つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

早速読みました

2007-02-06 23:53:29 | ファンタジー(現世界)
さて、最初がいいとあとがつらいよなぁの第798回は、

タイトル:9S<ナインエス> II
著者:葉山透
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H16)

であります。

読みます、と言っておいて、早速2巻の登場です。
図書館にあったし、貸し出し中でもなかったのでさっさと図書館へ行き、ゲット。
ついでに借りてきたその日に、とりあえず読んでしまいました(笑)
さて、1巻がいいと2巻以降、どうしても1巻と較べてしまって、点数が辛くなってしまうのが常だけど、この2巻はどうか……。


「絶海の孤島で行われる防衛庁の秘密演習。そこには厳重に拘束された奇妙ないでたちの少女、由宇の姿があった。
 ADEM(峰島の遺産管理局)の視察が注視する中、演習は始まった。驚異の性能を発揮する無人多足型戦車レプトネーター。だが、その平気が突如暴走を始める。外部との連絡を絶たれ、残されたのは拘束されたままの由宇と傷ついた人々。極限状況の中、由宇たちは生きるために足掻き始める。
 一方、ADEMの伊達の秘書官・八代はこの状況を打開するために闘真を投入することを試みる。それは闘真の呪われた血を再び呼び醒ますことに他ならなかった。」


最近、長文傾向が激しいので、ストーリー紹介は弱冠の補足を除いて、文庫のストーリー紹介を引用することにしました。
短編集とか無理な場合は自分で書くけどね。

さて、ストーリーは概ねストーリー紹介のまま。
補足するなら、防衛庁で製造されたレプトネーター。しかし、一度開発に行き詰まったことが今回の悲劇を生む原因となっていること、その設計を見た由宇が、様々な許可を経なければ利用できない「遺産」の使用の疑いがあることから、由宇とADEMが介入したこと、かな。
こうしたことから、レプトネーター対由宇、そして遅れてやってきた闘真、そしてレプトネーターを最終的に奪おうとするミネルヴァとの孤島での戦いが描かれ、さらに闘真だけを「兄さん」と慕う真目麻耶と、真目家長男、勝司との真目家の水面下でのお家争いの始まりが入っている。

まず、ストーリーの評価と言う面で言うと、やはり1巻よりも勢いやパワーと言ったものが低減している。
だが逆に、低減した分を補うように、地に足のついた、しっかりとした作品世界になっており、パワーで引っ張るがために見え隠れしていたアラが少なくなっている。

展開も、孤島でのレプトネーターとの戦いを主軸に、お家争いや闘真の持つ禍神の血、遺産強奪組織など、様々な要素を絡めつつも、流れを阻害することもなく配置され、きちんと完結させている。
その上で、ストーリー展開の中で語られる伏線や、エピローグでの引きを作っていて、続き物だが1巻完結をきちんと守っているところは好印象。

文章面も、由宇の説明台詞がやや鬱陶しいところはあるものの、近未来の科学技術を扱うものなので、そこまで目くじらを立てるほどではない。
また、いくつか表現に難があるところもないわけではないが、ラノベにありがちな三点リーダなどの多用もなく、比較的しっかりしているほうだろう。

キャラは……まぁ、由宇の闘真への対応など、狙ってんなぁ、ってところがないわけではないが、1巻での由宇と闘真の出会いなどを考えると、その変化はまぁ許容範囲だろう。
1巻ではしっかりとキャラが立っている、とは言い難かった闘真も、2巻でだいぶんブレが少なくなり、また見せ場も作らせてもらったりと、ようやく由宇と並んで主人公と言えるようになってきている。

総じて、1巻よりもこの2巻のほうが小説としての出来はいい、と言えるだろう。
1巻のぐいぐい引っ張るような勢いはないものの、より洗練された作品となっている。
2巻はどうかな、ってところはあったけど、2巻も数少ない良質のラノベと言っていい。
総評、良品。



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