つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

サイコなのはどっち?

2007-02-24 23:25:23 | ホラー
さて、別にラノベ中心のブログではないのよの第816回は、

タイトル:壊れゆくひと
著者:島村洋子
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H10)

であります。

ファンタジーをカテゴリのトップから……って何回言ったっけ、このフレーズ……(爆)
まぁ、それはひとつの理由ではあるんだけど、どーも「9S <ナインエス>」のおかげでライトノベルの冊数が増えてるのが気になるんだよね。
乱読上等が身上なんだから、いろいろと読むべきなんだけどねぇ……。
おもしろいのよ、「9S <ナインエス>」シリーズ……。

さておき、そんなわけもあってお初の作家さんでございます。……たぶん、ブログ内検索に引っかからなかったので。
ストーリーは、久本まりこと言う20代後半の主人公を中心とした物語で、詳細は以下。

「どこにでもいる普通の人々、あたりまえの日常生活が、私の周りで少しずつズレていく。
してもいないミスをあげつらう”いい人”と評判の同僚。
自分はアイドルの恋人だと言い張る子持ちの友人。
顔も思い出せないのに恋人だと手紙を送ってくる男。
狂ってしまったのは私なのか。
それとも周りの人々なのか。
現実と虚構の狭間から滲み出す狂気を描いたサイコ・ホラー」

だそうです。

そういうわけでカテゴリはホラーにしたけれど、この紹介文を読んで、ぞくぞくするようなこわ~い話を期待していたんだけど、ぜんぜん怖くなかった……。

ストーリーは、主人公まりこの一人称で語られ、一人称で描かれる以上のことはあまり書いていない。ほぼ、まりこが出会う様々な虚構を信じ込んでいる相手によって引き起こされるまりこの心の動きが主となっている。
紙面としては白いほうだが、描写不足と言うわけではないので、流れが悪いと言うことはない。

展開も、意外な結末とかが待っていると言うわけではないが、紹介文の「現実と虚構」という言葉には合っていて、物語としての出来はいいと思う。

ただ、サイコ・ホラーと銘打っている割に、まりこが様々な相手から感じ、考えることがとても淡泊だったりして、ホラーっぽさが薄くて怖くない。ラストのほうでちょろっと怖そうなところもあったけれど、「怖そう」であって「怖い」までは行かない。
まぁ、虚構の中にいる様々な相手に感じるまりこの気持ちはけっこう頷けるところがあるけれど、「そうそう」って頷けて怖いわけがない。
これなら小川洋子の「刺繍する少女」のほうがよっぽどか怖い。

とは言え、まりこの語る様々な虚構の中の人物との出会いと、まりこの中の現実と虚構が曖昧で、そうした境界線のあやふやな作品世界はしっかりと感じ取れる作品ではある。

と言うわけで、サイコ・ホラーでありながら怖くないが、物語の出来は悪くない……と言うところでこれは及第だろうね。