つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

なぜ続が先なのかは聞かない方向で……

2007-02-09 23:58:59 | その他
さて、読むのにかなり苦労した第801回は、

タイトル:続ドイツ装甲師団
著者:加登川幸太郎
出版社:朝日ソノラマ 文庫版新戦史シリーズ

であります。

同文庫の「ドイツ装甲師団」の続編。
前作は戦車の発展、装甲部隊の成立等について触れていた(らしい)のですが、本書は、出来上がった部隊の運用について述べています。
砂漠の狐と呼ばれたロンメルから、ソ連の英雄カツコフまで、戦車という兵器を戦場の主役にまで押し上げた名指揮官達の采配をとくと御覧あれ。

あ、終わっちゃった。
(久々だな、このフレーズ)

内容としては、各章ごとに一人の指揮官にスポットをあて、その人物の伝記に近い話と並行して、できたばかりの装甲部隊が戦場に投入され、次第に戦場を支配するようになった過程を書くというもの。
前方指揮という優れた運用法によって迅速かつ正確に行われた機動戦、歩兵主体の部隊とは一線を画す大規模な包囲戦、戦車のスペックが物を言う装甲決戦など、数多くの実戦の記録が紹介されています。
無論、戦術的な話ばかりではなく、補給線の維持や侵攻ルートの決定といった戦略的な話もしっかり出てきます。

新しいことを始める時、旧来の常識が邪魔をするのは世の常ですが、装甲部隊も例外ではありませんでした。
指揮官が先頭に立たないと全軍が一丸になって動ことができないのに、それは非常識だと小言を言われ、戦車主体でいきたいのに、台数を減らされて歩兵や装甲車で穴埋めされたり、機動力を生かして電撃戦をしかけようとしてるのに、部隊は通常の行軍と同じ感覚で動いてたり……もう、何が何やら。
おまけに、『独ソ大戦車戦―クルスク・史上最大の激突』でも書いたように、上司が余計な口を出して全体の足を引っ張ります。前と後ろに敵を抱えたグデーリアンの明日はどっちだ?(笑)

かなり中身の濃い戦記です。
この手の本が好きな人にはオススメ。

難があるとすれば、『独ソ大戦車線~』よりさらに広い地域を扱っている(ノルマンディーからスターリングラードまで)にも関わらず、載っている地図が簡略化されていて、地名と位置が解り辛いこと。
時間の合間に読んでいたので私は無理でしたが、もし読まれるのであれば自前で地図を用意することをオススメします。
あと、人名やたら多いので覚えるのにかなり苦労しました……せめて索引を付けてくれ。