つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

微妙なとこ

2007-02-18 19:39:59 | ファンタジー(現世界)
さて、なんのかんのと人気のある作品なんだよねの第810回は、

タイトル:吉永さん家のガーゴイル
著者:田口仙年堂
出版社:エンターブレイン ファミ通文庫(初版:H16)

であります。

やはり、ラノベ系を多く扱っているサイトを参考にすると、こういう人気シリーズが多く出てしまうのよね。
先週の「かのこん」もだし、「9S」もだし……。
しかし、そうは言ってもおもしろいものはさすがにそこまではないもので。
さて、ではGYAOでアニメの配信もされているこのシリーズは……。


「商店街の福引きで大当たり! 吉永さん家の双葉ちゃんがゲットしたのは、前代未聞の生き物だった!? 犬の石像のように見えるソレは、突然喋りだすわ、石より硬いわ、あげく自分を「吉永家の門番だ」というわで、兄の和己くんはポカーン状態。双葉ちゃんは、提供した店に突っ返そうとアンティーク屋「兎轉舎」に乗りこむ。そこには青龍刀を持った物騒なお姉さんが!?
第五回えんため大賞受賞作は読んだあなたに福が来る、ご町内のハッピーコメディ!」


体裁としては短編連作のコメディで、
第一話 吉永さん家の厄介者
第二話 吉永さん家の朝昼晩
第三話 佐々尾さん家のおばあちゃん
第四話 小野寺さん家の名番犬
第五話 東宮さん家の事情
第六話 吉永さん家のガーゴイル
の計6話で構成されている。

吉永家に来たガーゴイルの登場から、第二話のちょっとした日常、佐々尾家で発生した泥棒騒ぎに始まる一連の泥棒事件から、錬金術の粋を集めて作られたガーゴイルを狙った東宮家の企みと、ストーリー展開はきちんと連作の体裁が整えられている。
ただ、各話での繋がりの甘さが見受けられるが、受賞作ということを考慮すれば、これは許容範囲内か。

文章面については、砕けた口語調の文体で、軽快なコメディの作風とマッチしているが、表現力はまだまだ努力すべき点がある。
概ね、説明不足というところが目につくので、こうした部分を軽快さを損ねない程度に過不足のないようにしていけば、より読みやすく、コメディとしてのテンポもよくなっていくだろう。

キャラについては、コメディらしい個性を際立たせたメインキャラたちは生き生きと動いており、好印象。
ただ、メインとなる双葉やガーゴイル、兄の和己に較べて、各話でスポット的に登場するキャラが、メインキャラに比してやや影が薄かったりしているのはマイナス。
特に第四話の双葉の友人である小野寺美森は、このエピソードのために、「双葉の友人」という属性を与えられた個性に乏しいキャラ、と言う印象が強い。
登場も、前振りもなく、このエピソードのために用意されて唐突に登場した感じがあるから余計に、ね。

……と、いろいろとアラを探せばそれなりに出てきてしまうものではあるが、受賞作であり、さらにラノベ点を考慮すれば、さすがに落第というところまではいかない。
コメディらしい軽快さなど、いいところもあるので、いいところ、悪いところ相殺して及第と言ったところか。



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