つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

文体って偉大ね

2007-02-12 23:58:18 | 小説全般
さて、1000回越してもこのままのような気がするの第804回は、

タイトル:青空
著者:桃谷方子
出版社:講談社(初版:H12)

であります。

なんか、文庫のストーリー紹介を引用……なんて言ってる割に、いい紹介ってなかなかないんだよなぁ。
単行本にはそもそもないし……(爆)
って、今回もその紹介がない単行本なので、自前~。

さて、本書は16歳の高校2年生、高岡美有を主人公として、酒屋である家で出会った老人、岩尾伊佐治という74歳の老画家との交流を描いた作品。
ストーリーは……。


クラスメイトとも、恋人とも、どこか一線を画して他人と付き合うような美有は、家の酒屋に帰ってきたとき、カウンターで飲んでいるふたりの老人と、片方の老人とともに飲んでいる若い男性の姿を見つける。
些細な一言で喧嘩を始めた老人ふたり……ある日の学校の帰り、本を読もうとして立ち寄った公園で、その当事者のひとりに出会う。

岩尾伊佐治と名乗った74歳の自称画家の伊佐治は、公園での短い会話のあと、美有に自らのアトリエに誘う。
年齢の離れすぎた伊佐治に、恋人でさえ感じる不快感を感じなかった美有はその誘いに乗る。

アトリエで語る伊佐治の言葉や絵、おもしろいものだと言って見せる春画やブルーフィルム……独特の感性と意志に惹かれた美有は、伊佐治の求めるままに幾度となくアトリエに足を運ぶ。


いやぁ、やっぱり文体ってのは重要なんだろうねぇ。
あとキャラも、かな。
事実のみを淡々と描く文章で、表現に不足はないがどうしても情緒や雰囲気に欠けるぶん、無味乾燥な印象になってしまう。
また、主人公の美有も他人との付き合いに一線を画したキャラとなっていて、そうした美有の視点で描かれているので、余計に文章などから感じられる雰囲気と言ったものがほとんどない。

これは私のような感覚で読むタイプにはかなり致命的。
作品に入り込めないからおもしろみはまったくないし、キャラのすべてが無機質なお人形にしか見えない。

ストーリーは、美有が伊佐治と出会い、16歳から17歳に至る時間の中で伊佐治との交流を通じて変化していく様を描いていて、流れもよく、展開に破綻はない。
伊佐治を中心としながらも、途中で変化のひとつの要因となる展開も配置され、ラストも納得できる終わり方をしている。
なので、ストーリー自体はしっかりしている、と言える。

また好みを別にすれば、文章も過不足なく整えられていているから、客観的に見るなら十分及第以上の作品だろう。

……でも、やっぱりおもしろくなかった……。
設定がイヤだとか、ストーリーがどうとか、そういう問題ではなく、この無味乾燥な雰囲気ってのはかなり苦痛……。

冷静に見るなら及第……なんだけど……おもしろくなかったからやっぱ落第。