つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

妖怪(プチ)大戦争

2007-02-11 14:36:34 | ファンタジー(現世界)
さて、狙ってたわけじゃないのよの第803回は、

タイトル:かのこん
著者:西野かつみ
出版社:メディアファクトリー MF文庫J

であります。

ん~、なんかファンタジーが続いてるなぁ……。
別に企画でも狙ったわけでもないんだけど、日曜はラノベの日を外すわけにはいかないのよ~、ってわけでたまにはこんなときがあってもいっか。

さて、今週のラノベの日は、学園ラブコメであります。
ストーリーは……文庫のストーリー紹介を引用したいけど、出来ないので自前で。


自然豊かな田舎から都会の薫風高校へ転校してきた小山田耕太。
転校初日に突然、美少女の先輩から呼び出しを受けて音楽室へ出向いたところ、その先輩……源ちずるに一目惚れってことで迫られてしまう。
豊かな胸、美しい容姿、抜群のプロポーション……しかし、迫りくるちずるは、金色の尻尾に耳……狐の妖怪だった。

素直でかわいらしい耕太にますます迫るちずる。
しかし、それに嫉妬する弟のたゆら、耕太を妖怪と間違えた桐山臣、長ヶ部澪、熊田流星の妖怪たちの登場によって、耕太は妖怪たちの更生施設である薫風高校で平穏なはずの学校生活はとんでもないことに……!


あー、読み終わった瞬間、出来の悪い「護くんに女神の祝福を!」だと思ったねぇ。
一目惚れで迫ってくる先輩、かわいらしく優しい主人公、主人公ふたりをかき回す脇キャラたち……。
この手のラブコメディにはお約束の設定で、安心できると言えば安心できるのだが、その分、ストーリーがどうかと言うところになるんだがねぇ。

とりあえず、ストーリーよりも先に文章。
もうちょっと……と言うか、きちんと読んでる人間にわかるように描写してくれ。
特にラストのほうのアクションシーン。
まったく、と言っていいほど情景が浮かばないくらい、わかりにくい。
このあたり、デビュー作であることを除いても、ダメダメ。
だいたいあとがきで直しまくったって書いてあるのに、これじゃぁ直そうとした編集のほうの見方も疑いたくなるもの。

ではストーリー展開のほうは……と言うと、序盤、中盤はまだいいのだが、終盤にかけての展開に難あり。
耕太がちずるに惚れるための理由付けをするための展開に乏しく、終盤に至る中でのそうした場面での説得力に欠ける。
「護くんに女神の祝福を!」では、ヒロインである絢子とともに行動し、いろんな出来事や事件を経て好意を自覚する、と言う形に無理がなかったが、この作品はかなりその辺りの展開に無理があるため、唐突な感が否めない。

キャラもちずる、主人公の耕太、脇キャラのヒロインのひとりである澪など、お約束であり、狙いまくっただけのものでイラストと相俟って、完全にキャラ小説と言った感じで、それ以外に見るべきところはない。

まず、転校生の下級生と先輩、と言うシチュエーションのラブコメを読みたいのであれば、クオリティは完全に「護くんに~」のほうが上。
ちょいと少年マンガ的なHなシーンなどがあるのが「護くんに~」との違いなので、このシチュエーションのラブコメを読みたいのであれば、これはオススメしない。

イラストで売る。
ラノベとしては当然のことながら、中身が伴っていなければ意味はなし。
ラノベ点を付け加えても、さらにデビュー作であることを差っ引いても、編集の力不足で直しきれていなかったとしても、落第。
イラストに萌えられないのであれば、断然「護くんに~」を読むのをオススメする。



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