しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

「草枕」変奏曲 横田庄一郎著 朔北社

2013-12-02 | 評論エッセイ等
「明暗」を読みだす前にネットでいろいろ漱石について調べていところ、松岡正剛氏の千夜千冊で「漱石」「草枕」を取り上げているのを見つけました。

「草枕」自体の紹介よりも、カナダの天才ピアニスト グレン・グールドが「草枕」を愛読していたエピソードの記載が多く、私も興味をひかれました。
グールドが亡くなった時、「枕元には「聖書」とメモだらけの「草枕」のみが置かれていた」くらいの傾倒ぶりだったようです。

その辺の経緯は上述の千夜千冊でも読めますし、wikipediaのグレン・グールドの項でも詳しく書かれているので省きますが、その元ネタとなっているのが本書です。

なんちゃってではありますがクラシックファンでもある私としてはこの事実を知ってかなりびっくりしました。

グールドのバッハは正直私にはよくわかっていませんが、モーツァルトのピアノソナタの個性的な演奏や村上春樹の影響で聞いたバーンスタインと共演のブラームスピアノ協奏曲1番のなんとも個性的な演奏で「すごいピアニストだ!」という認識はありました。

数々の奇行の逸話と併せ、特に日本では「カリスマ」とされている人ですね。

漱石の初期の作品は国境を超える「価値」があるとは私も思いますが、あらためてこの組み合わせを見るとなんともかんとも意外感のある組み合わせです。

本書にもそんなわけでかなり興味はあったのですが、買うには至らず...。
地元の図書館でリクエストして借りました。

内容は漱石・草枕・グールド1/3づつという感じですが「草枕=漱石」的なところもあるため漱石に関する話が多いかなあという印象です。
(グールドのみのファンにはつらいかなぁという内容)

印象に残ったのは、最初の方に漱石夫人の鏡子氏の「漱石の思い出」の記載を紹介して「初期の作品「坊っちゃん」「草枕」などは漱石が勤め帰りに徹夜もしないで1週間くらいで書き上げた」部分。
漱石凄すぎますね....。

初期の作品は後に朝日新聞専属の職業文筆家としての漱石と違って「誰のためでもなく自分が書きたいものを書いた」ということで評価する意見もあるようです。
それもわかるような逸話ですね、書きたいものがどんどん迸り出ていたんでしょうね。

明治国家の枠組みから飛び出して朝日新聞に入社した漱石は「それから」の代助的な心情もあったのかなぁなどとちらりと考えました。

いろいろ評価はあるのでしょうが、職業文筆家となった漱石の作品はなんだか風通しが悪い感じはします。
(丸谷才一氏がどこかで書いていたもののぱくりです)

私も漱石は初期の作品の方が好きですねぇ。

あと印象に残ったのは、漱石作品では主人公が「横になっている」場面が意図的に表現されているというもの。
確かにそんなところがありますね。

主人公が横になっている場面から始まるパターンが多い気がします。
「明暗」でも「それから」でも主人公が横になっている状態から始まっています。

そんなこんな漱石好きかつグールド好きな人にはお勧め本です。

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