昔々、西部の大きな川に沿ってイヌイット(エスキモー)の村がありました。冬が来て食べ物が不足するようになると、多くの村人が飢え死にするだろうことを彼等は知っていました。
ある夜男達が集会所に集まって話し合っていました。若者たちの中にはカリブーを追って内陸に奥深く入って行こうと言う者もいました。「いや、」とアイピリックが言いました。「もし、内陸深く入って行ったら雪が柔らかだからカリブーに近づくことなんてとても出来ない。カリブーはさっさと雪の上を逃げてしまうけど、君達はひどくのろのろ行く事になるんだよ。」
「僕が行く。」とサパが言いました。「僕がカリブーを見つけて、この谷間に追い込むよ。」
「君が死んでしまう事は確かだ」とアイピリックが言いました。
川沿いに沢山の小さな木が生えていました。サパは注意深くその辺を見渡しました。なぜなら時々インデアン達がここに焚き木を集めに来ていたからです。でも今日は何故かインデアン達の姿は見えません。彼はゆっくりと雪が堅くてあまり深くない高い丘に沿って歩いて見ました。彼はその木々の枝をいくらか取ってロープで括り、それを額から背中に掛けて下げ、背負って持って行きました。
何日もの間サパはその高い丘に沿って歩き、やがてカリブーの沢山いる谷間に辿りつきました。サパは腰を下ろすと持って来た枝を使って何かを作り始めたのです。それが終ると彼はやはり持って来ていたカリブーの皮を被ってカリブーの群れに近づきました。カリブーの皮を被っているのでカリブーたちは彼が人間とは気が付きません。
サパはしばらく待ってからカリブー達が逃げ出すように大きな音を立てました。カリブー達が行ってしまうと被っていた皮を脱ぎ、枝で作った大きな靴を履いてカリブーの後を追いかけました。
何日もの間サパはカリブーの群れから離れない様にしていました。いつも彼の家族が住んでいる谷間の方に追い込むように仕向けながらです。大きな靴のおかげで柔らかい雪の上でも速く歩くことができました。間もなく彼の村人達が住む谷間の近くに来ました。彼は大きな靴を脱ぎ、それを雪の下に隠してから、カリブーを連れてきた事を村人達に告げに行きました。直ちに男達が出てきて、カリブーをすばやく凍った川沿いに追い、沢山獲物を得る事が出来ました。
その夜みんなが雪の家の中に座って肉を食べている時アイピリックが「今まで来たことが無いくらいキャンプに近い所にカリブーが来たおかげで美味しい肉を食べられるのは運が良い」と言いました。彼はサパがカリブーをキャンプに連れてきたことを信じられなかったのです。
「僕がカリブーを追い込んだのよ」とサパが言いました。「僕は彼等を見つける前に五回も眠ったんだぜ、それからここへ連れてきたんだ」
「どうやって柔らかい雪の上を歩けたんだ?」とアイピリックが聞きました。
「それは言えないよ」とサパが答えました。
誰もサパを信じませんでした。何日もの間彼は不服でした。しかしある夜彼は男共みんなに集会所に集まってもらい、どうやって雪の上を歩くか見せたいと言いました。
みんなが集まってから彼は小さい枝で作った大きな靴を見せました。すぐにみんなは興奮してしまいました。「今度から」とアイピリックが言いました。「インデアンの住む南の方へ行けるね。僕達は柔らかい雪の上を走れるから彼等に捕まる事がないもの。」
「彼等が僕達の靴を見たら同じ物を作ってしまうよ。」とサパが言いました。
「それよりみんなでカリブーを追って内陸へ行こうよ。 この川辺りにとどまって魚ばかり食べてるよりその方が良いよ。」
みんなサパの意見を聞き入れました。彼等はサパが真実を言っていることを知っていたのです。次の冬イヌイット達はカンジキを履き、大きなカリブーの群れを追いながら川辺りの谷間を後にしました。(イヌイットの伝説から)
冬景色を紹介した後、今度は冬の民話です。
少しは涼しい気分になるでしょうか。
カンジキは英語ではスノーシューなので、直訳では「雪靴」になってしまいます。事実そういう誤訳を良く見かけます。
日本のカンジキは楕円形ですが、カナダのはテニスのラケットのような形をしています。
スノーボードなどスピードを楽しむスポーツが流行ってきている中、昔ながらのカンジキを履いて冬のハイキングを楽しむ人達もまだまだ多いです。
ある夜男達が集会所に集まって話し合っていました。若者たちの中にはカリブーを追って内陸に奥深く入って行こうと言う者もいました。「いや、」とアイピリックが言いました。「もし、内陸深く入って行ったら雪が柔らかだからカリブーに近づくことなんてとても出来ない。カリブーはさっさと雪の上を逃げてしまうけど、君達はひどくのろのろ行く事になるんだよ。」
「僕が行く。」とサパが言いました。「僕がカリブーを見つけて、この谷間に追い込むよ。」
「君が死んでしまう事は確かだ」とアイピリックが言いました。
川沿いに沢山の小さな木が生えていました。サパは注意深くその辺を見渡しました。なぜなら時々インデアン達がここに焚き木を集めに来ていたからです。でも今日は何故かインデアン達の姿は見えません。彼はゆっくりと雪が堅くてあまり深くない高い丘に沿って歩いて見ました。彼はその木々の枝をいくらか取ってロープで括り、それを額から背中に掛けて下げ、背負って持って行きました。
何日もの間サパはその高い丘に沿って歩き、やがてカリブーの沢山いる谷間に辿りつきました。サパは腰を下ろすと持って来た枝を使って何かを作り始めたのです。それが終ると彼はやはり持って来ていたカリブーの皮を被ってカリブーの群れに近づきました。カリブーの皮を被っているのでカリブーたちは彼が人間とは気が付きません。
サパはしばらく待ってからカリブー達が逃げ出すように大きな音を立てました。カリブー達が行ってしまうと被っていた皮を脱ぎ、枝で作った大きな靴を履いてカリブーの後を追いかけました。
何日もの間サパはカリブーの群れから離れない様にしていました。いつも彼の家族が住んでいる谷間の方に追い込むように仕向けながらです。大きな靴のおかげで柔らかい雪の上でも速く歩くことができました。間もなく彼の村人達が住む谷間の近くに来ました。彼は大きな靴を脱ぎ、それを雪の下に隠してから、カリブーを連れてきた事を村人達に告げに行きました。直ちに男達が出てきて、カリブーをすばやく凍った川沿いに追い、沢山獲物を得る事が出来ました。
その夜みんなが雪の家の中に座って肉を食べている時アイピリックが「今まで来たことが無いくらいキャンプに近い所にカリブーが来たおかげで美味しい肉を食べられるのは運が良い」と言いました。彼はサパがカリブーをキャンプに連れてきたことを信じられなかったのです。
「僕がカリブーを追い込んだのよ」とサパが言いました。「僕は彼等を見つける前に五回も眠ったんだぜ、それからここへ連れてきたんだ」
「どうやって柔らかい雪の上を歩けたんだ?」とアイピリックが聞きました。
「それは言えないよ」とサパが答えました。
誰もサパを信じませんでした。何日もの間彼は不服でした。しかしある夜彼は男共みんなに集会所に集まってもらい、どうやって雪の上を歩くか見せたいと言いました。
みんなが集まってから彼は小さい枝で作った大きな靴を見せました。すぐにみんなは興奮してしまいました。「今度から」とアイピリックが言いました。「インデアンの住む南の方へ行けるね。僕達は柔らかい雪の上を走れるから彼等に捕まる事がないもの。」
「彼等が僕達の靴を見たら同じ物を作ってしまうよ。」とサパが言いました。
「それよりみんなでカリブーを追って内陸へ行こうよ。 この川辺りにとどまって魚ばかり食べてるよりその方が良いよ。」
みんなサパの意見を聞き入れました。彼等はサパが真実を言っていることを知っていたのです。次の冬イヌイット達はカンジキを履き、大きなカリブーの群れを追いながら川辺りの谷間を後にしました。(イヌイットの伝説から)
冬景色を紹介した後、今度は冬の民話です。
少しは涼しい気分になるでしょうか。
カンジキは英語ではスノーシューなので、直訳では「雪靴」になってしまいます。事実そういう誤訳を良く見かけます。
日本のカンジキは楕円形ですが、カナダのはテニスのラケットのような形をしています。
スノーボードなどスピードを楽しむスポーツが流行ってきている中、昔ながらのカンジキを履いて冬のハイキングを楽しむ人達もまだまだ多いです。