つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

コンピューターおねぇちゃん

2006-06-20 23:41:20 | ミステリ
さて、再びこの方な第567回は、

タイトル:コンピューターの熱い罠
著者:岡嶋二人
文庫名:講談社文庫

であります。

連敗街道まっしぐらなので、安定を求めてこの方々を拾って参りました。
コンピューター・センターに勤める女性が、内部に潜む闇に挑むミステリ長編です。

コンピューター・センターのオペレーター夏村絵里子はショックを受けていた。
結婚相談所エム・システムから送られてきたリストの中に、恋人の名前を発見したのである。
同姓同名の他人であることを期待してデータを調べてみるが、登録された情報は恋人のものに間違いなかった。

悪いことはそれで終わらない。
土肥綾子と名乗る女性が、エム・システムの会員データを見せてほしいと言って、職場に乗り込んできたのだ。
綾子は、自分の兄がエム・システムを通じて結婚した相手に殺されたのだとまくしたて、その女性のデータを渡すよう要求した。

問いつめる絵里子に対し、恋人はおどけた態度で、会社ぐるみで会員登録したことを明かす。
絵里子は自宅から会社のデータに侵入し、裏を取る……恋人の言葉は本当だった、彼が言ったよりも遙かに多い個人情報が登録されていた点を除けば。
さらに翌日、絵里子は新聞を見て驚愕した。そこには土肥綾子の死亡記事があった――。

岡嶋二人らしく、特異な状況を生かしたミステリです。
データを扱う仕事ならではの偶然に動かされた主人公が、やがて内部で行われている異常な行為に目を向けるようになる展開は非常にスムーズ。
主人公は今なら個人情報保護法にダイレクトに引っかかる行為を平気でやってますが、まー、そこは置いときましょう……二十年前の作品ですし。

恋する女性であり、パソコンマニアでもある絵里子のキャラも生きています。
恋人に不審な点を発見したところからすべてが始まり、知識をフル活用して調査を進め、最終的に踏み込んではいけない所まで踏み込んでしまう――彼女がいないとこの作品は成立しません。
当然ながら推理力もあります、実はかなり凄い方かも知れない……最後の最後に大ポカをかましたのは御愛敬ですが。(笑)

ところどころに、時代を感じさせてくれる物が落ちているのもポイント。
最新鋭のコンピューターが16ビットだったり、記憶媒体がフロッピーだったり、文書作成にワープロソフトではなくワープロを使っていたりと、当時を知る人々ならチェックするだけで楽しいかも。
某大手コンピューター会社の名前がJCNなのも笑いました、こういう遊び流行ったなぁ……。(ちなみに、JCNという会社は実在します。○BMのダジャレとは関係なしに)

少しずつ解ってくる不気味な事実に惹かれて一気に読めます、オススメ。
『そして扉が閉ざされた』もそうだったけど、この方、カードの切り方が凄く上手い。
最後に判明する犯人と謎の全貌については……まぁ、そんなものかな、という感じでしたが、それでも充分楽しめました。

ちなみに、本作を読むのは初めての筈なのに、なぜかラストに見覚えが……火サスか土ワイでやってたのかなぁ。



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