計の安さで再度満足。またまた、店主とお話しさせていただいた。
「今は住宅もたくさんあるけど、開業した頃は、小学校ができたくらいで、周辺には何もなかった」そうだ。
そんな好環境とはいえない場所で、長年営業を続けている、幸泉さんの実力はやはり侮れない。
あの本に載っている店は、今ではほとんど残っていません、と告げたところ、
「ここも、もう閉めるべきなんだろうけど、やめたら俺、ボケちまうし…」と冗談を口にする店主。
実際は、店主も奥さんも元気そうだし、料理のアイデアも次々と湧いてくる様子なので、閉業は当分先のことだろう。
私自身も、未食及び未知のメニューが多数あるし、幸泉さんには今後も通い続けるつもりだ。



幸泉
東京都青梅市河辺町8-13-11
JR青梅線河辺駅から徒歩約11分、小作駅からは徒歩約18分
営業時間 11時半~14時45分くらい、17時~20時くらいまで、19時半ラストオーダー
定休日 木曜
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