つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

無理難題は言った者勝ち

2007-02-28 23:59:35 | ミステリ
さて、私は無理難題なんて言いませんよ、な第820回は、

タイトル:タイトルマッチ
著者:岡嶋二人
出版社:講談社 講談社文庫

であります。

岡嶋二人の長編ミステリ。
両氏お得意(?)の誘拐物で、例によってサクサク読めます。



元世界ジュニア・ウェルター級チャンピオン最上栄吉の元に、一通の手紙が届いた。
顔面蒼白な妻から手紙を受け取り、栄吉は息子の健一が誘拐されたことを知る。
警察には知らせるな、というお決まりの警告の後に、奇妙な一文があった――詳しいことは、琴川三郎のほうへ連絡する。

琴川三郎は栄吉と同じジムに所属するボクサーである。
三郎に連絡をよこした謎の人物は、ジムの玄関マットの下にもう一通の手紙があることだけを告げて、電話を切った。
新たな手紙に書かれていた要求はたった一つ、二日後に行われるタイトルマッチで、三郎が相手をノックアウトで倒すことだった……。

知らせを受けた警察はすぐに捜査を開始したが、余りにも時間がなさ過ぎた。
そんな中、半ばヤケになった三郎はサンドバッグを叩いた際に、拳を痛めてしまう。
普通なら棄権するのが当然の身体でリングに上がる三郎はチャンピオンに勝てるのか? そして健一の安否は――?



というわけで、今回のネタはボクシングです。
他作で、競馬界、ボウリング業界、コンピュータ業界等の内幕を書いている両氏だけに、本作もきっちりと下調べをされている御様子。
実力はあってもチャンピオンになれないのは何故なのか? とか、マッチメイクはいかにして為されるのか? 等、無知丸出しの私にとっては興味深い話がいくつも出てきます。

ストーリーは、誘拐された健一の命がかかったタイトルマッチに望むジムの面々の話と、正体不明の誘拐犯を追う警察の話、二つを同時進行させていく形で進みます。
プレッシャーから拳を痛めてしまった三郎の苦悩、本来ならば自分の拳で息子を救いたい栄吉の葛藤、誘拐犯がチャンピオン側にいる可能性もあるため、思うように動けない警察の焦燥等、追い込まれた人々の姿を描きつつ、トラブルと謎の連発で読者を引き込んでいく展開は、さすが『誘拐物の岡嶋二人』といったところ。(笑)

これで、タイトルマッチ前に犯人が捕まったり、健一が保護されたりしてはお話になりません。
警察の必死の捜査にも関わらず、試合は始まってしまいます。
右手の爆弾を隠し、かつて栄吉を破った強敵に挑む三郎の運命は――本編で確認して下さい。

とまぁ、非常に良くできた作品なのですが、私的にはイマイチでした。
キャラは生きてるし、構成も悪くないし、盛り上がりも充分なんだけど……何と言ったらいいか、妙に据わりが悪いのです。
前述したように、話の流れからして健一も犯人も試合開始まで見つからないのが解っているところとか、そもそも犯人が誰であろうと話が成立してしまうところとか、試合の勝敗と健一の生死は関わりがないと予想が付いてしまうところとかが、微妙にテンションを下げてしまった……そんな感じでしょうか。(自信ない)

悪くはないけど、オススメまではいかない作品。
相変わらずノンストップで読めますが、期待し過ぎるとラスでコケるかも知れません。



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